【日本株週間展望】上値重い、インフレや中東懸念-QE2持続疑問

2月第4週(21-25日)の日本株 相場は、上値の重い展開が想定される。過剰流動性を背景とした日本 株の見直しから年初来高値を更新する可能性はあるものの、インフレ や中東情勢に対する不透明感がくすぶり、次第に戻り売りが増えそう。

大和住銀投信投資顧問の門司総一郎投資戦略部長は、「米国株には 過熱感が出ている。右肩上がりの基調が続いている日本株は、4週に 横ばいに近い調整となると見る方が自然だ」と述べた。

第3週の日本株は、TOPIXが前週末に比べ2.9%高の973.60 ポイントで終了。週間ベースでは4週連続の上昇となった。米景気や 企業業績の回復期待から海外投資家中心に買いが優勢となり、金融株 や不動産株などの値上がりが大きかった。

これまでは良好な指標が優勢だった米国景気だが、足元では市場 予想を下回るケースも出始めている。12日までの週の新規失業保険申 請件数(季節調整済み)は前週から2万5000件増加して41万件と、 ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想中央値(40万 件)より悪化した。1月の鉱工業生産指数(季節調整値)は前月比0.1% 低下し、エコノミストの予想中央値(0.5%上昇)を下回った。

このほか、2月のフィラデルフィア連銀地区やニューヨーク連銀 地区の製造業景況指数は、いずれもエコノミスト予想の中央値を上回 ったが、6カ月先の景況感を示す指数は悪化を示した。「現状は良いが 先行きは悪いというのは、景気回復モメンタムのピークで見られるパ ターンだ」と、大和住銀の門司氏は指摘する。

QE2持続性に疑問も

もっとも、米国株式市場は足元の製造業景況指数など、予想以上 の経済指標を好感する形で上昇を持続。17日のS&P500種株価指数 は2年8カ月ぶりの高値となった。TOPIXも17日には昨年4月 30日以来の高値水準を付けた。

そうした強気な投資家心理を支える米国のQE2(量的緩和第2 弾)による過剰流動性に対しても、やや懸念が出てきた。1月の米消 費者物価指数(CPI、季節調整済み)で、食品とエネルギーを除い たコア指数は前月比0.2%上昇と、2009年10月以来の高い伸びを記録。 RBCキャピタル・マーケッツのエコノミスト、トム・ポーセリ氏(ニ ューヨーク在勤)は「インフレ環境は若干強まってきている」とみる。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鮎貝正弘シニア投資スト ラテジストは、「QE2の弊害と言える世界的なインフレ傾向が米国で も高まってくると、QE2の持続性への疑問が出てくる可能性がある」 と危惧する。債券市場や新興国株市場から米国や日本など先進国株式 へと向かっているマネーフローが一時的に変調を来せば、数年や数カ 月ぶりといった高値圏にある株式市場は下げやすくなる。

エジプトのムバラク前大統領が辞任し、一時は小康状態にあった 中東情勢だが、ここにきてアフリカ最大の原油埋蔵量を持つリビアや、 米海軍の第5艦隊司令部があるバーレーンでも反政府運動が発生。中 東の原油生産の大半を担うペルシャ湾諸国にまで政情不安が広がり、 「中東情勢の不透明さは警戒される」と、岡三オンライン証券の伊藤 嘉洋チーフストラテジストは語る。

モルガンS証は「株式買い推奨」

半面、下値は限定されそうだ。モルガン・スタンレーMUFG証 券の日本市場担当ストラテジスト、アレクサンダー・キンモント氏は 17日、マーケットタイミング指標や経済協力開発機構(OECD)国 別先行指数で構成する債券と株式の配分モデルが「株式買い推奨」に 転換したと指摘。これを基に、「ためらうことなく、株式に対して中期 的に強気な立場を取ることにした」という。

株式需給も良好だ。2月2週(7-10日)の日本株市場では、海 外投資家が15週連続で買い越した。15週は、05年6月3週から12 月1週までの26週以来、約5年ぶりの長さだ。トヨタアセットマネジ メント投資戦略部の浜崎優シニアストラテジストは、「新興国での引き 締めの着地点がもう少し見えてくるまでは、新興国や商品市場に向か っていた資金が先進国に向かいそう」と予想する。

