BOA元バンカーが作家に転身-99セント小説、電子書籍の波に乗る

デービッド・レンダー氏は大学時 代から作家になりたいと願っていた。金融業界で25年間にわたってキ ャリアを積んだ後、ついにベストセラー作家になった。同氏の小説は オンライン小売り最大手、米アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末 「キンドル」と書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルの 「Nook(ヌーク)」で、1作品99セントで販売されている。

レンダー氏は米コネティカット大学で英語を専攻。米銀バンク・オ ブ・アメリカ(BOA)のM&A(合併・買収)部門などウォール街で の勤務をこなしながら、飛行機や自動車の中でストーリーを組み立て た。その結果、金融業界を舞台にしたサスペンス3話を自費出版。それ らが、アマゾンの電子書店の「スリラー部門」でベストセラーになっ た。

レンダー氏のケースは、新人作家が出版社の後ろ盾がなくても電子 書籍普及の波に乗って活躍している一例だ。「My Blood Approves」 など吸血鬼をテーマにした小説の作者、アマンダ・ホッキング氏(26) は電子書籍約100万冊を売り上げ、今年、出版社マクミラン・グループ 傘下のセントマーティンズと200万ドル(約1億6000万円)で契約し た。

レンダー氏はインタビューで「電子書籍には出版の未来がかかって いる」と指摘。「この現象は一時的なものではない。私は電子書籍とい うプラットフォームで既に存続可能なビジネスをしているから自分の本 を書棚に並べる必要はない」と語る。

米国出版社協会によると、電子書籍の売上高は昨年4億4130万ド ルと、2008年の6130万ドルから大幅に伸びている。書籍関連業界調 査グループが昨年の休暇シーズンに実施した調査によると、読者のうち 3分の2が「完全に、あるいはほとんど」印刷された書籍から電子書籍 に移行したと答えた。電子書籍の普及により、レンダー氏のような自費 出版する作家たちが幅広い読者層にアクセスし出版費用を節約できるよ うになっている。

99セント

レンダー氏(58)は1990年代、国際銀行業務に携わっていた時に 処女作「Trojan Horse」の執筆を開始した。編集者のリチャード・マ レック氏を雇い、スリラー小説の執筆方法を習得した。そして、さまざ まな出版エージェントに原稿を送った。

レンダー氏は「朝5時に起きて運動をし、1時間半ほど執筆してか ら仕事に向かった」と振り返る。

金融業界の仕事が忙しくなり、原稿はしばらく手付かずになった。 90年代後半にBOAに入社。プライベートエクイティ(PE、未公開 株)投資会社を創業するためいったん退社後、BOAに戻り、M&A部 門で勤務した。2005年、投資銀行カスカディア・キャピタルのニュー ヨーク事務所を開設するため再びBOAを退社した。

レンダー氏はようやく原稿を完成させる時間をつくることができ た。兄弟が小説の文章をキンドルで見栄えがいいよう切り貼りしてくれ るまで出版については何も知らなかった。

「当時の考え方は『駄目でもともと』だった」と振り返る。

レンダー氏は1月、「Trojan Horse」をキンドルとNookで

9.99ドルで発表。売り上げが伸びなかったため他の作家の作品を調査 して価格を検討し、99セントに落ち着いた。そして、電子書籍は売れ 始めた。

「それが分かるまでに1カ月か2カ月かかった。99セントにした ら、すごい勢いで売れ始めた」と語った。

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