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K-POPがサムスン、LG後押し-韓国製への見方に変化の兆し

七夕の日、石井裕子さん(53)と 久子さん(24)親子は、恵比寿にあるK-POP(韓国ポップス)専 用公演劇場『K THEATER TOKYO』に茨城県常陸大宮市か ら2時間半かけて駆けつけた。そこで開かれる韓国男性21人組グルー プ、Apeaceのライブが目的だ。

裕子さんは4年前からK-POPの男性グループ、東方神起のフ ァンだ。「かっこ良すぎ。歌もダンスも日本のアイドルとは格が違う」 という。その影響で久子さんもK-POPに夢中。裕子さんは韓国製 品に親近感を抱くようになり、LG電子製の洗濯機も購入した。好き な韓国アイドルがCMに登場するテレビや携帯があれば「絶対に買っ ちゃう」と断言する。

上武大学ビジネス情報学部の教授で「最後の『冬ソナ』論」の著 者でもある田中秀臣氏は、韓国ドラマ『冬のソナタ』に始まった韓流 ブームが今、K-POPの流行で「普及レベルが一段上がった」と分 析。若年層にも広がっているK-POPブームが日本市場で「間接的、 長期的に韓国製品の追い風になる」とみている。

家電量販店の実売データを集計した調査会社BCNの6月の国内 スマートフォン(多機能携帯)ランキングでは、米アップルの「iP hone(アイフォーン)」、シャープの「AQUOS PHONE」 を抑え、韓国サムスン電子の「GALAXY(ギャラクシー)SⅡ」 が1位を獲得した。

サムスン広報担当のジェームス・チャン氏は「日本でのサムスン のお客様のほとんどが20-30代の若い人々。彼らのK-POPスター への興味が我々の商品の購買にも影響しているように見える」と語る。

苦い経験

世界では躍進するサムスンやLGも日本の家電市場では2007年、 08年と相次いで撤退するという苦い経験を持つ。高品質な日本製に比 べ、安くても品質が劣るというイメージが障害となっていた。だが、 その流れに変化の兆しがみられる。K-POPが日本市場という厚い 壁を打ち破ろうとする韓国メーカーの後押しになるかもしれない。

田中教授は「これまでは中高年の多くが高品質なイメージがある 日本製しか購入の対象に見ていなかった」と指摘。だが、「最近は韓国 文化に触れる機会が増え、韓国製への抵抗感が昔より薄れている」と いう。実際、韓国文化は身近になった。「anan」などの雑誌はこぞ ってK-POPアイドルを特集。コンビニ最大手のセブン-イレブン も東方神起、女性グループの少女時代やKARAなどのアイドルとタ イアップして販促キャンペーンを展開するほどだ。

ドコモを通じて6月に発売したLG製スマートフォン「Optimus bright (オプティマス・ブライト)」のCMキャラクターにはKAR Aを起用。LG日本法人広報担当の金東建氏は「今回はオプティマス・ ブライトのターゲットが若い女性だったため、日本でも若い女性に人 気があるKARAを広告キャラクターに起用した」と話している。

女房も「ギャラクシー」

博報堂の村上晶子上席研究員は、今の若者は先入観なく評価する ため、「『日本製だから買う』ということがなくなってきている」と話 す。同社の調査では、韓国製品のイメージについて05年から11年に かけて『明確な個性や特徴がある』という指標が伸びており、この指 標が伸びると実際その後、市場で売れる傾向があるという。

日本市場の扉をこじ開けているのがサムスンのスマートフォン 「ギャラクシーSⅡ」。NTTドコモが6月23日に発売し、出足は好 調。ドコモの山田隆持社長は「韓国製品で良いものが増え、日本の消 費者に評価されている。女房も『ギャラクシーS』を使っている」と 8日のインタビューで語った。

山田社長によると、今月5日までの販売台数は20万台。調査会社 IDCジャパンの木村融人シニアマーケットアナリストによると、「売 れ筋で通常は3-4カ月で50-60万台。発売2週間としてはペースが 速い」という。木村氏は感応度の速さなど機能が素直に評価されたと みる。サムスンは今後、日本市場の製品サイクルに合わせて投入すれ ば「長期的にシェアを伸ばせる可能性がある」と語る。

米市場調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、11年1 -3月期の国内携帯電話市場で、サムスンのシェアは11%で3位のパ ナソニックと並んだ。サムスンは世界で2位だが、保守的とされる日 本で韓国企業が5位以内に入ったのは異例という。

品質に厳しい目も

LGは日本のテレビ市場に昨年11月再参入。LGジャパンのリ・ ギュホン社長は6月の会見で「製品価値を認めてくれるお客様が確か にいる。そして増えている。その面では着実に達成しており、かなり 計画通りにいっている」とし、「数字よりも日本の顧客に認めてもらう こと、日本で愛されるブランドとして定着することが目標」と述べた。

ただ、日本人は品質への目が厳しい。恵比寿でライブに来ていた 大学生の吉井晶子さん(19)は韓国の文化や食べ物も好き。昨夏は韓 国へ語学留学もした。それでも、スマートフォンは「LG製は壊れや すいって聞くから『iPhone』最新モデルが出たら買おうと思う」 と話す。

調査会社マイボイスコムが昨年11月に実施したアンケートでは、 韓国製品に対するイメージは「価格が安い」が52%と首位。2位は「活 気・勢いがある」と26%だったが、3位に「信頼できない」25%、4 位には「品質が悪い」24%と続く。

政策の「勝利」

製品への否定的なイメージから脱することが、企業にとって至上 命題だ。韓国政府は90年代後半から海外での韓国ドラマの低価格販売 を推進する政策をとり、多くのアジア諸国で韓流ブームが起きた。み ずほ総合研究所アジア調査部の苅込俊二主任研究員は「『安かろう、悪 かろう』と低評価だった韓国製のイメージ払しょくに、政府による韓 国文化普及策が有効に機能した」と話す。

実際、ドラマで使われた韓国製品は若い世代を中心にイメージア ップにつながり、韓国政府の戦略が企業の市場開拓に大きな力となっ た。苅込氏は、まだ品質などに懐疑的な消費者のいる日本でも、K- POPなどを機に「そのうち韓国メーカーが日本で国内メーカーと互 角に戦う日が来るかもしれない」と予測する。

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