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【クレジット市場】後手に回る日銀の緩和策-日米TB利回り格差拡大

日本の短期国債利回りの米国に対 する上乗せ幅は、2008年の世界金融危機以降で最大に拡大しており、 金融緩和に対する日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢の 違いを浮き彫りにしている。

日本の6カ月物国庫短期証券(TB)の利回りは米国に比べて1.9 ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高く、日米の利回り格差 は今月9日には6.4bpと、08年12月以来の高水準となった。財務省 の統計によると、外国人投資家は4月に日本の短期証券の買い増しに動 き、買い越し額は1月以来の高水準となり、5月もこれまでのところ買 い越しが続いている。

FRBは、米国債保有残高を市中に出回るドル紙幣の1.5倍近く まで拡大させているにもかかわらず、日銀には、国債保有残高を日銀券 発行残高の範囲内に抑えるという「日銀券ルール」がある。同ルールは 国債の信認つなぎ止めに寄与する一方、住友信託銀行の瀬良礼子マーケ ットストラテジストによれば、日銀は金融緩和に消極的な印象を為替市 場に与え、円高を招いている可能性があるという。

瀬良氏は、FRBのように「一気にバランスシートを2倍に拡大し たところ」と、日銀のように「ゆっくりゆっくり拡大してきているとこ ろでは、そのスピードの違いというのはマーケットへのアピールという 意味では大きな差があったと思う」と説明。「だからこそドルが弱くな っている」とし、日米の金融緩和ペースの違いが円高進行に寄与してい るとの見方を示した。

日銀、追加緩和見送り

1-3月の日本の実質国内総生産(GDP)は3月11日の東日本 大震災の影響から、前期比年率マイナス3.7%と2四半期連続のマイナ ス成長に陥ったが、日銀は20日の金融政策決定会合で、現行政策の維 持を決定。前回会合で資産買い入れ等基金の5兆円増額を提案した西村 清彦副総裁は再提案を見送った。

日本の6カ月物TBの利回りは過去5年間の平均で、米国を1.6% も下回っていたが、今年4月以降は日米の利回りが逆転。長い期間にわ たって、日本のTB利回りが米国を上回ったのは09年11月以来のこ とだ。

6カ月物TBの利回りは昨年10月、5年ぶり低水準となる

0.104%を付けたが、震災後は一時、0.13%まで上昇。国内金融市場 の信用状態が悪化したためで、日銀は緊急の資金供給オペを連日実施し たほか、3月の政策決定会合では、5兆円の金融資産買い取り枠を10 兆円に増額した。

日米逆転には、米政府が6カ月物Tビル(財務省短期証券)の発行 を制限し、利回りが低下したことも関係している。

日銀への緩和圧力

日銀の国債保有残高は10日時点で、7420億ドル相当で、日銀券 の76%に当たる。一方、FRBの米国債保有高は1.47兆ドル、ドル 紙幣の流通高は9760億ドル。

FRBは昨年11月以降、量的緩和第2弾(QE2)の一環として、 毎月750億ドル相当の米国債を買い取っているが、日銀の毎月の国債 購入額は220億ドルにとどまっている。

民主党の小沢鋭仁議員(前環境相)は27日、震災復興の財源確保 に向けて、日銀は復興債を買い切りオペの対象にすべきだと主張。マク ロ経済的な観点から、ただちに増税に踏み切るのは間違いであり、国債 を活用する必要性を強調した。

菅直人首相は19日、日銀による国債引き受けは「原則として」法 律で禁じられていると指摘。日銀の白川方明総裁も4月7日、日銀によ る国債引き受けは円の信認を損ない、国債発行にも支障を来す可能性が あると主張した。

10年物日本国債の利回りは1.12%で、ブルームバーグが調査して いる32カ国の中で最も低い。米国は3.17%、ドイツは3.12%。

外国人投資家

円・ドル相場は3月17日、戦後最高値の76円25銭を付けたのに 対し、ドル指数は今月4日、08年7月以来の低水準まで下落した。

円高で日本国債の投資妙味は増す。外国人投資家による13日まで の1週間の短期証券投資は9900億円の買い越しとなり、4月15日ま での1週間以来で最大の買い越し額。また、4月の長期債買い越し額は

1.62兆円で、08年8月以来最大。

岡三アセットマネジメントの山田聡債券運用部長は、「日銀は踏み 込んだことをいろいろやっているなかで、マーケットの信認を得ている と思う」と述べたうえで、「リーマンショック以降、日銀券と国債のバ ランスに関してはいろいろルールをもってかなり押さえてしっかりやっ ていると思う。そういう意味を含めて円がいろんな意味で買われる部分 がある」と指摘した。

「麻薬みたいなもの」

しかし、円高は日本製品の輸出競争力を損ない、輸出が日本経済回 復のけん引役となる可能性が薄らぐ。トヨタ自動車の小澤哲副社長は 11日、円高への対応に関して、「すでに一企業の努力を超えている」 と指摘した。1-3月のGDP成長率では、輸出から輸入を差し引いた 純輸出が0.2ポイント全体を押し下げた。

日銀のバランスシートは日本のGDPの32%に相当するが、FR Bの場合は米GDPの20%。野村総合研究所の井上哲也主席研究員は、 日銀の方が国債保有高が少ないものの、緩和スタンスがFRBに遅れを 取っているとは思わないとの認識を示す。

井上氏は、米国が「金融危機に対して、どれだけアグレッシブにや ったかというとみんなそっちを見てしまう」としたうえで、「長期的に はドルに対する信認を失わせるというリスクは当然ある。麻薬みたいに なってずっと使い出してしまうと信認が失われることになる」と警告す る。

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