行天元財務官:人民元まだ「全く資格ない」-SDR算入は10-15年後

国際通貨研究所の行天豊雄理事長 (元財務官)は、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR) を構成する通貨バスケットに中国の人民元を加える議論に関し、現時 点では「全く資格がない」との見解を示した。国際通貨としての資格 を満たす金融改革には「10-15年」程度かかると予想した。

行天氏(80)は17日のインタビューで、SDRの構成通貨が「未 来永劫(えいごう)4通貨だとは誰も決めていない」と述べる一方、 発行国と通貨が「国際的な役割」を果たすには「完全に利用可能な通 貨でなくてはならない」と強調。中国当局による資本取引の自由化な どが必要だと指摘した。国際通貨の要件を満たせば、人民元やブラジ ル・レアルなどが加わっても「一向におかしくない」とも語った。

きょうから2日間、パリで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・ 中央銀行総裁会議では、世界的な金融危機の遠因ともされる国際収支 の不均衡是正や国際通貨制度の改革が、一次産品の価格高騰などとと もに主要議題となる見通し。今年のG20議長国であるフランスのラガ ルド財務相は人民元のSDR算入に賛意を表明。中国国務院(内閣に 相当)系列の研究者も先週、人民元を加えるべきだと主張した。

行天氏は大蔵省(現・財務省)時代、米国が抱える財政・経常収 支の「双子の赤字」をめぐる国際的な不均衡の是正を目指し、日米欧 の政策協調を演出。日米英独仏が円高容認やドル高是正を決めた1985 年の「プラザ合意」には国際金融局長、ドル安の行き過ぎを防ぐ87 年の「ルーブル合意」に向けては財務官として貢献した。世界的な金 融危機を受けた2008年11月の金融サミット(首脳会議)の際も、麻 生太郎首相の内閣官房参与として特使を務めた。

SDRの4通貨と人民元

SDRは、IMFが加盟国の外貨準備を補完する目的で1969年に 導入。構成通貨はドルとユーロ、円、英ポンドで、5年ごとに比率を 見直している。IMFは昨年11月、ドルを44%から41.9%、円も11% から9.4%に引き下げ、ユーロは34%から37.4%に引き上げた。英ポ ンドは11.3%でほぼ変わらず。人民元は自由に取引されていないため、 SDR算入の基準を満たさないとも指摘。構成通貨の選定に用いる指 標の検証を今年開始すると表明した。

中国人民銀行の周小川総裁は2009年3月、IMFが特定の国家か ら切り離された国際準備通貨の創設を長期的に目指す必要があるとの 論文を発表。SDRの役割強化も主張した。

行天氏は国際通貨の要件として、総合的な国力や信用、使い勝手 の良さ、発達した金融市場などが必要だと指摘。当局が押しつけるの ではなく「あくまでマーケットが決める話だ」と強調した。ドル基軸 体制は代替通貨が見当たらず、崩壊は考えにくいと分析した。

G20でガバナンス模索

参加国の経済規模が世界全体の8割を超えるG20については、国 際条約に基づいた機関ではなく「何か決定事項を強制するような枠組 みではない」と指摘。今年のG20で「何か革命的な事が起こることは あり得ない」と述べた。

為替相場の大幅な調整や政策協調を実現した1980年代後半には 「責任と権限を持った少数グループ」である日米欧の力が強かった上、 共産主義を掲げるソ連との冷戦も危機感を醸成したと指摘。今や「多 極化した時代に、国際的に統一された哲学をいかにして打ち立てるか。 新しいガバナンスのスタイルを模索していくしかない」と語った。

巨額の赤字を抱える米国と日独という貿易立国の利害調整は「当 時ですら、非常に難しかった」と指摘。足元で対外不均衡に直面する 米中両国は「本当に信頼関係があり、責任をなすり合うのではなく、 痛みを分かち合うという感じではない」と、問題解決の難しさを示唆 した。

野田佳彦財務相は15日の記者会見で、今回のG20財務相・中央 銀行総裁会議では、経済の不均衡に関するガイドラインが主な議題に なると述べた。フランスのラガルド財務相は17日に仏ラジオを通じ、 経常収支の不均衡抑制が金融危機の再発防止に極めて重要だと強調。 不均衡是正に向けた取り組みをG20に呼び掛けた。

行天氏は55年に東京大学を卒業し、大蔵省に入省。IMF出向な どを経て、84年に国際金融局長、86年には財務官に就いた。ハーバー ド大学やプリンストン大で教鞭を取り、92年から東京銀行(現・三菱 東京UFJ銀行)会長。95年12月から国際通貨研究所の初代理事長。 98年には小渕恵三内閣の特別顧問、2009年9月発足した鳩山由紀夫内 閣では藤井裕久財務相の特別顧問を務めた。

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