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【コラム】今年の超大型IPO、最善の投資手法は様子見-M・リン

これは、今年の超大型新規株式公 開(IPO)だ。スイスの商品取引会社、グレンコア・インターナシ ョナルの株式が来月ロンドン市場に上場されれば、時価総額は優に600 億ドル(約4兆9700億円)を超えるとみられる。無視するわけにはい かない規模だ。

ただ、他のIPOの場合と同様、今回も極めて重要な問題が提起 されている。それは、企業の所有者が株式を売却しようとする場合、 購入する側にとっては適切な時期なのかどうかという問題だ。

答えはノーだ。グレンコアは本質的にはトレーディングを行う取 引会社と言える。鉱山業の複合企業より、投資銀行やヘッジファンド、 プライベートエクイティ(未公開株、PE)投資会社との共通点の方 が多い。取引会社、つまりトレーダーが得意とする分野の1つは好機 を狙うということだ。株式を信用できる買い手に売却する好機を熟知 している可能性が高い。

グレンコアはいつの日か素晴らしい企業になるだろう。商品ブー ムが終わりつつあるというような警告を信じてはいけない。まだまだ 長期にわたって続く。しかし、株式の買いの好機は誇大広告が収まっ た後であって、ピーク時ではない。約30年間にわたって株式非公開の パートナーシップだったグレンコアが今、社会の注目というスポット ライトを浴びつつある。

グレンコアは1994年、経営陣が米国からの元逃亡者である資本家 マーク・リッチ氏から買収。社名をマーク・リッチ・アンド・カンパ ニーからグレンコアに変更した。同社には投資すべき説得力のある理 由がある。複数の資源会社の多くの株式を保有し、社員数は約2700人。 世界各地にトレーディング部門を擁し、子会社の社員総数は約5万 4800人に上る。

魅力的な資産

グレンコアはスイスの資源大手、エクストラータの筆頭株主であ り、その株式の価値だけで240億ドル相当に上る。資産として魅力的 で、投資家の興味を引き付けるはずだ。

それでもなお、企業価値の評価は難しい。グレンコアのような企 業は他に存在しないため、比較するのは容易ではない。もちろん、商 品の上昇相場はこの先何度か減速することもあるだろう。米ゴールド マン・サックス・グループは先週、投資家に対し商品の持ち高を減ら すよう推奨し、原油や金、銅の相場が向こう3-6カ月間に下落する との見通しを示した。

その見方にも一理あるかもしれない。原油と金相場は過去数カ月 間、堅調に推移してきた。中国など新興国の経済成長が鈍化する兆し があれば、商品相場は大きな打撃を受けるだろう。

強気相場

それでも、商品の上昇相場が3-6カ月で終わるとは思えない。 商品の強気相場は長期にわたって続くとみられる。新興国の生活水準 が先進国に近づけば、消費は大幅に増える。工業品を製造するための 原材料需要が拡大するだろう。常に可能というわけではないが、需要 に追い付くため供給が増えたとしても、資源業界の規模は5年後には 現在よりずっと大きくなっているとみられる。投資先としては適して いる。

グレンコアに関する主な懸念要因は商品事業の状況ではない。タ イミングだ。

過去を振り返れば、取引会社の上場では、投資家は通常出し抜か れていることが分かる。ゴールドマンを例に取ろう。同社が素晴らし い銀行であることに異論はない。しかし、1999年5月のIPOで株式 を購入し2008年11月に売却したとすれば、損失を出していた。その 間に売りの好機があったとしてもだ。

米フォートレス・インベストメント・グループはどうだろう。ヘ ッジファンドと企業買収ファンドを運営する同社は07年2月に1株当 たり18.50ドルでIPOを実施した。現在の株価は6ドルに満たない。 PE投資最大手の米ブラックストーン・グループの株式の07年のIP O価格は31ドルだったが、現在は19ドル未満で取引されている。

トレーダーの手法

根底にあるメッセージはいつも同じだ。つまり、取引会社は経験 豊富なディールメーカーにとっては素晴らしい企業だが、外部の投資 家にとっては良い面も悪い面もある。

そこには偉大なる神秘などない。第一に、内部の関係者は当然、 外部の人間よりも目先が分かっている。グレンコアがそうしているよ うに、経営幹部は一定期間、株式を売却しない方が良い内部的な事情 を熟知しているかもしれない。

グレンコアのアイバン・グラゼンバーグ最高経営責任者(CEO) は先週、ブルームバーグのジェシー・ライズバラ記者とのインタビュ ーで「今がサイクルの頂点にあるかって?それは誰にも分からないし、 誰か気にするだろうか。当社は5年のスパンで売却しようとしている ので、5年間の市況について考えることにしよう」と語った。

どうでもいいことだ。グレンコアはそれでも、IPOを実施する のに最適に見える時期を選ぶだろう。トレーダーの性分としてピーク 時にもうけないではいられないからだ。

第二に、重要な社員が離れていくリスクが常にある。最高のトレ ーダーたちにとって、株式公開している企業よりパートナーシップの 方がより満足できる職場だ。自由度が高く、報酬も多い。自由と報酬 は、トレーダーが最も望むものだ。報酬が減るというのに多くの退屈 な規則に縛られることを望む者がいるだろうか。スタートレーダーた ちが他社に移籍し始めれば、グレンコアの価値はすぐに低下する。

グレンコアはこれから長い期間を経て大企業に成長するだろう。 だが、株式は数カ月様子を見て割安に購入するのが得策だ。つまり、 それがトレーダーの手法というものだ。 (マシュー・リン)

(マシュー・リン氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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