政治混迷は織り込み済み

一方、民主党の渡辺浩一郎衆院議員ら16人は17日、党に会派離 脱届を提出した。野村証券経済調査部の川崎研一主席研究員は、今後 の動きを注視する必要があるとしながらも、「ねじれ国会が続き、日本 の政界が不安定となっているのは真新しい事実ではない」とし、「金融 市場ではある程度の政治の混乱やその影響は既に織り込んでいる」と 見ている。

4週の日程は、米国では21日がプレジデンツデーの祝日で株式市 場は休場、22日は12月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数、2 月の消費者信頼感指数、23日は1月の中古住宅販売件数、24日は1月 の耐久財受注などが発表される。国内では23日に1月貿易収支、25 日 に1月の全国消費者物価指数が予定されている。

【市場関係者の見方】 ●みずほインベスターズ証券エクイティ情報部の石川照久部長

イスラム圏での反政府運動、米オバマ政権のレームダック、日本 の政局不透明感、不安要素を挙げればきりがないが、米国も日本も株 価は下がらない。米株式相場の出来高が1日8億株を下回るような異 常な状況が続いていることと考え合わせても、無理に買い上げたり、 株価急落を狙う売りも出ていないのだろう。日経平均の価格帯別累積 売買高をみると、売りが少ない水準まで来ている。1万600円から1 万1500円で少し振幅が大きくなる可能性もある。

●オフィスセントポーリアの馬渕治好代表

米雇用が上向き米国の景気が良くなっている上、世界の企業収益 も改善している。主要国の株式相場のトレンドは非常に強く、トレン ドが下向きになるだとか、大暴落するとの不安感はない。不安要素は 多々あるが、中東の金融センターでもあるバーレーンの動き、サウジ アラビアの情勢は気になる。米株式相場はこのところ上昇ピッチが速 かっただけに、調整があってもおかしくはない。

●日興コーディアル証券国際市場分析部の河田剛部長

相場にインパクトを与えそうな米経済指標の発表は予定されてお らず、相場はもみ合いだろう。懸念は中東情勢だ。反政府デモは、エ ジプトはひと段落したが、バーレーンなど他の産油国に広がっている。 原油相場が上昇を強めれば、投資家は新興国のインフレリスクを持ち 出して利益確定売りをしそうだ。ただ、世界景気は改善している上、 日本株はリーマン・ショック前の水準を回復していない。このため、 押し目買いが入りやすくなっている。

●ちばぎんアセットマネジメントの長壁啓明ファンドマネジャー

当面は一進一退で方向感が出にくい。来期の増益基調を織り込む 形で相場水準を切り上げてきたが、買い疲れなどもあり徐々に上値が 重くなっている。3月決算期末を控え、国内機関投資家の売り圧力が 強まる時期だが、海外投資家の買いが吸収する構図。米経済の回復を 背景にリスク許容度を高めた海外勢が、大きく落としていた日本株の 保有比率を戻す動きは、米国で6月にQE2の期限を迎えることが意 識され始める新年度入りまでは続きそう。個人投資家の押し目買い意 欲も強く、突拍子もない悪材料がない限り、下値不安は小さい。

●SBI証券の鈴木英之投資調査部長

じりじりと上昇、値固めの動きを予想し、日経平均レンジは1万 700円から1万1000円。いったん1万1000円まで行けば目標達成感 が出る可能性もある。為替、海外株式、日本株への評価は安定してい る。景気回復を受けつつ、世界的にはインフレ懸念もあり、金融株が 物色されそう。

--取材協力:鷺池秀樹、常冨浩太郎、河野敏、岩谷多佳子 Editor:Shintaro Inkyo、Makiko Asai

参考画面: 記事についての記者への問い合わせ先: 東京 長谷川敏郎 Toshiro Hasegawa +81-3-3201-8361 thasegawa6@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 okubo1@bloomberg.net 香港 Nick Gentle +852-2977-6545 ngentle2@bloomberg.net

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