コンテンツにスキップする

生来のトレーダーがフェースブック株で躍進-取引仲介で世界変えるか

未公開株などの取引仲介システム を手掛ける米セカンドマーケット・ホールディングスのバリー・シル バート最高経営責任者(CEO)は生まれながらのトレーダーだ。10 歳になる前から野球カードの収集家の集まりで取引し、15歳で貯金を 株価が1ドル未満のペニー・ストックに投じて2000ドル(現在のレー トで約16万3500円)の損を出した。

17歳で登録ブローカーとなったシルバート氏はバンカー時代の 25歳の時、経営破綻した米エネルギー会社エンロンの債権者に代わり、 同社の光ファイバーケーブルやボリビアのパイプラインなどの資産を 処分するため世界中を飛び回った。ブルームバーグ・マーケッツ誌6 月号が伝えた。

34歳になった今、シルバート氏は話題の未公開株市場で最も著名 なプレーヤーだ。ベンチャーキャピタル(VC)が支援するソーシャ ル・メディア企業のフェースブックやリンクトイン、ツイッターとい った未公開株の取引で頼りになるフォーラムを構築している。これら の銘柄の中には4月半ばまでの1年間で2倍強に値上がりしたものも ある。

こうした未公開株の値上がりがセカンドマーケットを飛躍させ、 シルバート氏を金持ちにしている。セカンドマーケットによると、同 社はVC支援の未公開企業の株式売買代金で世界最大のブローカー。 2009年に1億ドルだった同社の未公開株取引総額は10年には4倍の 4億ドルに拡大。11年は1-3月(第1四半期)の結果からみて、10 億ドルに達する可能性がある。手数料は1取引当たり3-5%だとい う。

世界を変える

昨年はアジアの名だたる投資家がセカンドマーケットの株式 10%を1500万ドルで購入した。その結果、シルバート氏の35%の保 有分は5250万ドルと評価された。

年齢より10歳若く見えるシルバート氏は、テクノロジー業界の多 くの起業家と同様、自身のベンチャーが世界を変えつつあると確信し ている。「われわれが自由に使えるようにしたカネが他のVC支援の新 興企業に再投資され、雇用を生み出している」と言う同氏は、「われわ れが築いているこの市場は、資本形成プロセス全体に極めて重要だ」 と自負している。

未公開株は市場そのものがホットであると同時に、ホットな話題 でもある。調査会社NYPPEX・ホールディングスによると、未公 開株取引の総額は09年の24億ドルから10年には46億ドルに増加し、 今年は70億ドル近くに達する可能性がある。

フェースブック

投資家は株式公開による多額の利益を期待してフェースブックや ツイッターなどの企業の未公開株を手に入れようと躍起だ。投資銀行 も顧客に新規公開株を提供するため争奪戦を繰り広げている。だが未 公開株は、比較的特権のある層にしか開かれていない、往々にして不 透明な市場で取引される。

1月には、ゴールドマン・サックス・グループが10億ドル相当の フェースブック株を米国の投資家向けに割り当てるのを取りやめた。 この割り当てにメディアが高い関心を寄せ、証券法に沿った形で実施 できなくなる恐れがあるというのが理由だった。フェースブックに自 ら出資していたゴールドマンはその後、この10億ドル相当の株式を米 国外顧客に売却しており、フェースブックに500億ドルの価値がある ことを示唆した。

1933年の米証券取引法では未公開株の購入を「適格」投資家に制 限しており、個人の場合は100万ドル以上の純資産または年収20万ド ル以上の富裕層が対象。ただ米証券取引委員会(SEC)は、制限を 近く緩和する可能性があり、シャピロ委員長はSECへの情報開示義 務がない企業の株主数上限を現行の499人から引き上げることを検討 している。実際に引き上げられれば、1社当たりの潜在株主の層が膨 らみ、未公開株取引の市場規模は拡大することになる。

不十分な情報開示

ただ、こうした準公的市場で未公開企業の株式が十分な情報開示 なく取引されるのは根本的に問題だとの指摘もある。コロンビア大学 法科大学院のジョン・コフィー教授(証券法)は「限られた情報しか なく、流動性も不安定な危険な世界に、中間層を参入させてしまう」 と警告する。

セカンドマーケットで取引されている企業は、どの程度の情報開 示を必要とされているのか。実際のところは企業の意向次第で、セカ ンドマーケットでは、企業が開示をいとわない財務データだけを顧客 に提供している。

フェースブック株はセカンドマーケットで週に1回競売が行われ ている。3月時点では、フェースブック株はセカンドマーケットの未 公開株取引全体の40%強を占めていた。同時点でセカンドマーケット のウェブ上の取引登録者数は全資産クラス合計で5万3000人。08年 は2500人だった。

手本はeベイ

シルバート氏はセカンドマーケットを、現金化しにくい非流動資 産市場におけるeベイのような存在だと特徴づけている。大方の取引 は電話やウェブサイトを通して始まる。売り手は通常、元従業員や初 期に出資したベンチャーキャピタリストで、買い手はヘッジファンド や富裕層投資家、他のVCだ。

売り手は売却の希望価格と株数を提示する。買い手は価格に合意 するか、低い買い値を提示するか、サイトを利用して個別交渉のため の会議を設ける。企業は開示しても良いと考える財務情報を、取引参 加者だけがアクセスできるウェブサイトの安全な場所に掲載する。

シルバート氏はさらに、これにソーシャル・ネットワーキング機 能を追加することで、eベイのビジネスモデルを超えたい考えだ。参 加者は保有銘柄の一覧表や戦略を掲示し、強く関心を寄せる企業のリ ストも作成できる。将来的にはメッセージもやり取りできるようにす るという。

流動性は幻か

ただこうした未公開株市場については懐疑的な見方もある。コフ ィー教授は良さそうなのは見た目だけだと話し、「このような未公開株 の流通市場は、流動性の幻想を招いているだけで、現実を示している わけではない」と指摘。「あくまでも取引をマッチさせるシステムであ って、自己資本を投じるディーラーのようには機能しない。市場が苦 境に陥れば、流動性は消滅する」と警告する。

確かに現在でも、大型の未公開株でさえ、数日ないし数週間にわ たって取引が行われないケースもある。

シルバート氏が取引を仲介するのは新興企業の株式だけではない。 破産債権や住宅ローン担保証券(MBS)、ヘッジファンドのリミテッ ド・パートナーシップといった取引が困難な資産クラスも多く取り扱 う。

新たな顧客は独アリアンツ傘下の債券ファンド運用会社パシフィ ック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)だ。PIMC Oは業績連動型報酬として株式を活用しており、従業員だけがPIM CO株を売買できる。セカンドマーケットはまた、農産物供給大手カ ーギルやジーンズ製造のリーバイ・ストラウスの未公開株も標的にし ている。

シルバート氏には、ベンチャーに自ら資金を投じて育てるエンジ ェル投資家の顔もある。ニューヨークのオンライン不動産ブローカー、 リアルディレクトやロサンゼルスの起業家向け資金調達支援サイトを 手掛けるプロファウンダー・ファイナンシャルなど新興企業数社を支 援するため、約50万ドルを投資している。

これらの企業に共通するのは、顧客のために問題を解決したいと いう意思と、そのプロセスにおける現在のやり方を打破しようとする 姿勢だという。これはまさに、シルバート氏が6年前の起業以来継続 して取り組んできたことだ。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE