公債特例法案など不成立なら内閣総辞職・解散に発展も

「ねじれ国会」で2011年度予算案 をめぐる与野党対立が激化する中、公債特例法案、税制関連法案の3 月末の年度内の成立が危ぶまれている。菅直人首相が内閣総辞職か衆 院解散を迫られる「3月政局」に発展する可能性も指摘されており、 エコノミストの間では政治リスクが投資家の国債売りを誘発し、一時 的に金利に影響が出るとの懸念もある。

「3月解散、4月衆院選が一番いい。国民に正面から堂々と消費 税の引き上げを公約に掲げて選挙をして、菅さんが勝利すれば、われ われもそのことに関しては協力する」-。自民党の野田毅税制調査会 長は7日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、消費税を 含む社会保障・税一体改革を政権の最重要課題に位置付ける菅首相に 早期解散を要求した。

子ども手当などを「バラマキ」と批判して菅政権への対決姿勢を 鮮明にさせている自民党。野田氏は、予算案本体と違い衆院の優越規 定のない公債特例法案、税制関連法案についても、これらの財源を手 当てする法案として「明確に反対」と言い切る。

参院でキャスチングボートを握る公明党が菅政権に向ける目も厳 しい。石井啓一政調会長も4日のインタビューで、11年度予算案につ いて「景気対策・デフレ対策が中途半端で、財政健全化への道筋が見 えないので反対の方向だ。公債特例法案、税法も慎重に検討せざるを 得ない」と関連法案への協力に難色を示す。

三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所 長は、公債特例法案などが年度内に成立しない場合の国債市場への影 響について「長期金利は急上昇する可能性が一時的にあり得る。6月 には1.65%くらいまでを想定している」との見通しを示す。

景気回復

嶋中氏はその理由として「もともと世界的な景気回復で、株価が 上昇し、債券相場にとって流れは悪くなっている。そういう所に米系 の格付け会社による格下げがあり、もともと売られようとしていると ころに火をつけることになりかねないし、政治状況がひっ迫すると、 そういう行動を誘発することもある」と分析する。

みずほ証券の飯塚尚己シニアエコノミストは、「ねじれ国会が世界 中で起こっているのに日本ではコントロールできていないとなると、 国債市場にはネガティブな影響が出る可能性はある。ただ、市場への 影響は瞬間風速的なもので壊滅的な金利の上昇までには至らないだろ う」と語った。

野田佳彦財務相は3日の衆院予算委員会で、公債特例法案の成立 が執行の前提となっている歳入について「いわゆる特例公債38.2兆円、 加えて基礎年金の国庫負担2分の1を継続するための臨時財源2.5兆 円。合わせて40兆円を超える額で、全体に占める割合は44%で極めて 高い数字だ」と指摘。その上で、仮に年度内に成立しなかった場合は、 「長期になれば、それこそ予算執行ができなくなる状況が生まれてく るだろうと思う。それはもう個別の事業がどうのでなくて、国家運営 に支障が出る」と語った。

3月政局

民主党の藤田幸久参院財政金融委員長は公債特例法案について 「通らないと赤字国債が発行できなくなり、何カ月もつのか分からな い。国にとって非常に大きな問題だ」と指摘。同党の藤末健三参院議 員も「国債が一気に暴落するのが一番怖い」と語る。

これに対し、旧大蔵省出身の自民党の野田氏は「財源は3カ月は 大丈夫、6月いっぱいまでいい。国民生活をそんな大混乱させないで もできる」と反論。市場への影響を懸念する民主党内からの声につい ては「もし混乱するとしたら政府の怠慢だ。そういう脅迫まがいのこ とを言うから誠意がないし、反省も何もない」と不快感を示す。公明 党の石井氏も「心配があるのなら、ないようにするのが政府・与党の 責任だ」と突き放す。

名古屋市長選

政治アナリストの伊藤惇夫氏は、6日投開票の愛知県知事・名古 屋市長選挙で民主党推薦候補が敗退したことを挙げ、菅政権を取り巻 く状況について「菅さんでは選挙を戦えないという雰囲気が、民主党 内に広まっているし、野党は国会対策上も、与党に対して厳しい対応 を続けるだろう」と解説。その上で、「3月政局がかなり現実味を帯び てくる。追い込まれた場合、首相が解散総選挙か総辞職かの選択を迫 られる場面も可能性として出てきた」と語った。

伊藤氏は「解散か総辞職かというと、菅首相は間違いなく解散を 選ぶだろう」と指摘。菅首相に近い土肥隆一衆院議員も「話し合い解 散の可能性が強い。3月で予算と関連法案を通してくれ、そして6月 で国会が終わりになって解散」との見通しも示すが、民主党内では解 散への慎重論も根強い。

石井一選挙対策委員長(副代表)は4日のインタビューで、「選挙 の総責任者として、どんなことがあっても今年解散するつもりはない。 予算案が通らないから解散するとか、それと引き換えにやろうという ことは一切、考えてない」と明言。仮に解散に踏み切った場合には「民 主党がおそらく比較第1党にはなるが、どの党も過半数を取れない。 日本の政治が劣化するというか混乱する」と指摘する。

当の菅首相は9日の党首討論で、自民党の谷垣禎一総裁から早期 解散を求められ、「解散するということはその後の政局がどうなるかは だれにも分からない。『まず解散だ』というのは国民の利益よりも党の 利益を優先している提案だ」と否定。10日も自身の公式ウェブサイト 「KAN-FULLBLOG」で、「政局より大局だ。解散こそ『急ぐ』べきで なく、じっくり国会で改革の形を練り上げてから実行前に国民の判断 を仰ぐのが順序ではないのか」と訴えた。

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