【書評】セックスレスカップルに必要なのはベッドルームの経済学者

人間はアメとムチに反応する。これ は経済学者なら誰でも知っている。極度に競争心が強くひどいかんし ゃく持ちの弁護士ハワードを見てみよう。

ハワードはひどくいら立って帰ってくると、庭の三輪車や床に落 ちているおもちゃを蹴飛ばして荒れ狂う。ポーラ・ザックマン、ジェ ニー・アンダーソン両氏の共著、「スパウスノミクス」は経済学を通し て円満な夫婦生活を実現する方法を説く。

ハワードはかんしゃくを起した後いつも、短気を直さなければな らないと考える。そこで、ハワードと妻で同業者のジェンはハワード のかんしゃくを抑える方法を考える。20まで数えるのも深呼吸するの も効果がない。万策尽きた二人は、ハワードが爆発しそうになったと きにジェンが「レッドフラッグ」と叫ぶというゲームを考え出した。

「ハワードは3日間、レッドフラッグを出されずに過ごせたら、 ジェンとセックスできる」という。幼稚なゲームのように聞こえるが、 このゲームは成功し家庭に平和が戻るとともに二人のセックスライフ も活性化した。これは経済学でいうトレードオフの典型だと著者らは 説明する。

ザックマン氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル、アンダー ソン氏はニューヨーク・タイムズのライター。両氏は全米のカップル をインタビューし、家庭内の現象を解明しようとする。労働の分配(誰 が芝刈りをするのがいいか)、モラルハザード(結婚が「大き過ぎてつ ぶせない」ためにどうしようもない亭主が救済されていないか)を検 証する。

立ち入った質問

自己啓発書の多くと同様に、本書もきれいごとが多い。エネルギ ーの中心である「チャクラ(ヨガで精神的および肉体的なエネルギー が宿るとされる場所)」を開いて見せることが説かれたり、多くのカッ プルが楽園で迷子になった子供のように描かれたりする。

とはいえ、執筆はきちんとした調査に基づいており、経済学につ いて楽しく学べる上に、この本によって救われる結婚も幾つかはある かもしれない。

著者らはまず、新古典主義から行動経済学まで多様な学派のエコ ノミストから話を聞いた。次に、市場調査会社を雇って全米で1000 人ほどの米国民を対象に63項目の立ち入った質問をした。調査は「徹 底的・画期的・高価な結婚調査」と銘打たれている。

こうして集めた情報を持って、著者らはサンフランシスコからマ イアミまで各地でカップルと面談する。ピザとビールで彼らの口を軽 くするとともに、匿名を約束。名前や個人を特定するような詳細は別 のものに変えた。

熱い夜

それぞれのカップルが明かす結婚生活での衝突は、バブル破裂 (赤ちゃんができる前の熱い夜を覚えている?)や情報の不均衡(言 ってくれなければ妻が何を望んでいるか分かるはずがないじゃない か)などの経済問題になぞらえられる。こじつけのように聞こえるが、 出版社のカレン・フィンク氏によれば、ランダムハウスの編集者が言 葉の使い方が正確だと保証した。

そのほか、「需要と供給(セックスの回数を増やす方法)」、「異 時点間選択(現在と将来の消費量の配分に関する選択)」についての章 がある。トレーダーが損失を取り返そうとしてさらに深みにはまる「ケ ルビエル症候群」の例や「ゲーム理論」についての章もある。 (ジェームズ・プレスリー)

(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この 書評の内容は同氏自身の見解です)

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