日銀の時間軸は不安定、市場は今夏「利上げまで1.5年」へ-野村証

日本銀行は金融緩和の長期化方針を 示すことで市場金利の低下を促す「時間軸」政策を実施しているが、市 場が織り込む利上げまでの期間は2年を大幅に超えると不安定になりや すい-。野村証券の松沢中チーフストラテジストによると、市場が見込 む時間軸は、国内外の景況感改善を背景に今夏にかけて1.5年程度まで 縮む可能性が高い。

松沢氏は国債フォワード金利を基に、市場が織り込む0.25%への利 上げ時期を推計。円高・株安・債券高(金利は低下)だった昨年10月に は「4年以上先」だったが、足元では「1.9年先に早まった」という。 「来年末にも利上げがあり得るとの相場形成で、追加緩和観測ははく落 した」と述べた。

利上げまで2年間という時間軸に整合的な市場金利は、5年債利回 りで0.55%程度とも試算。足元の金利上昇は「やや行き過ぎの領域に入 りつつある」と指摘した。新発5年物国債利回りは9日に一時0.625% と、09年11月以来の水準に上昇。追加緩和翌日の昨年10月6日には03 年6月以来初めて0.20%まで低下していた。

松沢氏は、日銀の13年度に関する景気・物価見通しは今秋まで分か らないと指摘。しかも「夏場にかけて内外の景況感改善が進む」ため、 市場が見込む「利上げまでの時間軸は1.5年程度まで縮む場面がある」 と予想した。1.5年と整合的な5年物国債利回りは約0.7%と推計。同社 は同利回りの7-9月期の上限を0.75%とみている。

政策運営、遅らせ気味に

ただ、景気回復と物価のマイナス幅縮小が順調に進んだとしても、 日銀は企業や家計に根づいたデフレ心理を払しょくする狙いもあって、 「政策運営を遅らせ気味にやっていく」公算が大きいとも分析。0-

0.1%の政策金利を12年末にかけて0.1%に戻し、13年4-6月期に約 6年ぶりとなる利上げに踏み切ると予想した。

日銀は昨年10月、政策金利を0.1%から0-0.1%に変更。「中長期 的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になった と判断するまで実質ゼロ金利政策を継続すると表明した。白川方明総裁 は記者会見で、政策金利の変更は「これまでも」実施してきた実質ゼロ 金利政策をより明確化するためだと説明した。

「中長期的な物価安定の理解」は、9人の政策委員が中長期的にみ て物価が安定していると判断するインフレ率。生鮮食品を除く消費者物 価指数(コアCPI)が前年比「2%以下のプラスの領域にあり、委員 の大勢は1%程度を中心と考えて」いる。ただ「金融面での不均衡の蓄 積」なども点検するとしている。

昨年10月末の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で公表し た政策委員によるコアCPIの予測中心値は、2011年度が0.1%、12年 度は0.6%。1月の中間評価では11年度を0.3%に引き上げ、12年度に ついては据え置いた。

市場の「想像」

松沢氏は10日のインタビューで、「説得力を持って経済・物価を予 測できるのは約2年先まで」であり、それ以降は市場の「想像」に過ぎ ず、「相場形成は不安定さを伴う」と話した。日銀が翌々年度までの予 測値しか示さないのは「やむを得ない」と評価。世界的な金融危機後の 日本経済が利上げまで長い時間を要することが原因だと指摘した。

ただ、日銀は昨年10月に「実質的にインフレ・ターゲット的な政策 運営を導入した」ものの、「中央値の1%を目指すとは一度も言ってい ない」とも指摘。日銀が目指す物価の定義は「厳密にはまだ明確になっ ていない」と語った。

松沢氏は、金融政策運営を景気とともに左右するコアCPI上昇率 は今夏の基準改定に伴い0.5%ポイント程度押し下げられ、11年度はマ イナス圏に、12年度は0.1%程度のプラスに後退すると試算。ただ、12 年度にかけての改善ペースが続くと、日銀がまだ予測値を示していない 13年度は基準改定後でも通年で0.5%前後と「利上げを否定する数字で はなくなる」との見方を示した。

日銀は利上げをめぐる環境について①コアCPI上昇率は必ずプラ ス圏②資産価格は安定的に推移③コアCPI上昇率が1%に近づけばな お望ましい-と考えているのではないかと松沢氏は分析。ただ実際に は、低い潜在成長率や企業・家計のデフレ心理を背景に、コアCPI上 昇率が1%程度で安定する前に資産価格の高騰などが強まる形で利上げ せざるを得なくなる可能性が高いと予想した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE