「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

2月10日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは14、 15日の日本銀行の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」 15人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケート 回答期限は9日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事として「日 銀会合は現状維持へ-踊り場脱却は濃厚、政治圧力なく株価も堅調で」 を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)経済、 物価情勢の見通し、13)①複数の日銀高官から最近景気の踊り場脱却 近しとの情報発信が行われているが、実質ゼロ金利政策解除の時間軸 に何らかの変化があるか、②円ドル相場が1ドル=70円台に突入した 場合、金融政策への影響はあるか、③年度末にかけて政治の混乱によ り日銀への金融緩和圧力が高まるリスクはあるか、④須田美矢子審議 委員が3月末、野田忠男審議委員が6月中旬に任期を迎えるが、両審 議委員が退任することで金融政策運営に何らかの影響があるか。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年度下期(2013年度下期以降) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)年明け後の米国景気は企業部門主導で上振れ気味。ISM景況感 指数が数年ぶりの高水準に上昇。個人消費も株高の資産効果により底 堅い。雇用情勢は曲がりなりにも改善している。半面、家計の過剰債 務問題という下振れ要因がくすぶり続けている。住宅価格の再下落が 鮮明化しつつあるので、債務デフレ圧力が再燃し、バランスシート調 整は長期化の様相。個人消費主導による成長ペース加速は見込まれな い。

ちなみに、11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月 比▲1.6%と09年12月以来で最大の下げ幅を記録。20都市のうち9 都市では住宅バブル崩壊後の最安値を下回った。ユーロ圏経済は引き 続きコア国と周辺(財政危機)国の著しい二極化状態。“大黒柱のド イツ次第”というもろさをはらんでいる。

国内景気は踊り場脱却を探り始めた。鉱工業生産が自動車のリバ ウンドを受けて底打ち。アジア向け輸出の持ち直しも寄与している。 しかし堅調な回復基調は想定されない。アジア向け輸出は金融引き締 め政策によるアジア景気減速を受けて伸び悩む見通し。個人消費は3 月末の家電エコポイント制度終了後、需要先食いの反動が表れそうだ。

一方、物価は需給バランスの改善により下落率が縮小に向かうも のの、今年8月のCPI基準改定に伴い下方修正される公算が濃厚。 デフレ長期化観測があらためて強まる場面も。

13)①大きな変化はみられない。景気回復持続に伴う需給バランス改 善により物価下落率が縮小しつつあるものの、物価安定の理解=1% が展望できるような情勢にはほど遠いうえ、今夏のCPI基準改定で 下落率が再拡大するとさらに遠のくことになる。日銀も潤沢な資金供 給を継続してレポ金利などのターム物金利を抑制している。

②1ドル=70円台以上への円高進行は輸出企業の収益悪化や国内 空洞化(海外生産シフト)の促進を通じてデフレ懸念を強め、景気・ 物価シナリオの下方リスクを高め、日銀に緩和圧力がかかる。③為替・ 株価次第。円高や政治リスクを嫌気して株価が急反落を強いられる場 面では日銀は何らかの対応を迫られる。政治が混乱しても為替・株式 相場が特段の反応を示さなければ日銀への圧力はさほどかからない。

④タカ派で中央銀行の国債購入に懐疑的な須田美矢子委員が抜け ることは、政策委員会のタカ派色を弱める。それ以外の影響は後任の 人選次第。

●日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)昨年12月分の国内指標がほぼ出揃って明るさが増した。03年秋 や05年初のように輸出数量が下げ止まり、生産の持ち直しを確認でき たことから、今春で踊り場は脱却できるだろう。踊り場脱却後の日本 経済は外需主導の緩やかな景気回復を続けていくと見ている。今年半 ばまでは欧州財政問題がまだくすぶっていること、新興国での引き締 め対応が遅れていること等から、回復軌道に不安定さが残るだろう。

10年暦年の日本の輸出金額の地域別構成比を見ると、アジアが

56.1%(09年54.2%)でそのうち中国が19.4%(09年18.9%)、米 国が15.4%(09年16.1%)、EUが11.3%(09年12.5%)となった。 アジアの中でも、新興工業国・地域(NIEs)と東南アジア諸国連 合(ASEAN)は米国との連動性が非常に高いことから、引き続き 中国と米国経済の動きが日本経済の回復持続力の鍵を握る構図は変わ らない。

