ムーディーズ:日本の「Aa2」政府債務格付け見通しをネガティブに

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米大手格付け会社ムーディーズ・ インベスターズ・サービスは22日、日本政府の「Aa2」の格付けの見 通しを安定的からネガティブに変更したと発表した。

ムーディーズは発表文の中で、その理由について日本の経済・財 政政策が「財政赤字削減目標を達成し、既に他の先進諸国の水準を大 きく上回っている債務の急激な増大を抑制できるほど十分に強固なも のではない可能性があるとの懸念の高まり」に伴うものと説明した。

その上で「日本国債の発行が困難となるような危機的状況が短期 から中期的に発生するとは考えにくい」としながらも、「長期的には その圧力が高まる可能性があり、現在の高い格付けにおいても、その 点を考慮する」と述べた。

ムーディーズのシニアバイスプレジデント、トーマス・バーン氏 は同日午後に都内で記者会見し、格付け見通し引き下げの背景につい て、日本政府の財政目標達成への懸念が高まっていると指摘。日本に とって6月の税制改革が主要な出来事となるとした上で、効果的な財 政改革には政治的な安定が必要だと述べた。

同氏はまた、日本国債は長期的には安全資産の地位を失う可能性 があるとし、家計の貯蓄率の低下は日本国債市場にとって最大のリス クであると述べた。

野田財務相はコメントせず

野田佳彦財務相は22日午前、格付け見通し変更の発表を受け、財 務省内で記者団に対し、民間の格付け会社の判断についてコメントし ないと語った。

日本の長期国債については先月27日、米格付け会社スタンダー ド・アン・プアーズ(S&P)が外貨建て・自国通貨建ての長期国債 格付けを最上位から3番目の「AA」から「AAマイナス」に1段階 格下げしたばかり。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、ムーデ ィーズの発表は金融市場では「これだけで反応する動きにはなってい ない」と指摘しながらも、「もっとも海外勢には中長期的な財政悪化 や債務危機を再認識させることになる」との見方を示した。

この日のドル円相場は午後4時20分現在、1ドル=83円30銭。 日経平均株価の終値は前日比192円83銭安の1万664円70銭。債券 先物市場の中心限月は同51銭高の139円48銭となっている。

国の債務残高、昨年末で919兆円

財務省が10日に発表した資料によると、国債や借入金、政府短期 証券などを合わせた国の債務残高が昨年12月末現在で919兆1511億 円と、過去最大を更新した。前期(同9月末)に比べ10兆2894億円 増加した。

財務省が1月にまとめた2011年度一般会計予算案に基づく「後年 度歳出・歳入への影響試算」によると、13年度の新規国債発行額に相 当する財源不足は当初ベースで51.8兆円と50兆円を上回り、14年度 の一般会計総額は100.9兆円と100兆円を超えると想定している。

菅直人政権は財政再建への取り組みとして社会保障・税の一体改 革を打ち出しており、菅首相は21日の衆院予算委員会でも「6月まで に成案を必ず出す」とするとともに、一体改革は「避けては通れぬ重 大な課題」ととらえ、「歴史的使命を感じて頑張りたい」とも述べた。

一方フィッチ・レーティングスは日本国債の格付けを「AA-」、 見通しを安定的と確認した。アジア太平洋ソブリン債担当責任者、ア ンドルー・コルクホーン氏が22日、電子メールでコメントを送付した。

変更の具体的な要因

ムーディーズは見通し変更の具体的な要因として、世界的な金融 危機のショックが日本の財政および悪化傾向にあった既存のデフレ圧 力に深刻かつ持続的な影響を与えたと指摘した。

その上で、①現在の政策の枠組みによって財政赤字削減への軌道 に戻す際に直面する課題を克服することが困難②債務および成長の課 題に与野党が有効な政策を打ち出す能力に対する不透明性の高まり③ 新たなショックに対して、日本の長期にわたる漸進的な財政再建戦略 が脆弱(ぜいじゃく)-であることも挙げた。

ムーディーズは09年5月18日に、日本政府債務格付けを「Aa2」 に統一し、見通しを安定的とした。その後、日本政府が昨年6月に中 長期財政健全化への道筋を示す「財政運営戦略」を発表したことを受 けて、同6月29日に同戦略は「日本のソブリン格付けである『Aa2』 と、安定的との見通しを支えるものだが、課題がないわけではない」 とするコメントを発表した。

この中で、バーン氏は「市場の信認を維持するためには、政策の 詳細を具体化し、今後1年間で実施の進ちょくを示す必要がある」と も指摘していた。

--取材協力 池田祐美 広川高史 editor:Norihiko Kosaka, Hitoshi Ozawa

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