コンテンツにスキップする

【コラム】薄暗いのは東京のネオンサインだけで十分だ-Wペセック

東日本大震災から10週間が経過し た今、日本に新しい名前を付けたいと思う。「東電国」だ。

他に考えられる名前があるだろうか。東京電力の福島第一原子力 発電所のメルトダウン(炉心溶融)で、日本経済には放射線の暗雲が 現実的にも比喩的にも垂れ込めた。しかしまだ日本の指導者は、英石 油会社BPが昨年の米メキシコ湾原油流出事故の真っただ中に受けた のに匹敵する非難を世界中から受けている東電を甘やかしている。

日本ではかつて、日本経済はトヨタ自動車の拡大版だという考え 方が浸透していた。トヨタという名前が技術革新や品質、戦後の日本 の力強い復興を連想させるからだ。しかし今「東電国」と評されて喜 ぶ人は誰もいない。東電はこれまで、政府と産業の間に存在する近親 愛的な関係の縮図であったし、現在ではより危険なこと、つまり想定 される最悪の瞬間における指導力の空白を象徴しているからだ。

先週、東電の清水正孝社長は数十年にわたり地震リスクを軽視し てチェルノブイリ以来最悪の原発事故を招いたことなどの責任を取っ て辞意を表明した。東電は後任に勤続36年のベテランを据えた。

投資家たちはこの愚かさを見てすぐさま東電たたきに出た。東電 の社債保証コストは原油流出事故時にBPが付けた水準を越えるまで に上昇。政府の支援を東電が受けているというBPにはなかった事実 を市場はほとんど重視せず、日本の有力企業と政治体制に事実上の不 信任票を突き付けた格好だ。

3度目のリセッション

これは正当な評決だ。3月11日の大災害は日本を10年で3度目 のリセッション(景気後退)に陥れただけでなく、菅直人首相をはじ めとする指導者らが途方もない危機に見舞われている中でも平時と同 じような行動をしている姿を浮き彫りにした。

国と企業が共犯関係にあるという日本文化のシンボルが東電だと すれば、トヨタは人為ミスが事態をいかに悪化させ、日本経済の軌道 を狂わせるかをよく示している。トヨタの1-3月(第1四半期)純 利益は前年同期比77%減少した。

トヨタの工場の被災や停電、サプライチェーン(供給網)の障害、 内需の落ち込み、日本製品の放射線汚染を警戒する海外の懸念は、昨 年の度重なるリコール(無料の回収・修理)の影響から脱し切れてい ない同社にさらなる重しとなっている。今後予定される国内企業決算 も同様の落ち込みが予想される。

指導力の欠如

かつて超モダンでネオンサインが華やかだった東京の都心部では、 節電の影響で今では時折、米国のアーミッシュ派(電気や自動車など の技術を使わずに生活するキリスト教徒の一派)の村を想起させられ ることもある。

オバマ大統領就任以降の日本の首相で4人目の菅首相に対しては、 当然のことながら辞任を求める声が強くなりつつある。朝日新聞の先 週の報道によると、菅首相の支持率は約26%で、昨年6月の就任時の 半分未満だ。

菅首相率いる民主党と野党自民党は、国民の自信回復のために手 を組もうとしていない。日銀が何とかして日本経済を救い出すだろう という期待はまだあるが、過去20年にわたる日銀の景気刺激策は1980 年代のバブル後の不況を終息させるには至っていない。

民主党と自民党はほとんど話し合いもせずに、日本再生よりも政 治上のつまらない得点稼ぎに気を取られている。政府には復興や原発 危機の収束、信用格付けの引き下げ回避、高齢化社会への対応、デフ レの終息策、競争力向上などの計画が欠如している。将来に対する自 信がさらに衰えれば、消費も企業の投資も減少する。

こうした中で日本には大連立政権が必要だ。両党は小異を捨て、 当分の間は大同団結すべきだ。そうすれば両党は1億2700万人の国民 が普段の生活を取り戻すために働くことができる。両党の喫緊の課題 は東電の失敗が日本というブランドにさらに大きなダメージを与える 前に、東電を統制することだ。東電の分割だってあり得るかもしれな い。

これらは過渡的な出来事ではないと政府は認識する必要がある。 指導者たちが仕事に取り掛からなければ、日本経済の見通しはこの国 のネオンサインの明かりとともに薄暗くなっていくだろう。(ウィリア ム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

To contact the writer of this column: Willie Pesek in Tokyo at wpesek@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE