海外ヘッジファンドが国内年金に狙い、大震災で分散重視-拠点新設

海外のヘッジファンドが日本の年金 基金の資金獲得を狙っている。規制が強化された米国などでの資金集め が難しくなる中、東日本大震災を受け金融市場が一時混乱した国内の年 金に、海外資産にも分散投資する動きが広がるとみて、売り込みを目的 とした訪問や拠点設置を進めている。

JPモルガン・アセット・マネジメントが震災前後の3月上旬から 5月中旬に実施した調査によると「国内資産への集中解消と分散投資」 で135基金中の31%が従来の株式や債券に代わりヘッジファンドを含む 「オルタナティブ投資」を増やす方針だ。鈴木英典投資戦略ソリューシ ョン室長は震災を受け「この傾向は強まる」と分析している。

友好的アクティビズムの手法によりロシア株で運用するプロスペ リティ・キャピタル(英国)は8月に東京拠点を開設する計画だ。アジ ア太平洋地域代表に就任する予定のトーマス・オルソン氏は昨年11月 から年金基金と接触した手応えとして「投資分散が進んでないため、当 社だけでなく他のヘッジファンドにも機会がある」と述べた。

日本の年金積立金は米国に次いで世界第2位の規模。米コンサルテ ィング会社のタワーズワトソンによれば、3兆4700億ドルと世界全体 の13%を占めている。日本では3月11日の大震災後の3営業日で日経 平均株価が18%も下落。大震災やそれが引き起こした原発事故は日本の カントリーリスクとして認識された。

海外資産に関心

東武流通企業年金基金は、今後も分散投資を図る方針だ。現在は運 用資産130億円の12%をオルタナティブ投資に回している。高橋右行顧 問は「大震災は海外の市場にはほとんど影響しなかった」とし、国内株 などに代わる海外投資などに関心を示す。日経平均の18%に対してS& P500種株価指数は震災後3日で1%程度しか下げなかった。

アジアのヘッジファンドに投資するファンド(FOF)を創設した マイケル・ヴァン・ビエマ氏も日本での投資家訪問を意欲的にこなして いる。そこで受けた投資家の印象を「大震災の後、国外への分散に重点 を置いているようだ」と語る。

こうした中で、海外ファンド向けに日本の投資家動向の情報提供な どを手掛けるトリプル・エー・パートナーズジャパンのフランク・パッ カード社長は、「日本の投資家の資金は運用者が透明性を保つなど良い サービスを提供している限りにおいて息が長い」と指摘。海外ヘッジフ ァンドなどが国内年金に売り込みを図る良い機会だとみている。

ボルカー・ルール

海外ファンドが日本で資金を募る背景の一つには米規制強化があ る。昨年2月に成立した金融規制改革法に盛り込まれた銀行持ち株会社 の自己勘定取引やファンド投資を中核的自己資本の3%に制限するい わゆるボルカー・ルールがそれだ。大和総研の菅野泰夫アナリストは、 米ヘッジファンドは自国での投資家探しに苦労しているという。

一方、ファンドにとって日本の年金市場の開拓は投資家層を分散 できるメリットもある。クレディ・スイス証券の高橋朗アセット・マネ ジメント本部長は、「海外の投資家は期待収益が2桁なのに対し、日本 の投資家はより安定的な収益を重視する」という。JPモルガン・アセ ットによれば、国内年金基金の平均期待収益率は年3.6%。

英リーチAiMパートナーズでポートフォリオ・マネージャーを務 めるフィリップ・カトマー氏は、「日本の年金基金や投資家はリスクを 強く意識している」と指摘。「日本は大きく洗練された市場で、われわ れの今年3度目の訪日が日本への強い関心を表している」とし、慎重な 運用姿勢の年金などからの資金集めに意欲を示した。

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