【コラム】透明性欠如が欧州債務危機悪化を助長した-Mウィンクラー

欧州中央銀行(ECB)は、こ のままだとデフォルト(債務不履行)に陥るとやすやすと欺かれ、今 度は納税者に対してだまされた一部始終を公にするのを拒んでいる。 欧州を混乱に陥れたのは、秘密に包まれた不明瞭な資金調達であり、 完全な情報公開による透明性の構築だけがその解決策となり得る。

欧州連合(EU)の指導者らがギリシャへの新たな支援策の検 討を進めている間にも、危機はアイルランドとポルトガルにも拡大し、 ユーロ圏17カ国の統合の存続を危うくしている。ギリシャは昨年、 EUと国際通貨基金(IMF)から1100億ユーロ(約12兆6000 億円)の資金を確保したにもかかわらず、デフォルト回避のため最大 450億ユーロの新規融資が必要とみられる。

EUの情報公開規則に基づき、ブルームバーグ・ニュースはE CBに対し、ギリシャが一連のデリバティブ(金融派生商品)を使っ ていかにして中銀の目を盗んで膨れ上がる債務を覆い隠したかを示す 資料の開示を求めた。こうした手法は少なくとも5年にわたって続け られていた。

公開を求めた2つの内部資料は、ECBの6人の理事会メンバ ー向けに昨年作成されたものだ。資料からは、ギリシャ向けの最初の 支援が合意される1年前にECBがどういった情報を得ていたか、ま た同国をデフォルトという事態から救うため税金を投入する前に金融 当局の考えを欧州市民に知らせることが可能だったことが分かる。E Uの統計当局は、ギリシャのスワップ取引について完全な資料を入手 したのは、支援策が決定してから4カ月後のことだったと発表してい る。

やけどしかねない金融商品

公の市場で取引されないデリバティブの透明性向上は、市場の 動向次第でやけどしかねない金融商品を政府がどのように利用してい たかを明らかにし、今後各国政府に再びそうした手法に走ることがな いよう促す材料となるだろう。デリバティブの情報は、将来負債とな り得るその規模にも関わらず、納税者に開示されていない。

金利と通貨スワップが損失を出した時、ギリシャの債務がさら に膨らんだことをわれわれは承知しているが、同国はそうした契約の 現在価値と、債務返済に向けた努力の中で生じた損益について依然と して公表していない。

欧州各国政府と民間投資家がギリシャに対する新たな支援策で 協力を求められつつあるこの時期に、ECBの秘密主義によって疑問 はうやむやにされたままだ。資金は秘密主義から逃げ、透明性の欠如 は投資家や市民に疑念を抱かせる。

その代償は極めて高い。17カ国は単一通貨ユーロを使用し、今 回のギリシャ危機が示すように良くも悪くも、単一の金融政策を採用 している。誕生から13年、ECBはかつてない試練に直面している。

FRBの前例

ECBのケースに先立ち、ブルームバーグは米連邦準備制度理 事会(FRB)に対しても2008年の金融危機時の緊急融資に関する 情報公開を迫った。

ブルームバーグは勝訴し、その結果として公開された資料によ り、最大規模の融資を受けたのは欧州の銀行であり、米銀ではないこ とが明らかとなった。また、バンク・オブ・アメリカ(BOA)とゴ ールドマン・サックス・グループは投資家に報告していたよりも頻繁 に融資を受けていたことが判明。中国銀行とリビア中央銀行が出資す るアラブ・バンキングも融資を得ていた。

ブルームバーグの訴えに対し、FRBと大手米銀数行は情報が 公開されれば借り手行に打撃を与え、取り付け騒ぎに発展しかねない と反論した。情報公開から2か月余り経過した後も、そうしたことは 一切起きていない。

唯一の道

金利スワップなどいわゆるヘッジ商品は、米政府系機関の巨額 損失の要因でもあったわけで、その危険性は示されている。投資銀行 がそうした不可解な商品を販売する上で果した役割を把握することは、 規制当局にとって601兆ドル規模の店頭デリバティブ市場の規則を 策定する上で役に立つことだろう。

ECBは、ギリシャ支援、場合によってはほかの国々の支援に も回され得る資金を拠出している欧州諸国と納税者に対し、十分な説 明責任がある。この問題に関する透明性の確保こそが、債務危機の新 たな感染を確実に防ぐ唯一の手段である。 (マシュー・ウィンクラー)

(マシュー・ウィンクラー氏は、ブルームバーグ・ニュースの編集主 幹です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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