よってリスク要因は、インフレ対応の遅れで新興国経済の振幅が 増すこと、息を吹き返しつつある米国経済の想定外のもたつきとなろ う。なお、資源インフレの先進国への影響では、欧州中央銀行(EC B)スタッフの物価見通しに注目している。08年の資源高時にECB は利上げを実施した実績があり、HICP(インフレ率)の予想中心 値が前年比+2.0%に到達すれば、ECBの利上げの可能性が高まる。

その場合、セーフティーネットとして一部の資金供給オペを残し つつ、利上げするという組み合わせもあり得る。早ければ7-9月の 利上げの可能性も見ておきたい。日本では08年時に原材料価格の上昇 が最終需要財に波及するまでに半年はかかっていた。よって日本での CPI上昇が定着するには、資源インフレが半年以上続く、もしくは 米国のQE2が延長する等の動きがなければ一過性に終わるだろう。

それよりも交易条件の悪化で企業収益が減少することが懸念材料 となる。また8月のCPI基準改定により、11年度のコアCPIは前 年比マイナスとなることから、日本のデフレ克服にはまだまだ時間が かかるという見方は変わらない。

13)①踊り場脱却は日銀のシナリオに沿った動きである。7日の白川 総裁講演でも、「デフレの克服のためには、粘り強い金融緩和と成長力 を高める努力の2つが不可欠」と述べており、日銀の時間軸に変化は ないだろう。やや長めの金利の上昇は米経済指標の改善を受けた米金 利上昇に連動したものである。現状は株高を伴っており、良い金利上 昇と言える。

②仮に70円台の円高進行となった場合、昨夏の再来となろう。円高 を受けて株安(日経平均の1万円割れ)となり、ようやく持ち直し始 めた企業や家計のマインドが再び一気に悪化しかねない。踊り場脱却 が視野に入っているとは言え、年度末を前に急激な円高・株安となれ ば、資産買取り基金の増額を検討しよう。1月末までの進ちょく度合 いからは、国債、短期国債の増額の選択肢がとりやすいと思われる。

③最古参の須田委員と野田委員の2人は、07年1月に現状維持に反 対(水野元委員とともに3人で利上げ提案)、10年3月の新型オペ増 額決定時にも信念を持って反対票を投じたご意見番である。ご意見番 の退任により、白川総裁の意見がこれまで以上に通りやすい(反論者 を説得する時間が省ける)状況になるだろう。

過去の事例では、新任の委員は就任から地方講演デビューまで半 年程度あり、個性的な意見を聞けるようになるには時間がかかる。須 田委員は女性枠、野田委員は銀行出身枠なので、その中で後任候補の 選定が行われるはずである。歴代の女性枠は経済学部教授との肩書き があったことから、経済修士もしくは経済に精通している女性を探し ているだろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年1-3月(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)景気が既に「踊り場」を脱しつつあることが、鉱工業生産や企業 サーベイの結果から確認されつつある。物価面では、ガソリンや灯油 の価格上昇がみられているものの、エネルギーと食料を除いた欧米型 コアで見た場合、デフレが根強く続いていることがわかる。

海外は新興国の高成長と米欧の緩やかな回復という「2スピード」 状況に基本的には変わりがない。米国では、経済成長基盤が人口面な どからしっかりしていることと、バブル崩壊の後遺症との綱引きが続 いており、本格的な景気回復は来年以降になるだろう。

13)①時間軸に変化はない。CPI基準年改定を控えているという事 情もある。長期金利の上昇は、日銀の早期利上げ観測浮上によるもの ではなく、米欧長期金利の上昇が主因。②企業に80円近辺の円高への 抵抗力がついていることもあり、株価への影響は昨年の円高進行局面 よりも限定される。とはいえ金融政策としては対応せざるを得ず、資 産買入等の基金増額による追加緩和観測が浮上しやすくなる。

③政府・与党には日銀にかまっている余裕などあまりないのでは ないか。与党内も一枚岩とはとうてい言い難い状況になっている。そ れよりも予算関連法案が成立する時期や、その場合の与野党の妥結点 (総辞職か解散か)などの方が市場にとってはるかに重要なテーマだ と考える。

④後任が独自色の強い主張の持ち主であれば、決定会合で議論が 活性化することもあり得る。だが、金融政策運営自体が大きく変わる ような影響力は持ち得ないだろう。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年春以降(2013年春) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)日本経済はエマージング経済の需要、米経済の回復を受けて緩や かな回復を続けるだろう。中国が適度な金融引き締めでインフレを制 御できるかが注目される。欧州経済はばらつきが激しいが、ドイツ経 済が絶好調であるため、全体としては悪くない。ソブリン危機の問題 は手放しで楽観はできないものの、スペイン、イタリアに波及するリ スクは今は高くない。

13)①日銀の中期的な物価見通しは大きくは変化していないため、出 口政策を前倒しで検討していることはないだろう。世界的な穀物価格 の上昇を受けて食品価格の引き上げが想定よりも強まる可能性はある が、賃金上昇につながるセカンドラウンド効果が出てくる可能性は今 は低いため、利上げを急ぐことにはならないだろう。むしろ日銀は08 年のように食品や原油価格上昇が招くかもしれない消費の鈍化が気に なっているだろう。

②円高にもかかわらず10-12月の上場企業の経常利益は前年比 24%増となった。中小企業の多くも円高で深刻な打撃を受けたとは話 していない。よって80円を割れるくらいでは実態面では大きな影響は ないと思われるが、金融政策に対して政治的な圧力が台頭してくる可 能性はある。

③しかし、世界経済が上向きのトレンドを示している間は日銀に 対する政治的圧力の強まりは限定的と考えられるため、現時点では3 月会合での追加緩和策の可能性は低いだろう。なお、追加緩和策がな いとしても、包括緩和策と国債買入れオペによる日銀の資金供給は 着々と増加しており、短期金融市場における資金余剰感は強烈な状況 が今後も強まっていくと思われる(それゆえ激しい札割れが起きて日 銀当座預金が減るという、逆説的な現象が現在起きている)。

●JPモルガン証券の菅野雅明調査部長 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)景気の持ち直しが鮮明化。12月鉱工業生産速報で示された製造工 業生産予測指数は、第1四半期の鉱工業生産が大幅な増加となること を示唆している。同統計の季節指数が歪んでいるため、伸び率は割り 引いてみる必要があるが、それでも実勢ベースで前期比年率20%強の 伸び率は期待できる。

需要面では輸出が主たるけん引力だが、設備投資、個人消費も先 行きに明るさがうかがえるので、国内総生産(GDP)成長率は第4 四半期にいったんマイナスとなった後、第1四半期は再びプラスとな ろう(当社予測は+2.2%<前期比年率>)。個人消費はエコポイントの 反動等のマイナス要因があるが、基本的にはマインドが改善方向なの で、今後は過去2年間落ち込んだサービス消費等の増加が見込める。

13)①日銀は「景気の踊り場脱却は近い」とのメッセージを発してい るが、市場では「景気の踊り場は脱却した」とのコンセンサスが既に でき上がっている。日銀は「踊り場脱却は近い」と表現することで、 意図的にビハインド・ザ・カーブであることを印象付けているように 思える。

長めの金利の上昇は「時間軸の変化」を反映したものというより、 単に米国長期金利の上昇に引きずられる形で円の長期金利が上昇した のを反映し、ある程度、長短金利の裁定が働いた結果と見るべき。日 銀は時間軸に変化がないことを強調することにより、長めの金利に上 昇圧力がかかるのを抑制すべき。

②世界景気と世界の株価が上昇基調にある中で円高が進んでも実 体経済に及ぼす影響は軽微。ただし世界経済の成長が減速し、米国が QE3など予想外の政策を打ち出した結果円高が進む場合は日銀も追 加緩和、具体的には買い入れ資産の増額などの対応が求められよう。

③現政権であれば、与謝野大臣が親日銀的なスタンスなので、日 銀に対する圧力は限定的だろうが、政界が混乱し政権の顔ぶれ、ある いは政権自体が交代するような場合には、さらなる圧力が加わる可能 性が出てくる。

