ゴールドマンがしがみつく利益率目標、クレディSはあっさり引き下げ

スイスの銀行、クレディ・スイ ス・グループは先週、利益率目標を引き下げた。ウォール街(金融界) の一部バンカーや投資家は認めたがらない点だが、ブレイディ・ドゥ ーガン最高経営責任者(CEO)は銀行の自己資本規制強化がリター ン低下を意味すると認識している。

ドゥーガンCEO(51)は、株主資本利益率(ROE)の目標を 18%超から15%強に引き下げた。これに対し、収入の大半をトレーデ ィングで稼ぐ米ゴールドマン・サックス・グループは、有形株主資本 に対する利益率20%の目標を堅持している。

過去10年を振り返ると、その期間の半ばに銀行各行は資金借り 入れでレバレッジを効かせる取引によって利益率が急激に上昇したが、 その後の信用危機でこうした取引のリスクが露呈。世界全体で1兆 4800億ドル(約123兆円)もの評価損・貸倒損失が計上された。自 己資本を拡充しつつ過去同様のリターンを確保するには、新たに利益 を生み出すチャンスを見つけるか報酬を含めてコストを削減するしか ないと、アナリストらは指摘する。

サンフォード・C・バーンスティーンのアナリスト、ブラッド・ ヒンツ氏は「利益率が同じでバランスシート上のレバレッジが低下す れば、ROEも下がる」と指摘。「となれば、選択肢は単純だ。従業 員向け報酬をカットするか、顧客にもっと請求するしかない。それが 不可能なら、利益率目標を下げるまでだ」と語った。

さらに厳しいスイス

バーゼル銀行監督委員会が策定し、20カ国・地域(G20)が昨年 支持した新銀行規制(バーゼル3)は、金融機関に2019年までに質 の高い自己資本を現在の3倍以上の水準に高め、損失に備えることを 義務付けた。この規制強化によって、欧州の銀行のROEは平均で4 ポイント、米銀では3ポイントそれぞれ低下する恐れがあると、マッ キンゼーのコンサルタントは試算する。

スイスに至っては、2大銀行のUBSとクレディ・スイスに対し、 バーゼル3の基準の2倍近い水準にまで自己資本を引き上げるよう求 める可能性がある。ただ、両行には自己資本比率が一定の水準を下回 れば資本に転換できる証券の発行が認められ、同証券約60億スイ ス・フラン(約5150億円)の発行をクレディ・スイスは14日に発表 した。

ドゥーガンCEOは今月10日、新規制に照らして過去の目標が 現実的でないとの決定にクレディ・スイスが至ったと説明。10年実績 が14.4%だったROEの目標水準を引き下げたほか、配当も35%カ ットした。これを受け、同行株は9カ月ぶり大幅安となった。

資産規模で米銀5位のゴールドマンは、利益率目標は依然として 達成可能だとしている。デービッド・ビニアー最高財務責任者(CF O)は先週、自己資本規制が強化されても必ずしもリターンは低下し ないとフロリダの会議で強調。その理由に新興市場の急速な成長など、 状況の変化を挙げた。同CFOは「現在よりも多くの地域でゴールド マンの存在感を高める。資本規制の強化とともに、収入が生まれるチ ャンスも増えると期待している」と語った。

それでもゴールドマンは利益率目標を引き下げざるを得ないだろ うと指摘するのは、ポーテールス・パートナーズのアナリスト、チャ ールズ・ピーボディ氏だ。株主もそう認識していると語る同氏は「投 資銀行や大手銀行の株価評価はあまり高くないが、それはROEを抑 える規制強化のせいだ」と説明。「経営陣は認めなくとも、市場はR OEが低下すると理解している」と語った。

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