ドル全面高、リビア緊迫でリスク回避-円は上昇も格下げ懸念が重し

東京外国為替市場ではドルが全面 高。リビア情勢の一段の悪化を背景にリスク回避の動きが強まり、ド ルや円に資金を戻す動きが活発化し、円もほとんどの主要通貨に対し て上昇した。

一方、ドル・円相場は一時、今月10日以来となる1ドル=82円 台へドルが下落したが、日本の格下げ懸念からその後83円台前半まで 円が売られるなど、上下に振れる展開となった。

バンク・オブ・アメリカ-メリルリンチの藤井知子シニアFXス トラテジストは「これまでは原油が上がればインフレ懸念という発想 で、ユーロ・ドルが上がっていたが、今回はそうなってはおらず、リ スク回避の方が強い」と指摘。全般的にドルが買い戻されている一方 で、米格付け会社による日本政府の債務格付け見通しの引き下げが円 高の進行に「一つ抑制をかける要因になった」と説明した。

ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.36ドル台後半から一時、1.3558 ドルまでユーロ安・ドル高が進行。藤井氏は、スペイン貯蓄銀行の不 良資産の話やポルトガルの債務問題、独市議会選での与党大敗など、 欧州の問題に市場の関心が戻りつつあると語った。

一方、ニュージーランド(NZ)南島のクライストチャーチでは 22日、マグニチュード(M)6.3の地震が発生。ニュージーラン・ド ルは急落し、対米ドル、対円で約2カ月ぶり安値をつけた。

リビア情勢

リビアの最高指導者カダフィ大佐は22日早朝に放送された国営 テレビを通じて、海外逃亡しておらず、トリポリにとどまっていると 語った。同国では数百人の死者を出した政府のデモ鎮圧に抗議して政 府外交官や兵士が相次いで政権を離脱している。

カダフィ大佐の次男セイフ・イスラム・カダフィ氏はこれより先、 犠牲者数が300人以上に上ると国際人権連盟が発表したリビアの騒乱 について、「血の川が流れるだろう」と警告。近隣のチュニジアとエジ プトでは、政治的弾圧や経済停滞に対する抗議デモを受け、独裁政権 が既に崩壊している。

北アフリカ最大の産油国であるリビアの情勢緊迫化を受け、原油 供給への懸念からニューヨーク原油先物相場は22日の時間外取引で 約2年ぶりの高値へ高騰。一方、前日の欧州株に続き、日本株やアジ ア株は急落した。

円が乱高下

ユーロ・円相場は早朝に一時、1ユーロ=114円19銭までユーロ 高・円安に振れる場面が見られたが、すぐに113円台後半まで値を戻 し、午前10時過ぎには1週間ぶりの水準となる112円88銭までユー ロ安・円高が進行。その後は113円台前半でもみ合う展開となったが、 欧州時間に向けては再び113円を割り込む展開となっている。

カナダロイヤル銀行債券為替部の高安佳子部長は、早朝の動きに ついて、114円ちょうどに大きなオプションのトリガーがあり、バリ ュー(取引の実行日)が変わる午前7時ごろに海外勢がユーロを買い 上げ、ストップをつけたと説明。その上で、「ドル・円にしろ、ユーロ ・円にしろ、朝の上げで上値の重たさを確認した感がある。また、朝 方の上昇でロング(ドルやユーロの買い持ち)でつかまった向きもい るはずで、ドル・円もユーロ・円も上は重いだろう」と話していた。

米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは22 日、日本政府の「Aa2」の格付けの見通しを安定的からネガティブに 変更したと発表した。日本の経済・財政政策が「財政赤字削減目標を 達成し、既に他の先進諸国の水準を大きく上回っている債務の急激な 増大を抑制できるほど十分に強固なものではない可能性があるとの懸 念の高まり」が理由。また、ムーディーズ・ジャパンは日本の3メガ バンク系発行体の長期格付け見通しをネガティブに変更したことを発 表した。

ドル・円相場は早朝に1ドル=83円台前半から一時、83円54銭 までドルが急伸する場面が見られたが、その後今月10日以来となる 82円84銭までドル売り・円買いが進行。ムーディーズの発表後は売 り買い交錯の展開となったが、午後にかけては徐々に円売りが優勢と なり、83円台前半まで値を戻した。

バンク・オブ・アメリカ-メリルリンチの藤井氏は、格付け見通 しの引き下げについて、「ただちに日本の国債保有構造が変わるわけで はないし、大きなマーケットの変動要因にはならない」と指摘。ただ、 少子高齢化が進むなか、日本の財政悪化は海外投資家が非常に気にし ているテーマであり、「長期的な円の見通しを語るときに、円安要因の 一つであることは間違いない」と語った。

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