コンテンツにスキップする

あさひの自転車、震災後3週間の販売倍増-首都まひで便利さ認識

自転車専門店をチェーン展開する あさひが、3月11日発生の東日本大震災以降に自転車の販売台数を大 きく伸ばしている。震災直後の交通まひ後も、東京電力の計画停電な どで公共交通機関の運休や間引き運転が相次いだ結果、首都圏の店舗 の売り上げが急増した。これを機に自転車の良さが見直されている。

同社の下田進(63)社長は14日、ブルームバーグ・ニュースのイ ンタビューで、「4月1日までの震災後3週間は、関東地区の販売台数 が前年同日比200%で推移した」と述べ、1995年の阪神・淡路大震災 時以上の過熱ぶりだという。

震災発生後は電車や地下鉄がストップ。「車も大渋滞でバスも満足 に動かないなか、自転車がスイスイ進んでいくのを見て、改めて自転 車は便利だと実感した」と下田氏。同氏によると、当日は各店長の裁 量で店舗営業方針を決定。東京・大田区にある大森店では客足が途切 れず、「結局12日早朝の4時まで顧客に対応した」という。

11日以降の売り上げ急増を受け、3月の既存店売上高は前年同月 比46%増と高い伸びを記録した。ただ同社では異常値と判断し、4月 4日に示した今期(2012年2月期)業績予想にはこの特需を織り込ま なかった。

4月に入っても店頭売上高は前年同日比プラスで推移。「名古屋以 西の売り上げも高い上、環境や健康に配慮する向きも増え、4月も非 常に強い」と下田氏は話し、業績上振れの可能性を示唆した。単独業 績予想は、売上高が前期比15%増の329億円、純利益が同11%増の 24億円。決算発表後に業績予想を示したアナリスト7人の純利益予想 の平均は27億6700万円で、会社計画より15%高い。

ガソリン高、ファッション性も販売後押し

自転車産業振興協会の君塚美雪氏によると、業界の3月販売動向 がまとまるのは5月中旬。「震災後に比較的高額の商品でも売れたとの 報告を受けているほか、電動アシスト自転車は購入したくても在庫が ない状況とも言われ、一定の特需があったと推察している」という。

3月16日に川崎市の大型量販店で2万円のシティサイクルを購 入した東京都大田区在住のマイケル・バディリア氏(41)は、「ガソリ ン高」が自転車購入の一番の動機と語った。もともと原動機付スクー ターは割高と考えていたところに震災が発生、友人が横浜駅前のオフ ィスから7時間かけて自宅まで徒歩で帰ったことを聞き、自転車購入 に踏み切った。約1カ月を経て「自転車は楽。お金も助かる」と喜ぶ。

大和証券キャピタル・マーケッツ金融証券研究所の佐藤彰紀アナ リストは、震災後にガソリンの供給不安が高まり、「ガソリン価格が高 騰したことで自転車の需要が高まっている。世界的なガソリン高は今 後も続くとみられ、自転車業界全体が恩恵を受ける」と読んでいる。

実際、自転車関連メーカーの受注は足元で好調だ。台湾の自転車 メーカー大手、ジャイアント・マニュファクチャリングの場合、日本 法人の3月の売上高が前年同月比で23%伸びた。同社広報担当のジェ フリー・シュー氏によると、ジャイアントブランドの日本での販売実 績は10年が9万台で、11年は10%増を見込む。

ブレーキや変速機など自動車部品メーカー大手のシマノも、震災 前よりも震災後の方が、受注が多いという。取締役経理部長の平田義 弘氏はあさひの販売好調を聞き、「当社への受注も増えるとみられ、期 待できる」と述べた。

あさひ大森店に来ていた鈴木将大氏(24)は、自転車通勤者が多 い職場だけに、同僚の女性らはどんな自転車で通勤しているかを気に していると指摘、「若手としてスタイリッシュでおしゃれな自転車に乗 っていたい」と話しながら、自転車を選んでいた。

3年後に売上高500億円弱目標

下田氏によると、全国の年間自転車販売台数は900万台程度。う ちあさひのシェアは12%で、自転車専門店企業ではトップ。総合スー パーのダイエーやホームセンターのDCMホールディングスへの商品 供給を今月末に終え、今後は自社での店舗展開を積極化する。4月現 在の店舗数はフランチャイズ店を合わせ236店。14年2月期末までに 現状比33%増の315店体制を築き、年商500億円弱にする計画だ。

下田氏は65歳で引退すると公約しており、それまでに「年間販売 180万台、シェア20%」を1つの目標と位置付けている。次期社長が 17年2月期までに国内500店体制を構築する予定で、いずれは海外を 含め売上高1000億円企業になりたい、と同氏は話す。

あさひ株は震災発生後も上昇基調を継続。3月10日終値から4月 18日終値まで8.6%上げた。TOPIXは同期間に10.2%下落、18 日終値で算出した実績株価純資産倍率(PBR)は3.3倍で、TOP IXの1倍を大きく上回るほか、予想株価収益率(PER)もTOP IXの12.7倍に対し、同社は16.8倍と市場から高い評価を得ている。 19日の午前終値は前日終値と同じ1520円だった。

「自分の仕事で何か協力できないか」との思いから、下田社長は 被災した岩手、宮城、福島の3県に自転車1000台を寄贈することを決 めた。20世紀を象徴する自動車を中心とした社会から、自転車利用者 にも優しい社会になって欲しいと期待を寄せる同氏は、東北地方の復 興に際しては「中心市街地には自動車を入れないなど、21世紀の新し い街づくりをしてもらいたい」と語った。

--取材協力:Adela Lin in Taipei, Rocky Swift in Tokyo and Naoko Fujimura in Tokyo. Editor:Shintaro Inkyo、Makiko Asai

参考画面: 記事についての記者への問い合わせ先: 東京 鷺池秀樹   Hideki Sagiike +81-3-3201-8293   hsagiike@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人  Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net 香港 Nick Gentle +852-2977-6545  ngentle2@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE