野村とJPモルガン:ユーロ急落を予想せず-債務問題先送りと金利差

野村証券と米銀JPモルガン・チ ェースはともに、ギリシャなどで深刻化する財政危機にもかかわらず、 大幅で持続的なユーロ安には至らないと予想する。世界経済の緩やかな 回復が続き、ユーロ圏と利上げが2013年以降になる日米との金利差も 拡大すると見ているためだ。

野村証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジストは16日午後、ブル ームバーグ主催の投資家セミナーで講演し、ユーロ相場は「多少は下振 れても、トレンドとしてユーロ安に行くわけではない」と述べた。「世 界の2大通貨」であり、外貨準備を運用する各国の中央銀行を含む「分 厚い投資家層がいる」と指摘。「金利で動いている部分が圧倒的に多い 」とも説明した。

田中氏は、ギリシャ問題が表面化した09年11月以降、ユーロは 「金利と財政プレミアムで90%以上説明できる」と主張。欧州中央銀 行(ECB)が1年間で1%ポイント利上げできるかは不透明だが、市 場が1%の利上げと財政懸念の後退を織り込んだ場合には1ユーロ=

1.45ドル前後が理論値になると分析した。

欧州債務危機の深刻化を受け、ユーロ相場は16日に一時、対ドル で3週間ぶりに1.40ドル台に下落。円に対しても1ユーロ=113円 50銭と1カ月ぶりの安値をつけた。5月4日には1.4940ドルと1年 5カ月ぶりの高値、対円では4月11日に11カ月ぶり高値となる123 円33銭まで上昇していた。

円とドルはゼロ金利

JPモルガン・チェース銀行の佐々木融債券為替調査部長も同セミ ナーで講演し、世界経済が底堅く金融資本市場が安定に向かう基本的な 流れの中で、政策金利がゼロの円とドルは「ともに弱い通貨になってい く」と予想。ギリシャ問題が「安定的に先延ばし」される限り、ユーロ は対円で「1ユーロ=120円台へ上がっていく」と語った。同社は年末 のユーロ・ドル相場を1.48ドルと予測している。

ユーロ圏初のデフォルト(債務不履行)を回避するためのギリシャ 追加支援策をめぐり、欧州連合(EU)内の意見調整が難航。ギリシャ では財政再建案への抗議ストやデモが勢いを増し、与野党にも反対意見 が広がっている。

ギリシャの2年物国債利回りは16日、初めて30%を突破(価格 は下落)。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場ではギリ シャ国債を保証するコストが過去最高を更新した。

ブルームバーグの調査(予想中央値)によると、市場関係者はユー ロ・ドル相場が年末に1.40ドル、来年3月末は1.38ドル、来年末に は1.36ドルに下落すると予測。円・ユーロ相場についてはそれぞれ 122、122、123円との見方だ。

円・ドル予想は対照的

野村証券とJPモルガンはともに、世界経済の緩やかな拡大が続く が米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げは金融危機の後遺症で13 年以降になると分析。しかし、円・ドル相場予想は対照的だった。

田中氏は、年末と来年3月末に87円50銭、来年末は92円50銭 に下落すると予想。米国経済の足を引っ張るバランスシート調整が徐々 にではあるが進んでおり、円・ドル相場の「ベストシグナル」である米 2年物国債利回りも緩やかに上昇するとみているためだ。

佐々木氏は、年末までに戦後最高値となる75円に上昇する可能性 があると予想した。米国のインフレ圧力は失業率の高止まりなどを背景 に高まりにくいと指摘。ゼロ金利の円とドルは他の主要通貨に対して下 落するが、世界最大の対外赤字を抱える米国のドルは黒字国である日本 の円よりも弱くなると分析した。

ブルームバーグの調査によると、市場関係者は年末に86円、来年 3月末は88円、来年末には90円に下落すると予測している。

田中氏は1983年に慶応義塾大学を卒業し、日本長期信用銀行に入 行。バークレイズ銀行などを経て、08年11月から現職。3月20日付 の日経ヴェリタスが報じた「金利・為替アナリスト」人気調査では2年 連続の首位となった。

佐々木氏は92年に上智大学を卒業後、日本銀行に入行。国際局為 替課で為替介入や市場調査担当を経て00年からニューヨーク事務所に 駐在。03年4月にJPモルガン・チェース銀行東京支店に入行した。 10年のユーロマネー東京外為市場調査では相場予測部門で第3位。

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