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【クレジット市場】生保の外債買い越し過去最長-復興で国債増発懸念

生命保険会社の外国債券の買い越 し期間が過去最長を記録している。内外金利差の拡大に加えて、東日本 大震災後の復旧・復興をめぐる国債の増発懸念などが背景。そうした中 、この日に実施された日本の20年国債(発行額は約1兆1000億円) の入札では、応札倍率が前回入札時を下回った。

投資家部門別対外証券投資によると、生保は3月まで13カ月連続 で中長期の外債を買い越しており、同じ基準で集計された統計でさかの ぼることができる2005年以降、最も長い期間で買い越しが続いている。 3月の買い越し額は250億円だった。

日本とドイツの20年債利回り格差は今月11日に189ベーシスポ イント(bp、1bp=0.01%ポイント)と、昨年1月14日以来の水 準に拡大している。

富国生命投資顧問の桜井祐記社長は、国債増発の可能性を背景とし た需給懸念に加えて、大口の買い手となる大手銀行などが震災に絡む融 資に応じなければならないという点を考慮すると、「今まで国債が買わ れていた構図が変わる可能性がある」と分析。さらに、最近では特に中 長期の内外金利差が開いており、ある程度円高が止まったとの判断が成 り立てば、外債の方が「円債を買うより妙味がある」と語る。

財務省がこの日に実施した3月11日の震災発生後2回目となる 20年利付国債(4月債、表面利率2.0%)の価格競争入札では、最低 落札価格が99円50銭と、ブルームバーグ・ニュースが調査した市場 予想と一致。応札倍率は2.92倍と、前回の4.13倍を下回った。最低 と平均価格の差であるテールは10銭と、前回の22銭から縮小した。

生保、震災後は外債買い増し

週次の対外証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると 、大震災が発生した翌週の3月13-19日には、日本の投資家が海外の 中長期債を3726億円買い越した。さらに、20-26日の同買い越し額 は9720億円と、昨年9月以来の水準に膨らんでいる。

第一生命保険の宮田康弘外国債券部長は、震災後に急激に円高が進 んだが、3月後半には為替ヘッジなしで外債を購入していたと説明。7 カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の協調介入が入ってドル・円相 場の「フロアがもう固まったという判断だったと思われる」と話した。

震災発生後には、生保が保険金の支払い原資を確保するため、海外 から資金を戻すとの憶測が生じるなど、国内企業によるレパトリエーシ ョン(自国への資金回帰)の思惑で円が急騰。ドル・円相場は先月17 日に一時1ドル=76円25銭と、円の戦後最高値を付けていた。その 後は18日にG7が協調でドル買い・円売り介入を実施し、今月6日に は85円53銭と、昨年9月21日以来の水準に値を戻した。

変動率は急騰後に低下

1年物のユーロ・円オプションのインプライド・ボラティリティ (IV、予想変動率)は、先月17日に18%台と、昨年7月以来の水 準に急伸。その後は15%台に低下しており、外債投資が行いやすくな っている。

生命保険協会の渡辺光一郎会長は先月18日の会見で、震災発生後 の外国為替市場では日本の生損保が保険金支払いのために海外資産を売 却するとの観測が浮上していたことについて、「保険会社が急いで外国 債券を売却して資金調達するような状況にない。外国資産を売却してい る事実もないし、その必要性もない」と言明。さらに、今月15日には 生保業界の保険金支払は、14日現在で1593件、128億円と、これま での経験を踏まえて試算した結果、全体では約2000億円になるとの見 通しを示している。

震災の復旧・復興財源

政府が先月23日に明らかにした試算によると、大震災で被害を受 けた道路・港湾・空港設備や住宅などの直接的な被害額は最大で約25 兆円に上る見通し。同試算を基に今年度の補正予算が検討されるが、東 京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐる被害者補償を政府が支援す ることになれば金額はさらに膨らむ。

損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントの平松伸仁シニアイ ンベストメントマネジャーは、「復興に向かってお金を出さないわけに はいかない。その中で財源のめどがつかないということになれば、国債 を増発せざるを得ない」と指摘。その上で、超長期債については財政面 で明確なビジョンが示されないと、「怖くて買いたくない」といった見 方が多いとしている。

民主党の岡田克也幹事長は17日のテレビ番組で、東日本大震災に 関連した復興のための第2次補正以降の編成には国債発行が避けられな いとの見通しを示した。その際には財源として増税などの方向性を示す ことが重要とし、国債発行とセットで議論していく必要性を強調した。

昨年12月に出された2011年度の国債発行計画によると、カレン ダーベース(11年4月1日-12年3月31日)の市中発行額は30年 債が前年度当初計画比で8000億円増の5兆6000億円、40年債は同 4000億円増の1兆6000億円。一方で、20年以下の発行額は据え置か れた。

国と地方を合わせた長期債務残高の対国内総生産(GDP)比率は 昨年末で181%に達した。CMAによると、クレジット・デフォルト・ スワップ(CDS)市場での日本国債の5年物保証料率は、震災発生後 の先月15日には一時122.3bpとCMAがデータ集計を開始した04 年以降で最高となった。19日時点で86bp。ドイツ国債の保証料率は 46bp、米国債は47.5bp。

ヘッジ付き外債は当面維持へ

ユーロ圏の債券に投資する際の為替ヘッジコストとなる3カ月物の ユーロ建てと円建てのロンドン銀行間貸出金利(LIBOR)格差は、 21日時点で111bpと09年3月以来の水準に拡大している。

欧州中央銀行(ECB)は7日の定例政策委員会で、短期金利の調 節手段である短期買いオペ(売り戻し条件付き債券買いオペ=レポ)の 最低応札金利を0.25ポイント引き上げ1.25%とすることを決めた。

第一生命の宮田氏は、「今はまだ景気回復の初期、中期段階の中な ので、為替ヘッジコストが少しずつ上がっていくと思う」と言い、ヘッ ジ付き外債でも「現状ではキャリー(金利収入)が取れる」局面にある と指摘。日本の20年債利回りが「仮に2.3%、2.4%とかになってい けば、そちらにシフトしていく可能性もある」との見方を示した。

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