コンテンツにスキップする

【コラム】菅首相が辞めただけで雲が晴れることはない-W・ペセック

震災で精神的痛手負った日本では、 菅直人首相の退陣は織り込み済みということになっているようだ。菅 首相は未曽有の地震・津波被害をもたらした東日本大震災への対応で 一生に一度しかない舞台で存在感を示すことができなかった。評論家 らは菅首相が就任から1年となる今年6月に官邸の主にとどまってい るか疑問視している。

投資家は日本のリーダーに関する鋭い皮肉を思い出している。彼 らは1年程度その座にいて、外国人投資家が顔を知る前に辞めてしま う。日本政府はひっきりなしに新しい外相や財務相を重要な国際会議 に送り込む。鳩山由紀夫前首相の在任期間はわずか9カ月だった。

日本経済の将来は、政治システムの抜本的改革なしには、福島第 一原子力発電所の放射能漏れ事故のように雲行きが怪しくなる。世界 3位の経済大国が突然、混乱に陥った今の焦点は、3月11日の東日本 大震災とその後の原発事故が日本の今年の国内総生産(GDP)にど のような影響を与えるのかだ。そして、高齢化が進んでいる上に、デ フレに苦しみ続ける日本経済が今から5年、10年、20年後にどのよう な姿になっているかを深く考える必要がある。

日本には国を事実上動かしている官僚から権限を奪い取る強い首 相が必要だが、実際にそうした首相がいても、有力な政治家らが改革 を阻止し、そうしたリーダーの追放に動く。

官僚支配

1990年代に厚相として官僚を指揮し薬害エイズ問題の解決を目 指した菅首相は、ここ数十年では政治家一族の出身でない数少ない首 相だ。菅首相が10カ月前に官僚から権限を奪う方針を示した際、投資 家は興奮した。われわれ外国の報道陣は菅政権が記者会見を閉鎖的な 日本の「記者クラブ」部外者にも開放するよう動いたことを歓迎した。 だが既得権益を握る者たちが集結し、現状維持を図っている。

政府内に堕落をもたらす最も大きな要因の1つは、政治家による 絶対的基盤の形成だ。長くその座にいると影響力が強まり、個人的成 功を目指し変化を避けようになる。政府をむしばむ別の問題もある。 官僚が退官後にかつて監督していた業界に再就職する「天下り」だ。 官僚は一般国民ではなく将来の雇用主のために働くようになる。福島 第一原発を運営する東京電力の安全に関する報告の虚偽記載とリスク の過小評価が繰り返されていたことは、国民に目を向けない官僚組織 があったためかもしれない。

官僚支配の打破を目指し最近では異例の長期政権となった自民党 の小泉純一郎元首相でさえ、2001-06年の在任期間中の成果は限られ たものでしかなかった。菅首相と小泉元首相は政党もイデオロギーも 異なるが、ぶつかったのは「日本株式会社」という同じ壁だ。

格付け

誰が次の首相に就任するのか。民主党の岡田克也幹事長や枝野幸 男官房長官、野田佳彦財務相、玄葉光一郎国家戦略担当相らの名前が 挙がっている。大穴は蓮舫行政刷新担当相だが、実現すれば日本初の 女性首相となる。だが、次期首相が現状を打ち破り、日本の政界の秩 序を変える意志がなければ話にならない。

米格付け会社スダンダード・アンド・プアーズ(S&P)は今週、 その存在感を少し取り戻した。米国を最上級の「AAA」から格下げ するかもしれないと脅かしたのだ。日本は財政に対するより厳しい見 方に備える必要がある。公的債務はすでにGDPの約200%に達して おり、政治家はさらに震災の復興資金を得るため国債増発に動いてい る。

今年1月、S&Pは日本を「AA-」に格下げした。中国と同じ 格付けだ。被災地域復興のための借金は、日本の競争力を高めること には寄与しない。リーダーが交代しても、公的債務の対GDP比の改 善が進むわけではない。

1億2700万人の日本国民は、国のかじ取りができる何物にもとら われないビジョンを持ったリーダーを求めている。そうした人物がし ばらくの間、その職務にとどまってくれることこそが、日本国民にと って必要だ。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE