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【書評】ヘッジファンドの神々が美人殺人鬼に遭遇-新作スリラー

マーケットが谷底に落ち込も うとしていた2007年12月、ヘッジファンドを自分で運営してい るジミー・クサックは最大顧客から、運用者にとって何よりも恐ろ しい言葉を告げられた。「私の金を返して欲しい」。

ノーブ・ヴォネガット氏のスリラー第2作「The Gods of Greenwich(仮訳:グリニッチの神様たち)」のハラハラさせられ る書き出しだ。

求められた金額はジミーにとって、屋根に上ってはしごを外さ れたようなものだった。ジミーはエンパイアステートビルにオフィ スを借り、マンハッタンのミートパッキング地区にコンドミニアム を買って300万ドル(約2億5000万円)の住宅ローンを抱えて いる。解約請求の額1億2000万ドルは、ゴールドマン・サックス・ グループを辞めて始めたヘッジファンドの資産の85%に相当した。

ジミーの苦労は始まったばかりだった。市場が「厳しい」環境 から命取りになりかねない「恐ろしい」環境へと悪化する中で、ジ ミーは自身のファンドをたたみ、ヘッジファンドのメッカ、グリニ ッチ(コネティカット州)のリーウェル・キャピタルに就職するこ とにした。リーウェルを率いるサイ(サイラス・リーサー)は投資 で常勝、その勝ちっぷりから業界の伝説となりつつあった。

ジミーは知らないが、サイはあるアイスランドの銀行株が急落 することと、ベントウィングという代替エネルギー会社株が急騰す ることに賭けている。そして、このアイスランドの銀行にはカター ルの支援があることは2人とも知らない。

謎の美女

登場人物は皆、秘密を持っているが、その最たるものはパーク アベニューの美容整形病院に勤める27歳の看護婦、レーチェル・ ウィティアーだ。片手に謎めいた傷がありテキサスなまりで話す彼 女の趣味は殺人。男性の心を引きつける美女は実は、ためらいなく 殺す注射針を持った殺人鬼なのだ。

筆者のヴォネガット氏は元モルガン・スタンレーの運用者。「猫 のゆりかご」などの作者、故カート・ヴォネガット・ジュニアの遠 い親戚でもある。

本著はヴォネガット氏の第1作「トップ・プロデューサー」に 比べ、人物の現実味が増している。前作と同様に運用者らのセリフ も面白い。

リーウェルのトップトレーダーはジミーに警告する。「よく覚 えておけよ。世の中には2種類の人間しかいない。1つは金をもう ける人間だ」 「もう一方は?」 「無駄に酸素を吸う空気泥棒さ」

前作では最初の数章で筋書きが見えてしまったが、新作では最 後まで謎が残る。(ジェームズ・プレスリー)

(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。こ の 書評の内容は同氏自身の見解です)

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