④須田委員はこれまで大勢の考えにも流されずご自身の考えと理 論に基づき一貫した考えで対応してこられた。また、講演などでも日 銀の考えを理論的に分かりやすく国民、市場参加者に語りかける情熱 が感じられた。再任されず審議委員から退任されることになると、日 銀だけでなく、日銀ウオッチャーの眼からみても貴重な人材が失われ ることになる。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)次回は月報の判断も上方修正されるだろう。物価をめぐる環境は 少しずつ変化している。原油価格は上昇含み。CPIも特殊要因をは ぎとれば0%に接近。白川総裁は物価環境をどう評価しているのだろ うか。

13)①日銀はなるべく時間軸を変化させないように配慮しているが、 景気判断が変化しているのを本能的に好評価するので、時間軸にもゆ らぎが起こっている。②70円台への突入は想定されず。仮にという話 であれば、円高が輸出腰折れに作用する可能性を鑑みて、買い取り基 金を増額する選択肢を用意。

③民主党政権は日銀・財務省などから出てくる推薦候補にはよほ どのことがないとNOとは言わないだろう。最近、政策委員の重みが 感じられなくなっている。後任候補は女性1名(日銀経験者?)。銀行 出身者1名になる。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)景気は輸出減速を背景に昨年夏場から「踊り場」にあったが、昨年 10月から世界の製造業サイクルが回復に転じたことを受けて年末か ら輸出が回復に転じ、生産も底入れしたと見られる。既に「踊り場」 を脱却したと思われる。鉱工業生産は四半期ベースでは10-12月に前 期比マイナス1.7%となったが、月次ベースでは11月、12月と持ち直 しの動きが見られ、予測調査では1月も大幅増産が見込まれている。

今年1-3月は昨年10-12月に生じた大規模な家電の駆け込み 需要の反動減が成長の抑制要因になるものの、輸出の持ち直しがその 影響を相殺し、日本経済は1-3月からプラス成長に復帰すると予想 される。「踊り場」脱却が明確になっていくだろう。

13)①日銀の景気判断が強まれば、理論上はゼロ金利解除時期は前倒 しになる。しかし、現在のゼロ金利政策の解除条件は「中長期的な物 価安定の理解」に沿った形での「物価の安定」が展望できる状況とさ れている。具体的には1%のインフレ率が安定的に見通せる時期であ る。簡単にはそうした状況には到らないため、日銀の景気判断が時間 軸に影響しても、限定的だと思われる。

今年8月末に予定される基準改定でCPIコアは0.7%ポイント 程度、下方改定される可能性がある。目標に到達した後にゼロ金利政 策が解除されるよりも、世界的なコモディティ・バブルの発生といっ た金融的な不均衡の蓄積によって、ゼロ金利政策が解除されるがい然 性の方が高いのかもしれない。

②日本社会が為替レートに過度に反応しやすいため、日銀の金融政 策に最も影響を与える金融変数も為替レートとなっている。円高が進 行し、株安が進めば、ゼロ金利政策の時間軸が長期化する可能性があ る。ただ、円高が進んでいても株安が進まなければ、必ずしも時間軸 は長期化しない。多くの場合、円高と株安が同時進行するのは、米国 経済の悪化が織り込まれている局面だ。

現在はむしろ米国に対する過度な悲観が修正される局面ではない か。また現在の為替レートは均衡水準から外れているわけではないた め、それほど大きな悪影響は生じていない。③仮に円高が進んでも、 株価が崩れることがなければ、政治的な緩和圧力はそれほど高まらな いのではないか。製造業のグローバル・サイクルは昨年10月に回復が 再開したばかりであり、近い将来減速局面に入るとは予想されない。

④あらゆる政策はメリットとデメリットがあり、その比較考量を 行うことで決定されなければならない。また金融政策は大きなメリッ トと大きなデメリットを持つため、政策変更に対しても政策維持に対 しても、慎重に決定する必要がある。委員会制の下で異なる出自の専 門家が時間をかけて結論に至るのは、変化が遅いというデメリットも あるが、影響の大きな決定を慎重に行うというメリットも存在する。

今回、金融緩和の副作用を重視する須田審議委員の退任で少数派 意見が減るとすれば、委員会制の持つメリットがそがれるかもしれな い。後任人事に就いては、民主党政権になって、自民党時代のポリテ ィカル・アポインティーの決定メカニズムが大きく変わったため、予 想が大変難しい。事前に森本審議委員を予想した人は皆無であった。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年1-3月以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)10-12月期GDPはエコカー補助金終了後の個人消費の反動減や 輸出や公共投資の減少から、弊社は前期比年率-1.8%のマイナス成長 を見込んでいる。しかし、これは政策効果の反動に伴う人為的かつ一 時的な落ち込みで経済の基調の変化を示すものではない。1-3月期 以降の日本経済はプラス成長に復帰し、踊り場的状況を早々と脱する 見通しである。

背景として、①財政・金融政策の両輪で二番底懸念の大きく後退 した米国やユーロ安の恩恵を受けるドイツに加え、中国も再度景気が 過熱気味となる等、海外経済の再加速が鮮明となってきたこと②輸出 の持ち直しや適切な在庫管理を背景に生産の回復基調が続くと見込ま れること③各種マインド系の先行指標が底入れしつつあること-の3 点が挙げられる。

弊社は11年前半の経済の立ち上がりを前回予測よりも強く見積 もり、11年通年の見通しも年度で前回12月時点の+1.2%から+2.0% に、暦年も+1.2%から+2.0%に上方修正した。四半期ベースでは特に 11年1-3月を前期比年率+2.9%(前回+0.5%)、4-6月を同+2.1% (前回+0.9%)と大きく引き上げた。むろん、内需は引き続き力強さを 欠いており、外需主導の回復となることに変わりはない。

物価に関しても、原油価格の上昇や高校授業料の影響からエネル ギーを含む日本型コアが4月以降一時的にプラス圏に浮上する可能性 が高まっているものの、需給ギャップの継続を背景に、エネルギーや 食料を除く米国型コアは低迷が続く見込み。また8月に予定される統 計の基準改定に伴い比較的大幅な伸び率の下方修正も見込まれること から、デフレ脱却のタイミングは逃げ水のように後退しよう。

こうしたデフレの継続を受け、日銀は包括緩和の強化に取り組む 見通しである。

13)①足元の債券市場は向こう5年間で3回程度の利上げを織り込ん でおり、実際に時間軸は短期化しているが、これは日銀高官の踊り場 脱却発言のためというよりも、米量的緩和第2弾発動前後からの海外 金利上昇につれた動きだろう。もっとも、日本に関しては先行きのデ フレ脱却の道のりの厳しさを勘案すると、市場の利上げ期待は行き過 ぎており、時間軸は不必要に短期化している印象がある。

②株価は為替レートの変化を反映しにくくなっているものの、70 円台突入となればやはりネガティブな反応を示す可能性が高い。この 場合、日銀は包括緩和政策の強化の観点から、資産買入れプログラム を拡大する可能性がある。現状の買入れ枠の消化状況からすると、ま ず国債の買入れ枠を増やそう。

③政治の混乱により日銀への緩和圧力が必ずしも高まるとは思え ない。政治の混乱の結果、株式市場や債券市場に悪影響が出る場合、 日銀がそれに対して何らかの政策対応を行う可能性はあるが、政治が 混乱し、解散総選挙といった事態となれば、かえって日銀への政治的 な緩和圧力は弱まるのではないか。

④須田委員の退任により審議委員の主張に対立軸がなくなり、執 行部主導色が更に強まり、審議の形骸化が進むことが懸念される。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :可能性あるが時期特定できず(同) 3)利上げ時期 :2013年1-3月以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国景気の楽観論は足元、広がりを見せている。1月の雇用統計 は悪天候を考慮すれば事前予想よりも強めだった。しかし昨年11、12 月の数字は弱く、多くの企業が新規雇用に引き続き慎重姿勢であるこ とは基本的に変わりがないと見ている。加えて住宅価格も再下落のリ スクが大きいと判断している。したがって米国景気に関しては1-3 月の経済指標を重ねれば、慎重論が増えてくると予想している。

欧州経済の見方も変わらない。好調だった独が減速、ユーロ安効 果が一巡し、財政緊縮も悪影響を及ぼす公算が大きい。わが国景気で は、政策効果のはく落などを前提に多くの企業が広範に在庫を積み上 げていなかった分、最近の生産が堅調だ。目先の見通しも明るい。も っとも、それは事前に見込まれていた動きに過ぎない。米国の楽観論 が現実のものになれば、少し様相は変わってこようが、来年度の実質 成長率は1.0%台前半に落ち着くと見ている。

13)①時間軸に変化はないと考えている。たとえば2年や5年のカレ ント国債利回りは昨年12月のピーク時を上回っていない。そもそも、 展望リポートにおける消費者物価の見通しからすれば、昨年10月の時 点でも、日銀の考える時間軸は市場コンセンサスのそれより短かった と言える。長めの金利の強含みは米国金利や株価といった他市場に引 っ張られた部分が大きいと判断している。

②以前に比べると企業の円高対応力がついたと多くの株式市場参 加者は見ていよう。加えて底堅い生産、グローバルな割安感の修正、 米国など海外株価に連れた動きなどから株価自体が水準を切り上げて いる。したがって円高・株安を受けて追加金融緩和に追い込まれる。 ③もちろん後任者次第だ。そのパーソナリティによっては金融政策運 営への影響なしとはしない。しかし、基本的には現在の枠組みを逸脱 することはないと考える。後任候補の具体名は特になし。

●HSBC証券の白石誠司チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)国内では輸出数量、生産に底入れ感が出てきており、外需主導の 緩やかな循環回復が再開したとみられる。しかし一方でデフレギャッ プの残存、政府刺激策の逓減による駆け込み需要の反動減といった要 素もあり、国内最終需要への波及にはまだ時間を要する。欧米の中長 期的な不透明感や人口動態等を背景とした構造的な国内期待成長率の 低下を踏まえると、設備投資に加速感は出にくい。

コアCPIは高校授業料無償化のデフレ圧力が消える4月以降、 小幅ながら前年比上昇となる見込みだが、8月の基準改定の影響(-0.5 ~-0.7pt)、10月以降のたばこ増税インフレ圧力(0.3pt)の消滅など もあり、特にコアコアベースでのデフレ長期化公算には大きな変化は 生じない見込み。

13)①最近の動きについては利上げ観測の高まりというよりは、循環 的な金利上昇圧力が日銀の守備範囲にも多少及んでいるだけだろう。 08年のように資源・食料インフレが加速した場合、CPI総合が瞬間 1%を越える局面もなくはないが、日銀が「中長期的な物価安定の理 解」でCPI総合をターゲットとしているのは「一時的な変動は中長 期的には均される」との考えに基づいている。

日銀のコミットメントは事実上、「需給ギャップ面からのインフレ 圧力に起因した1%程度の安定的物価上昇」と換言可能だろう。実際、 第2の柱による利上げは政治的にもかなり困難だろう。

②当面は海外経済再加速を背景とした踊り場脱却の初期段階であ り、循環的観点から株価の下値は堅いとみられる。70円台への円高は 株価の上値抑制要因となろうが、円高・株安の負の連鎖が回避されて いる限り、当面の円高による金融政策への影響は限定的と考えられる。 ③株高傾向が続く限り、期末に向けた潤沢な資金供給に万全を期すこ とで政治圧力はかわせるのではないか。

④政府・日銀の連携の下、個別審議委員の見解が政策に影響を与 える余地は狭まっており、大勢に影響はないとみられる。後継は学者、 金融機関出身者が有力だろう。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし(2月会合で「0-0.05%」へ) 3)利上げ時期 :2013年以降(2012年後半に「0.10%」へ) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(0.10%) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(0.10%)

12)海外経済・物価情勢:世界生産は夏場にかけて再加速する見込み。 米国では雇用・設備投資に回復モメンタム。ユーロ圏も回復基調。他 方、新興市場国では金融政策正常化に伴う銀行信用鈍化と食料インフ レ加速による実質所得悪化から景気の緩やかな鈍化が徐々に顕在化へ。 中国では、銀行貸出と不動産価格の鈍化が鮮明になり、景気鈍化期待 が強まる見込み。

先進国でも年央にかけて、一時的に、総合CPIでみたインフレ 圧力がじわじわと強まることに。国内経済は輸出・生産循環は足元か ら上向き。既に踊り場を脱却。個人消費・設備投資は堅調。もっとも、 雇用・賃金の回復力は鈍い。・物価情勢は食料品価格には上昇圧力がか かり始めているが、円高効果もあり、上昇は限定的。

13)①景気は踊り場を脱却したが、これは短期の在庫・生産循環の視 点に立つものであり、中期的なインフレ率のパスの変更を迫るもので はない。コアコアCPI前年比のプラスが展望できるのは13年度以降 であり、時間軸にほとんど変化はない。金利形成の変化は時間軸の変 化というよりも、長期金利の上昇につられた動き。

②まず、70円台突入の可能性ありとみる。株価は幾分調整するが、 大崩なし。金融政策については量的緩和拡大なし、不動産投資信託(J -REIT)、指数連動型上場投資信託(ETF)購入額積み増しあり と読む。

③消費税増税論を進展させる目的から、政府が追加金融緩和を迫 るという図式は十分にあり得た。このため前月時点で弊社は2、3月 における追加緩和を予想していた。しかし、世界的に製造業の先行指 標が改善し、景況感が大きく上振れ、株価も堅調を維持しているため、 追加緩和の可能性は大きく低下した。なお、政府は現状、追加金融緩 和を迫るシナリオを持ち合わせていない。

④民主党は昨年、デフレ脱却議連を中心に審議委員人事により深 く関与したい旨表明し、注目された。しかし、現状ではそうした動き はみられておらず、これまでと同様、日銀主導で人選が進んでいるも よう。したがって政策運営に大きな影響は出ない見込み。このまま行 けば女性大学教授、民間金融機関幹部になる公算。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2012年4-6月以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.25%(同) 10)12年9月末 :0.25%(同) 11)12年12月末 :0.25%(同)

12)米国経済はISM製造業景況指数、ISM非製造業景況指数とも に予想を上回る結果となっており、緩やかに景気は回復している。た だバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言にもあった 通り、最大の懸案事項である労働市場の回復は遅れている。雇用の弱 さは、引き続き米国経済の課題だ。足元、失業率は9.0%まで低下し たが、就職を諦め労働市場から退出した人々の存在を考慮すると、必 ずしも前向きな材料とは言えない。

天候要因を考えても、非農業部門の雇用者数の伸びは予想を大き く下回った。民間部門の雇用者は5万人増と、企業は依然として人員 拡充に慎重だ。物価動向については生産者物価指数(PPI)とCP Iの変化を比べると、生産コストの伸びを製品価格に転嫁できていな い。引き続き、労働市場を中心に米国経済には慎重な見方が必要だろ う。物価上昇圧力も当面大きく上昇する可能性は低いとみる。

米国経済は住宅ローン債券の処理等ストック調整をすべて終了し たわけではない。QE2終了後、米国経済をどう回復させていくか依 然不透明要因は残っている。11年はアラブ諸国等の地政学リスクの高 まりも景気動向を左右するファクターとなろう。特に原油価格上昇が 新興国の物価上昇に与えるインパクトは無視できない。欧州のソブリ ンリスクと並んで地政学リスクが短期間で収束するとは考えづらい。

わが国経済は緩やかな景気回復の中にある。足元では踊り場を早 期に脱却できるとの楽観的な見方が有力になりつつある。これを受け て市場のセンチメントは若干ながら強気になり始めている。ただ労働 市場の改善は米国同様に緩慢だ。また夏場の消費者物価指数の基準値 の改定によって消費者物価指数は0.5%程度下押しされるとの見方が 多い。当面すぐにデフレから脱却することは難しいだろう。

13)①当面、時間軸に大きな変更はないとみる。時間軸への影響を判 断するにも時期尚早と考える。コアCPIの下方修正の影響を考慮す ると、来年度中のデフレ脱却は難しいとみるべきだろう。その点、日 銀からの発言は投資家心理に“早期の踊り場脱却”という期待を持た せ、投資家のリスク許容度の回復と、企業の期待収益率の向上を図る 狙いがあるとも考えられる。

