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トウモロコシ輸入、四半世紀ぶり低水準か-放射能禍で飼料激減

牛や豚など家畜の餌の主原料である トウモロコシの日本の輸入量が今年は25年ぶりの低水準に落ち込むと の見方が出てきた。東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射能汚 染の広がりなどで、肉牛向け配合飼料などの需要が減っているためだ。

穀物貿易に30年以上携わっているコンチネンタル・ライスの茅野 信行代表は、今年の輸入量が前年比約5%減の1540万トン程度になる とみている。これは1986年以来最低の水準。昨年に宮崎県で流行した 家畜伝染病の口蹄(こうてい)疫の影響に加え、放射性セシウムで汚染 された稲わらを食べた肉牛が全国各地に出荷されことが打撃となり、国 産牛肉離れが起きている。

日本は世界のトウモロコシ総輸入量の2割を占める最大の輸入国。 約9割が米国からの購入だ。農林水産省によると、1-5月の輸入量は 前年同期比4.5%減の647万トン。うち食料用などは2.5%増加したも のの、飼料用は8.2%減少した。日本では牛の餌は配合飼料が主流で、 トウモロコシはその原料の約5割を占める。

シカゴ商品取引所(CBOT)で取引されているトウモロコシの先 物中心限月は7ドル付近で推移、過去1年では約8割上昇している。飼 料輸出入協議会の晴野三義専務理事は、コスト高が続けばトウモロコシ の輸入減少のペースが速まる可能性があるとみる。小麦を加工する際に 発生する副産物である「ふすま」など糟糠類などで代替できるため「農 家がよいと言えば、飼料メーカーはドラスティックに切り換えるかもし れない」という。

世界の需給への影響は限定的

もっとも日本のトウモロコシの輸入減少による世界全体の需給へ の影響は限られそうだ。米農務省によると、11-12穀物年度の世界のト ウモロコシ輸出量は9490万トンに上る見通し。ジェフリーズ・ベーチ ェの穀物アナリスト、ショーン・マッケンブリッジ氏によると、中国は 在庫を補充するため今年度は500万トン程度まで輸入を増やす可能性が あるという。昨年度の輸入量は160万トンだった。

トウモロコシ相場の上昇は世界的な在庫の減少が背景にある。米農 務省によると、今年度の在庫も06-07穀物年度以来の低水準になる見 込み。

世界最大の船舶ブローカーの一部門であるクラークソン・リサー チ・サービシズによると、今年のトウモロコシや大麦など雑穀類の船荷 は前年比2%増の2億5200万トンと見込まれる。これに対し、コンチ ネンタル・ライスの茅野氏が予想する今年の日本のトウモロコシ輸入減 少量は同80万トン程度。

ばら積み船市況の調査会社トランプデータサービス(本社・東京) の田中俊和・海運調査部チーフアナリストによると、日本への穀物輸送 には、鉄鉱石や原料などの輸送にも使用される積載重量3万5000トン から6万トン程度のスープラマックス型ばら積み船が主に使われる。

世界の50以上に及ぶ航路の用船レートを発表しているバルチック 取引所によると、スープラマックス型船の輸送コストは過去1年で28% 安の1日当たり1万3282ドルに下落している。

セシウム汚染

汚染牛問題は、東日本大震災で餌不足となった畜産農家の一部が、 福島第一原発事故も屋外に放置したままの稲わらを牛に与えたことが 始まりだ。政府は事故後の3月19日、屋内で保管した飼料を与えるよ う通知を出していたが、すべての農家に行き届いていなかった。農水省 によると、汚染された稲わらを食べた牛の出荷数は26日現在、2906頭 に 上る。

影響は小売業にも広がっている。日本最大のスーパーマーケット・ チェーンのイオンは25日、1都2府26県の174店舗で国の暫定規定値 を超える放射性セシウムを含む稲わらを与えられた牛の肉を販売して いたと発表。イトーヨーカ堂も25日までに、首都圏などの132店舗で 販売していたことを明らかにしている。

千葉県柏市在住で、4人の子どもを持つ主婦の平野恵美子さんは、 「食の安全に対する政府の対応は不十分だ」と述べ、「検査もなしに汚 染された牛肉が出荷されたということは他の汚染された食品も出回る 可能性がある」と怒りをあらわにした。日本消費者協会参与の長見万理 野氏は、汚染の疑いのある肉牛の出荷停止や、店頭からの回収措置が取 られているが、「それでも不安だという人は牛肉を買わないか外国産を 買うことになる」とみている。

コンチネンタル・ライスの茅野氏は、日本の畜産関連業界は狂牛病 が発生した2001年以来最大の危機だとみる。SMBC日興証券の沖平 吉康アナリストは19日付のリポートで、狂牛病発生時には国内の牛肉 消費量が13カ月連続で前年を下回っていたと指摘、今回も「食肉消費 全体への悪影響が拡大するリスクがある」と分析している。

東京都中央卸売市場の食肉市場では25日の取引で、量販店で売ら れる和牛の去勢牛A-3クラスが1キロ平均1254円と、汚染牛問題発 覚前の7月第2週(4-8日)平均に比べ8%下落している。食肉加工 で国内最大手の日本ハムの広報担当、秋山光平氏は21日、国産牛肉の 注文量が「先週から減っている」と述べた。

外国産牛肉の増加

これに対し、外国産牛肉の輸入は増えている。農水省によると、1 -5月の牛肉輸入量は前年同期比11%増の20万4543トン。米国食肉加 工最大手のタイソンフーズ・インターナショナルの俵隆通・日本支社長 によると、米国産牛肉は同期間の日本向け輸出量が同53%増加した。

米国食肉輸出連合会の原田晋氏は牛肉消費は国産から外国産へシ フトすると見込む。タイソンの俵氏は、ユッケによる食中毒や今回のセ シウム汚染で牛肉消費は全般的に低迷していると指摘しながらも、米国 産の輸入増加は今年1年続くとみている。

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