【クレジット市場】ソフバンク1兆円借り換えへ-信用力回復追い風に

携帯電話事業買収で5年前に巨額債 務を抱えたソフトバンクの信用力が改善してきた。米アップルの「iP hone(アイフォーン)」人気で収益拡大が加速してきたことが背 景。金利負担軽減などを目的として計画してきた1兆円規模の借り換え についても、今秋にも実施する見通し。

ブルームバーグ・データによると、同社の5年物クレジット・デフ ォルト・スワップ(CDS)は過去2年に世界の大手通信会社で最も縮 小。リーマン・ショックのあおりで2009年3月に2412ベーシスポイン ト(0.01%、bp)に跳ね上がったが、今週に入り140bpまで縮まっ ている。過去半年で5年物CDSが最も縮小した日本企業でもある。

同社は06年4月に英ボーダフォン日本法人(現ソフトバンクモバ イル、SBM)を買収、1兆2800億円のつなぎ融資を受けた。同年11 月末には融資を証券化、シンジケートローンと債券の計1兆3660億円 をSBMの債務とした。ソフトバンクより収益性が高く、格付けなどの 条件が有利だったためだ。

買収は日本最大のLBO(買収相手先の資産を担保とした借り入れ による企業買収)。買収時はソフトバンクの財務への懸念が株価や格付 け会社の評価に表れた。買収スキームにはボーダフォンやヤフーによる 出資も含まれ複雑だったほか、携帯事業の利益は返済への充当が最優先 され、ソフトバンクが自由に活用できなかった。

しかし、08年からのアイフォーン代行販売などで収益が拡大。孫正 義社長も3日の決算会見で、昨年12月以降にボーダフォンやヤフーに よる出資解消が決まったことを「借り換えへの第一歩」と評した。借り 換えではSBM債務を、ソフトバンクグループに一本化する。

金利4%から急低下へ

同社の後藤芳光財務部長は10日、ブルームバーグ・ニュースのイ ンタビューで借り換え目的を「金利コスト低下、経営の自由度向上、信 用力アップ」と説明。現在の携帯債務の金利は「平均4%程度だ」と述 べた。低下幅への言及は避けたが、完済まで最長5年程度とする意向を 示した。ソフトバンクが1月に発行した5年物社債の表面金利は、日銀 による金融緩和を背景とした起債環境の好転で1.10%だった。昨年6月 起債の5年物では1.67%。

バークレイズ・キャピタル証券の津坂徹郎アナリストは9日、携帯 債務の金利が「借り換えで半分程度になるのでは」と述べていた。元本 を1兆円と仮定すれば年200億円程度の利払い負担が浮く計算だ。

買収前の06年3月期で578億円だったソフトバンクの営業キャッ シュフローは、前期(10年3月期)に6681億円と11倍以上に膨らんだ。 06年3月末から今年1月末までの携帯契約を見ても、国内携帯最大手N TTドコモは12%増、同2位KDDIが28%増なのに対し、ソフトバ ンクは62%増に上る。

「賭けではあった」

日興コーディアル証券の森行真司アナリストは「買収は賭けではあ った」と認めつつ、ソフトバンクが通話割引や安価で多彩な端末投入、 アイフォーン販売で「利用者の多様なニーズに対応した」と評価。「ド コモやKDDIがすぐキャッチアップしたら財務改善も難しかったが、 彼らは巨大企業ゆえ動きが鈍かった」と指摘している。

後藤氏によると、1月末時点で7450億円あるSBM債務は、借り 換え時に「6000億円程度」まで減る見込み。しかし昨年12月にボーダ フォンから4125億円で関係会社の優先株を取得、その約半分の2000億 円が未払いで借り換え対象となることや手数料加算もあって、規模は 「8000億円-1兆円」になる。

実施の時期は現債務の一部に付いている償還禁止条項が切れる10 月以降。同氏は「1兆円のディールであり、交渉にはきちんと時間を使 う」と説明。債券とローンとの2本立ては続ける方針。昨年末で1.43 兆円ある連結純有利子負債の返済計画は09年4月の発表時と変更はな く、15年3月末時点でゼロを目指す。

スプレッドは織り込み

後藤氏は低金利の恩恵に加え、債務一本化でグループの7割を占め る携帯事業のキャッシュフローをソフトバンクが吸い上げられれば、格 付けも上がると強調している。

朝日ライフアセットマネジメントの中谷吉宏シニアファンドマネ ジャーは、債務一本化で「現在の分かりにくい財務に透明性が出る」こ となどで投資家の評価も上がるとみる。さらに「金融市場は借り換えに よる財務の健全化をある程度織り込んでいる」という。「今の格付けと スプレッドの水準が全然見合っていない」のが理由。

長期格付けは、日本格付研究所(JCR)で「BBB+」だった。 SBM債務は「AA-」と「A-」。中谷氏によるとソフトバンクの社 債スプレッドは、JCR格付けの2段階上の「A」レベル。JCRは 17日午後、ソフトバンクの格付けを「A-」に引き上げたと発表し た。格付けの見通しは「安定的」としている。

ソフトバンクが昨年6月起債した5年物のスプレッドは発行時95 bpだったが、16日夕時点で55bp弱に縮小した。一方、バンク・オ ブ・アメリカ(BOA)メリルリンチのデータによると、日本の通信各 社の社債スプレッドはこの間、14bp近辺で推移している。

スプレッドの基準となる国債利回りを見ると、10年物は昨年10月 に0.82%と7年ぶりの低水準となった後、今月9日に1.35%まで上昇 した。16日は1.345%。

アイフォーンなどスマートフォン(多機能携帯)は、使用データ量 が多く収益を拡大させる半面、通信網を混雑させる。孫社長も昨春、緩 和に向け今期の設備投資を過去最大の4000億円に増やすと表明した。

日興コーディアル証の森行氏は借り換えで「設備投資も含め、全て において選択の余地が広がる意味は大きい」と指摘、資金を固定通信部 門に回すなど「流動的に使う意味合いが非常に重要になってくる」と述 べている。

--取材協力:Yusuke Miyazawa Editors: Tetsuki Murotani, Norihiko Kosaka,Tetsuzo Ushiroyama

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