【書評】米国はデフォルトで中国に抗戦を-元ゴールドマンのモヨ氏

オックスフォード大学の博士号を 持つ元ゴールドマン・サックス・グループのアナリスト、ダンビサ・ モヨ氏は挑発的な見解で知られる。

ザンビア生まれの同氏は著書「デッド・エイド」(邦題:援助じゃ アフリカは発展しない)で、諸外国からの援助はアフリカを貧しくし、 住民の苦難を和らげるよりもむしろ悪化させたと論じた。

新作の「ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ロスト」では、先進諸国が どのようにして経済的優位を失ったかと、中国に対して「毒をもって 毒を制す」抗戦を試みる方法を描いてみせる。

モヨ氏の提案の幾つかは彼女自身が認める通り、過激だ。同氏に よれば、米国は「核オプション」とも言うべきデフォルト(債務不履 行)を含めた保護主義的措置で中国に対抗することができる。

「デフォルトは地殻変動的な選択肢のように聞こえる」が、簡単 に除外すべきではないと同氏は言う。「米政府にとってはすべてをきれ いに白紙に戻して財政をリセットできる魅力的な策だ」という。

米国のデフォルトは米中の相互依存にとって致命的な「無理心中」 に相当すると同氏は解説する。スタンダードチャータード銀行の計算 によれば外貨準備の82%をドル資産で保有する中国の利益を損なう 行為だからだ。

中国が公平な競技の場をゆがめるなら、米国も瀬戸際作戦に訴え てもよいと、同氏は論じる。同氏によれば経済は「一国が他国に対す る支配を確立しようとする」戦闘の一形態だからだ。

誤算

潮目は変わりつつある。1950年には米欧が世界の総生産の60%を 占めていたとモヨ氏はエコノミストの故アンガス・マディソン氏のデ ータを引用。米国だけでも約30%を占めたのに対し、中国は5.2%だ ったという。しかし2000年までに、中国の割合は12%と倍以上にな り、米国は22%に縮小していた。今では中国のシェアはさらに大きい。

モヨ氏はこれを、すべて中国の責任だとは見なさない。逆に、本 著の趣旨は米国が自ら資本と労働力、技術の配分を誤ったために経済 的優位を失ったというものだ。

まず資本。モヨ氏はブッシュ前政権に至る米国の歴代政権が過剰 な住宅投資を国民に促してきたと指摘する。労働力については、戦後 の米政府が年金負担を将来に先送りすることで労働コストを実際より も低く見せかけてきたという。また、米国の大学でコンピューターサ イエンスやエンジニアリング、数学で博士号を得た外国人への就労ビ ザを拒むことで雇用創出の芽を摘んでいるとも論じる。

大恐慌

さらに、ソフトウエアから医薬品まで米欧の技術が新興市場に盗 用や不正流用されたほか、場合によっては「贈呈」されていたと同氏 は言う。産業革命をけん引した発明は米欧の優位の源だった。米国は その競争上の優位を、安い玩具や靴と交換してしまったと同氏は指摘 している。

著者はミネソタ州の橋の崩落からリニアモーターカー「上海マグ レブ」まで、米国の衰退と中国の台頭を示す事例を紹介する。米国の 借金時計にも触れる。時計は今14兆ドル(約1150兆円)を突破して いる。

本著は地盤沈下に歯止めをかける処方せんを米欧の政治家に示す。 しかし私には、次の金融危機が発生するまで政治家たちが時間稼ぎを 続けるだろうという気がしてならない。結局、われわれには大恐慌が 必要なのかもしれない。(ジェームズ・プレスリー)

(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この 書評の内容は同氏自身の見解です)

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