原発再稼働に逆風、福島事故の収束難航-検証委が初の現地初視察

東京電力の福島第一原子力発電所事 故の収束に向けた作業が難航する中、「失敗学」の創立者、畑村洋太郎 氏がトップを務める「事故調査・検証委員会」が17日に初めて現地を 視察、収束の難しさを指摘した。夏の電力需要ピークに向けて各地の原 発の再稼働を促したい経済産業省にとっては逆風になりそうだ。

17日深夜に会見した畑村委員長は「とんでもないことが起こってい ると感じた。どう処理していけばいいのか、すぐにはアイデアが出てこ ない」と事故収束の難しさを強調した。

視察には畑村委員長のほか、3委員ら計20人のグループが参加し 早朝にバスで東京を出発し、福島第一、第二原発を視察、その日の深夜 に東京に帰るという強行軍で行われた。水素爆発で建屋が破壊された3 号機や共用プール、6号機で唯一生き残った非常用ディーゼル発電機な どを見学した。放射線量が高く、視察時間はいずれも短時間だった。

畑村委員長は福島第一原発の吉田昌郎所長から作業の進み具合など の説明を受けた。畑村氏が「地震直後にこんなことが起きると考えてい たか」と尋ねると、吉田氏は「全く考えてもいなかったし、地震後にあ あいう大きな津波が来ると考えることもできなかった」と答えたとい う。

畑村委員長は「梅雨時、台風、余震についても随分考えていかない といけない。1回行っただけで、いろいろなものが分かったり、大体分 かったりすることはあり得ない」と、今後も現地視察する方針を示し た。

汚染浄化装置

東電は17日、福島第一原発事故収束に向けた「工程表」の改定を 発表し、2012年1月までに原子炉を「冷温停止」状態にする方針を変更 しなかった。細野豪志首相補佐官は同日夕の合同記者会見で、「間もな く循環注水冷却が始まったと報告できる」と述べていた。

しかし、原子炉の循環冷却への突破口とみなされていた放射能汚染 水浄化装置は17日夜に本格稼働を開始したが、予想以上に放射線量が 高まったため、5時間後に運転を停止した。20日現在、稼働再開のめ どはたっていない。

海江田万里経済産業相は18日、過酷な原発事故に対して電力会社 がとっている「緊急安全対策は適正」との原子力安全・保安院の評価 結果を受けて、「停止中の原発の再稼働は可能」との見解を表明した。

海江田経産相は、電力の安定供給について「震災からの復興と日 本経済再生に不可欠だ」とした上で、原発再稼働の必要性を強調し 「必要があれば私が直接ご説明、お願いしたい」と述べた。

しかし、福島第一原発事故収束の見通しもままならない中で、海 江田経産相のお墨付きが出ても原発立地県の説得もおぼつかないのが 現状だ。

共同通信が20日報じたところによると、関西電力の筆頭株主で ある大阪市の平松邦夫市長は八木誠・関電社長に脱原発の考えを示し た。吉村美栄子・山形県知事も20日の記者会見で「日本は将来的に 脱原発に向かうべきだ」と述べたと伝えられている。

大和証券投資情報部の西村由美次長は20日、「原発が立地する自 治体、地元住民に安全性を説得するのには時間がかかる。きょうは 電力株が買いを集めているが、株価反転の持続性といった観点からす ると、まだ今後の議論を見守る必要がある」と語った。

失敗学

畑村氏は工学院大学機械創造工学科教授、東京大学名誉教授。 ナノ・マイクロ加工などが専門だが、02年11月にNPO法人「失 敗学会」を設立し、経営の失敗事例などに研究を広げている。

畑村氏が立ち上げた失敗知識データベースによると、設計の失 敗、人為的なミス、設計者が将来の変化をどう見誤ったかに焦点を当 てて1175件の失敗事例を調査研究した。事例の中には05年の107人 の死者を出した兵庫県尼崎の列車脱線事故、04年に東京・六本木ヒル ズの回転ドアで起きた6歳児の死亡事故などが含まれている。

畑村氏は7日の福島原発事故調査・検証委初会合後の記者会見で 「原子力はエネルギー密度が非常に高いので危険なものと思っている。 危険なものが安全なものとして取り扱われるのは間違いだ」と語って いる。

東電株価の20日終値は、前週末比12円(4%)高の314円。 関電は102円(7.7%)高の1420円。

取材協力:萩原ゆき、小笹俊一、河野敏

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