「脱原発」めぐり議決へ、被災者ら株主402人提案-28日に東電総会

「原発のせいで私たち夫婦の第2の 人生は目茶苦茶」。福島第一原子力発電所事故で避難生活を強いられて いる浅田正文さん(70)は、28日に開かれる東京電力株主総会で、脱原 発を求める株主402人を代表して議案を読み上げる。

浅田さんが株を買ったのは約10年前。「脱原発・東電株主運動」を 知ったのがきっかけだ。もともと都内でシステムエンジニアとして働い ていた浅田さんは、17年前に福島県田村市都路町に夫婦で移り住んだ。 当時は福島の原発から東京に大量に送電されていること知らなかった。 しかし原発トラブルが地元で連日報道されるうちに、反原発運動に徐々 に参加するようになった。

東電株は約160万円を投じて800株を購入。今回の原発事故後に株 価は約8分の1となった。浅田さんは「もうけようと思って買った株で はなく暮らしを守るために買った株。二束三文で売ったってどうしよう もない」と、手放すつもりはない。

浅田さん夫妻は現在、避難先の金沢市に滞在している。福島では有 機農作物を栽培し雑木林から薪を調達して暮らしてきた。地元では「原 発さえなければ」と書き残して自殺する人もいるといい、「原発は人の 命まで奪い始めている。東電には怒りというか一言で済ませられる言葉 がない」と語る。

「負の遺産」

浅田さんらは株主提案で、定款を一部変更して「原子力発電からの 撤退」を明記するよう要求。東日本大震災での福島原発事故の被害拡大 を踏まえ、「嘘に塗り固められ、未来の子どもたちに負の遺産を残し、 地元に負担を押し付ける原発からは、即刻撤退すべきである」と主張し ている。

これに対し東電は、定款は「会社の基本的事項を定めるもの」で、 「業務執行に関する内容を定款で定めるのは適当ではない」として反対 意見を表明している。総会ではほかに会社提案として「取締役17人の 選任」「監査役2人の選任」の議案も諮られる。

株主に送付された報告書によれば、3月末時点の発行済株式総数は 16億701万7531株。株主数は93万3031人で、大株主は第一生命保険 や日本生命保険、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、信託銀行な どの金融機関や、東京都、従業員持ち株会などとなっている。

提案株主402人は全株主数の0.1%にも満たない。「脱原発・東電株 主運動」ではこれまで20年にわたり株主総会で脱原発を提案してきた が、昨年の総会で提案した高速増殖炉からの撤退については、賛成

5.32%、反対91.41%だった。

企業IR支援会社のインベストメントブリッジの保阪薫会長は、 「定款で撤退を定めるのは難しいと思うが、個人投資家には定款ぐらい しか要求できる場がないと考えたのだろう」と話し、受託者責任や企業 の社会的責任に関心が高まる中で、「機関投資家も議案に賛成であれ反 対であれ委託者に理由を説明できるようにしておく必要がある」と述べ た。

助言会社

今年は脱原発提案に賛同を助言する議決権行使助言企業も出てき た。日本プロクシーガバナンス研究所は17日、提案に賛成するよう株 主に助言している。2006年度のサービス開始以来、プロクシーガバナン ス研究所が原発撤退の株主提案への賛成を助言するのは初めて。

吉岡洋二所長は「事故で東電の株価はあっという間に10分の1に なり、民間企業が原発を続けるにはリスクが大き過ぎることが明らかに なった」と述べ、国営方式も含めた原発運営を検討すべきだという観点 から、株主提案への賛成を促すと説明した。議決権行使会社のリスクメ トリックス、グラスルイスは株主提案に反対するよう推奨している。

住信アセットマネジメントでは、事故発生直後の3月中に同社が運 用するSRI(社会的責任投資)ファンドが東電株を全て売却した。理 由について、放射性物質の流出などで環境面の影響が深刻で、「事故の 社会的影響度は格段に増大しており、一段と厳しい評価が避け難い」と 発表している。

会社の価値

朝日ライフアセットマネジメントの速水禎ファンドマネージャー は2002年、事故前に福島第一原発を見学した後、会社の価値が見極め られないと判断し電力株を全て売却した。「配当利回りも高くディフェ ンシブだと考えてきたが、第一原発敷地内に相当たまっているキャスク (使用済み核燃料輸送用容器)を見たとき、コスト計算ができないと思 った」と話す。

東電2位株主である第一生命保険の麻崎秀人副社長は27日、第一 生命の株主総会で東電株について「事故収束の方向性、賠償スキーム、 事業の継続性等、不確定要素の情報収集をしっかり行い対応を検討して いきたい」と述べたものの、保有を継続するかどうかについては明言し なかった。6位株主の三井住友銀行の国部毅頭取は14日、「今、私ども の方から売るつもりはない」と話したが、議決権行使については言及し なかった。

東電株の27日終値は前週末比2.6%高の316円。東日本大震災前の 3月10日から約85%値下がりしている。

席も多く準備

株主総会は、28日午前10時に都内のザ・プリンスパークタワー東 京で開催される。同会場での開催は5年連続。東電は、過去最高となっ た昨年度(10年度)の参加者3342人の約7割増の5600席を準備する。 所要時間は1999年に過去最長の3時間42分を記録し、昨年は3時間1 分だった。広報の寺沢徹哉部長は「事故を受けて株主の関心も高まって いることから、例年よりも席を多く準備し対応できるようにした」とい う。

警視庁は機動隊員も含め警察官150人を動員して総会の警戒に当た る。福島原発事故を受け、株主、福島県などの住民、圧力団体による抗 議行動など予想されるため、不測の事態に備える。

--取材協力:Pavel Alpeyev、日向貴彦、稲島剛史、岡田雄至、伊藤小 巻、黒崎美穂 Editors: Kenzo Taniai, Fukashi Maruta, Tetsuzo Ushiroyama

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