ムバラク大統領が辞任、軍に権限を委譲-30年の独裁に幕

エジプトのムバラク大統領(82) が辞任し、権限を軍に委譲した。過去18日間にわたってカイロ中心部 には反政府派が集結し、ムバラク大統領の30年に及ぶ独裁体制の終了 を訴えていた。

スレイマン副大統領が国営テレビを通じて声明を読み上げた。同 副大統領は声明の中で、「ムバラク大統領は大統領府の権限委譲を決 めた」と述べ、「今後のエジプトについては軍最高評議会が指揮を執 るよう指示を受けた」と続けた。

タハリール広場では数万人のデモ参加者がムバラク大統領辞任の ニュースに歓喜。抗議活動の象徴だった同広場は国旗が翻り、歌や踊 りが繰り広げらる祝宴の地となった。カイロ郊外のヘリオポリスにあ る大統領宮殿の外には、車がクラクションを鳴らし、集まった数千人 の群集が「民衆が政権を倒した」と繰り返し叫んでいた。

オバマ米大統領は安全保障チームとの会合後、ホワイトハウスで 「エジプト国民が沈黙を破り、その声は聞き届けられた。エジプトは 過去のエジプトとは違う」と発言。エジプト国民が歴史の流れを変え、 目的を成就する上で「非暴力という道義的な力」が助けとなったと語 った。

エジプトのタンタウィ国防・軍需生産相は反政府デモが始まって 以来、ゲーツ米国防長官と少なくとも4回は協議している。

「米国は鞍替え」

ジョンズ・ホプキンス大学イタリア・ボローニャ校のカリム・メ ズラン教授(国際関係論)は、「米国は鞍替えした。オバマ大統領は 独裁者を支持しないことを鮮明にした」と述べた。

ムバラク大統領は前日、退任要求には応じず大統領としての職務 を継続する意向を表明。これに反発した反政府派が、11日の金曜礼拝 後に大規模なデモを実施、政権打倒を訴えていた。

大統領宮殿の外でデモに参加していたグラフィックデザイナーの シハーブ・バッサームさん(30)は、「ほかの誰でもない国民の手に 権限が握られていることがこの日はっきりした」と述べ、「軍が正当 なのはそれが国民で成り立っているからだ。軍がより良い未来を築け るよう手助けしてくれると信頼している」と続けた。バッサームさん の友人は、反政府抗議運動が始まって2日目の1月26日、警察署の前 で銃弾に倒れ、死亡したという。

ムバラク大統領の辞任発表後、中東からの原油輸送が支障を来た すとの懸念が弱まり、株価が上昇。ニューヨーク原油は10週間ぶりの 安値をつけた。

軍への要求

タハリール広場を占拠し、フェースブックやツイッターを駆使し てデモを組織した数千人の若者は、エジプト軍最高評議会に対し、選 挙の前倒し実施を要求するとみられている。反政府デモに一役買った 米グーグルの幹部ワエル・ゴニム氏は11日、要求リストを読み上げた。 その中には政治結社制限の完全撤廃や在外エジプト人への投票権付与 が含まれている。

反政府派のエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長 は体制移行期間中の支援を惜しまないと表明した。カタールの衛星テ レビ局アルジャジーラとの電話インタビューで、ムバラク大統領の辞 任について、エジプト国民の「夢が実現した」と語った。

2005年の大統領選で大差の次点となったアイマン・ヌール氏はア ルジャジーラに対し、所属するガド党が承認すれば、大統領選への出 馬を検討する考えを明らかにした。

選挙が実施されれば、エジプト野党の最大勢力であるムスリム同 胞団が広く支持を集める可能性がある。同胞団の指導者、エサム・エ ラリアン氏は大統領辞任発表への立場を示すのは時期尚早との見方を 示した。

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