不倫はウォール街の商売ではないが-出会い系に息抜きを求める現代人

不倫願望がおありだろうか。毒 舌で有名なDJ、ハワード・スターンのラジオ番組や深夜テレビのコ マーシャルを通じてそういう人がたどり着くのが、不倫専門出会いサ イト「アシュリー・マディソン・ドット・コム」だ。

URLを入力すると、薄紫色の背景にぼんやりしたカップルの映 像と「登録無料。人生が変わる保証付き」の説明が表示される。

ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌2月14日号の記事によると、 プロフィルを登録するのは無料で12秒ほどしかかからない。最初にす るのは自由の身かどうかの申告だ。「決まった相手のいる男性が新し い女性との出会いを求めています」や「独身の女性が男性との出会い を求めています」などと登録する。

次に、住んでいる地域と生年月日、身長体重を入力。短期間だけ の付き合いを望んでいるのか長期の関係を望んでいるのか、「ネット 上での浮気、エロチックなやりとり」、「興奮するものなら何でも」 なども選べる。適当なハンドルネームを付け、年齢と体重は少なめに 書くのがお勧めだ。

夫や妻に絶対見られないはずのメールアドレスを登録し終わると、 アシュリー・マディソンのピンクと紫のページに移る。女性登録者に 対しては、すぐに反応が殺到する。

天才でワル

このサイトの仕掛け人はカナダのトロントに本社を置くアビッ ド・ライフ・メディアのノエル・バイダーマン最高経営責任者(CE O)だ。起業家精神にあふれた天才で恐らく「ワル」の部類に入る同 氏は、「私に言わせれば、一夫一婦制の実験は失敗に終わった」とう そぶく。本当にそう信じているかどうかは分からない。同氏自身には 妻と2人の子供がいる。

アビッド・ライフは主力サイトのアシュリー・マディソンのほか に、年上の女性が年下の男性を探すサイトや、「野心的で魅力的」な 女性が「太っ腹な成功者の男性」と出会うサイトなど6つを運営して いる。株式非公開の同社の数字は検証できないが、会社発表によれば アシュリー・マディソンの登録メンバー数は850万人。米国とカナダ、 オーストラリアなど10カ国で活動しており、イタリアとスペイン、ブ ラジルにも拡大する計画だという。

メンバーの過半数は男性で、サイトによれば比率は男性7に対し 女性3。アビッド・ライフが今年見込んでいる収入6000万ドルと利 益2000万ドルの大半はアシュリー・マディソンが稼ぐ。

「人間の弱さを食い物に」

不倫奨励ビジネスはバイダーマン氏を金持ちにしたが、人気者に はしなかった。恋愛と人間関係を専門とする人類学者のヘレン・フィ ッシャー氏は同氏について、「人間の弱さを食い物にしている。それ で金を稼いでいるなら『ポン引き』のようなものだ」と話す。一方で、 この金になる「嘘つきたちの市場」でバイダーマン氏が大成功してい ることも確かだと、オンライン・デーティング・インサイダーの発行 者、デービッド・エバンス氏は指摘する。

アシュリー・マディソンのビジネスは違法ではないものの、既婚 の男女が伴侶を裏切り欺く手助けをするわけで、後ろ暗いことは確か だ。バイダーマン氏は時に身の危険を感じるという。

同氏によると、アシュリー・マディソンは女性重視のブランドだ。 しかし、不倫相手紹介というサービスが、見知らぬ人と浮気をしたこ とのない女性に受け入れられるかどうかは疑問だったとバイダーマン 氏は話す。女性の場合は勤め先で「職場での夫」を見つけるか、自ら が所属する社会集団で、例えば友人の夫や妹の夫などと親密になる場 合が多い、という研究結果を同氏は紹介した。

難民キャンプ

同氏が考えた通り、登録者は圧倒的に男性が多かった。数少ない 向こう見ずな女性はログインしたとたんにメッセージ責めに遭う。難 民キャンプに食料を投げ込んだような状態だ。

課金システムはこれらの男性にお金を使わせるようにうまく設計 されている。プロフィルを登録して閲覧するのは無料だが、自分から 相手にメッセージを送ったり、チャットを開始するには「クレジット」 が必要で、200クレジットの値段は79ドル(約6600円)だ。クレ ジットは驚くほどすぐになくなり、再購入が必要になる。女性は自分 から男性に声を掛ける必要がないので事実上無料。

バイダーマン氏はアシュリー・マディソンのユーザーの分析に多 大な時間をかけた結果、アマチュア社会学者と呼べるほどになった。 同氏によれば、登録者に医者が多いのは、「ストレスが大きい人生を 送っているせいか、自分は立派な人物だから浮気する権利があると考 えているせいかのどちらか」だ。また、金融危機の時期には不動産仲 介業者とウォール街の経営幹部の登録が急増したという。

ウォール街のプレッシャー

金融業界で働いているという登録女性の1人は、ウォール街の仕 事の「プレッシャーと、その結果としての息抜きの必要性を、配偶者 らは決して完全には理解できないだろう」と述べた。

バイダーマン氏は今、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS)最大手のフェースブックに大きな関心を寄せている。「フ ェースブックを除けば、当社は恐らく地球上で最も急速に成長してい るSNSだ」と同氏は言う。

新規株式公開(IPO)も視野に入れているようだ。カナダでの 株式公開の試みはかつてアシュリー・マディソンのビジネスモデルが 理由で頓挫(とんざ)したが、自身の株式持ち分について「いつの日 か高い値段が付くと期待している」と同氏は述べた。

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