榊原元財務官:年内に1ドル=70円台定着、「強い円は国益」に転換を

青山学院大学教授の榊原英資元財 務官は21日夜、米欧経済が構造的な問題を抱える中、円・ドル相場は 「年内に戦後最高値1ドル=79円75銭を突破して、70円台に定着す る」と予想した。日本経済・企業にとって「円高はメリットだと、発 想を転換する必要がある」とも主張。「野田佳彦財務相は『強い円は国 益だ』と言っても良いと思う」と語った。

榊原氏(69)は都内で講演し、世界的な金融危機を受けた財政出 動や金融緩和により、米国経済は今のところ「順調だ」と述べた。た だ、不良債権や家計の過剰債務というバランスシート問題を抱えてお り、景気回復の持続性には「まだかなりの疑問が残る」とも指摘。ド ルの中長期的な下落基調は続くとの見方を示した。

「米国が大きな影響力を持って世界経済をドミネート(支配)す る時代は終わったのではないか」と分析。チュニジアとエジプトの政 変や、リビアなど中東全域への反政府デモ拡大も、従来は反イスラエ ル的な政策さえ採らなければ専制的な政権でも支えてきた「米国の影 響力が低下した」面があると指摘した。

榊原氏は昨年9月、政府・日本銀行による6年半ぶりの円売り介 入から6日後のインタビューで、円・ドル相場は同年内に1995年4月 に付けた戦後最高値を突破すると予想。円は11月1日に一時80円22 銭と、最高値まで50銭弱に迫った。ただ、その後は81-83円台を中 心に推移。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を控えた 先週16日には一時、約2カ月ぶりに83円98銭まで下落した。

ブルームバーグの調査によると、市場関係者は円・ドル相場が年 央にかけて86円、年末には89円に下落すると予想している。

世界経済、米欧から中印へ

榊原氏は欧州経済に関しても「ドイツとフランスの連携を核に戦 後一貫して進めてきた統合のプロセス」が周縁国の債務危機などによ って逆転し「崩壊の兆しが見え始めた」と指摘。「構造的な没落」が続 く米欧から、高成長を誇る「中国とインドを中心とするアジアに世界 経済の中心が移りつつある」と語った。

経済力の相対的な変化を背景に、アジア通貨が米欧の通貨に対し て上昇基調をたどると予想。中国当局は人民元相場を独自のペースで 切り上げていくと分析。長期的には「円にかつて起きたことが人民元 にも起こるだろう」と述べ、今後「20年で3-4倍になる可能性があ る」と話した。

榊原氏は「日本の将来に決して悲観的でない」と強調。人口減と 低調な国内需要を背景に、実質経済成長率が「2%なら上々だし、1.5% でも満足しなくてはならない」半面、政治ではなく企業の主導で進む 「東アジアの経済統合の恩恵を受けられる立場にある」と語った。

円高はメリット

東アジアの域内貿易比率は90年の40%から、足元では58%に上 昇したと指摘。5年以内には60%を超え、約65%の欧州連合(EU) に近い水準まで経済統合が進むと予想した。

「このところの円高は、それほど急激ではない」と評価。日本企 業が国外で稼ぐ必要が増す中で、強い円は対外直接投資やM&A(合 併・買収)などの「海外業務にはプラスだ」と述べた。輸出に逆風と はいえ、一部の中小企業はともかく「少なくとも大企業に関しては大 きなデメリットはない」との見方を示した。

榊原氏は1965年に大蔵省(現・財務省)に入省。国際通貨基金(I MF)出向や米ハーバード大客員準教授などを経て、95年に国際金融 局長。円売り介入に加え、米国や日本銀行との政策協調も講じて円高・ ドル安を是正し、同年9月には100円台を回復させた。アジア経済危 機が発生した97年7月からは財務官を務め、円買い介入も実施。「ミ スター円」の異名を取った。99年7月に退任。2010年4月、青山学院 大学教授に就任した。

--取材協力:野原良明、Jae Hur, Jarrett Banks Editors:Masaru Aoki,Hidenori Yamanaka,Joji Mochida

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