②1月末のエジプト情勢の混乱以降、円高圧力は高まっている。一 方で資源国通貨は総じて堅調だ。新興国通貨の変動率は大きいものの、 対ドルでは強含んでいる。その点をふまえると、仮にドル円が一時的 に70円台に突入しても、それが恒常化する可能性は低いだろう。資金 の待避先としての円買い需要はあるものの、経済状況の安定が見込め れば、新興国や資源国の通貨は買われやすいからだ。

株価にとって円高はマイナス材料ではあるものの、わが国の企業 業績の回復を考慮すると、円高の要素だけで株式市場が大きく下落す ることは考えづらい。また新日鉄と住友金属のような業界再編のプロ セスが進むようだと、海外投資家も日本株式の保有割合の引き上げを 考える可能性もある。③須田、野田両委員の退任による金融政策への 影響は大きくはないだろう。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2012年10月に0.1%へ(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.10%(同)

12)生産、景気ウオッチャーに加え、輸出が底入れを示し始めた。景 気底入れ自体はもはやコンセンサス、次は再加速のペースが焦点。け ん引役は設備投資と思われるので、3月短観での設備投資計画で判断 されるだろう。物価が予想以上に改善している。11年度CPIの市場 のコンセンサスが-0.2%であるのに対し、高校授業料無償化・タバコ 税の影響を除いた12月全国CPIがすでに-0.2%である。

原油高だけの影響ではなく、需給ギャップ縮小によるいわゆるコ アコアCPIの改善を市場が過小評価していた可能性が高い。今後数 カ月内で民間コンセンサスが日銀予想(11年度+0.3%)に近い方へさ や寄せしていくだろう。

13)①フォワードレートから推計した日銀の時間軸(25bpへの利上げ までの時間)は現在2.0年。日銀の踊り場脱却示唆が出る前は2.3年 程度だったので、数カ月分前倒しになったイメージ。5年金利でいえ ば10bp弱の金利上昇効果であり、足元の金利上昇をほぼ説明している。 また時間軸2.0年は現在の日銀の景気・物価見通しに照らして違和感 のない長さだと思う。

②円の対ドル上昇が必ずしも市場のリスク回避のバロメータでは なくなっており、また中間決算後、企業決算への為替の悪影響が思っ たほど出ていなかったことから、市場でも「円は対ドルではなく、対 全通貨で見るべき」との認識は広まっているように思う。

円ドル70円台入りに対して株価の反応は以前よりも小さいだろ うし、株価が前回10/5の緩和決定時(9300円程度)を下回ってこな いようであれば、追加金融緩和の引き金になるのかも疑問だ。③日銀 が追加緩和で対応せざるを得なくなるのは、政治混乱が、株価を前回 緩和決定時の水準以下に押し下げるような場合に限られよう。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年10-12月(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)世界的に製造業の堅調さが目立つ。米国のISM製造業・景気指 数が2004年5月以来の水準に上昇したほか、ユーロ圏の製造業PMI も昨年9月を底に上昇している。意外感があるのは、欧州周辺国です ら概して好調なことであり、イタリア、スペイン、アイルランドの製 造業PMIはそれぞれ06年6月、10年4月、00年4月以来の高水準 となった。

製造業の堅調さの背景として、新興国の高い成長に加え、米国の 個人消費(特に耐久財消費)の復調が指摘できる。昨年10-12月の米 個人消費は前期比年率4.4%増と、06年1-3月以来の高い伸びとな った。11年の米国景気は個人消費がより中心的な役割を担いながら、 潜在成長率を上回るペースで拡大する可能性が高い。

ただそれでも、失業率は9%程度で高止まりし、コアインフレは 前年比1-1%台前半にとどまると予想される。このためFRBは金 融緩和の維持に軸足を置き続けるだろう。国内でも足踏み脱却の兆し が一斉に現れ始めた。まず昨年12月の実質輸出は米国向けをけん引役 に大きく増加した。この点は米個人消費の伸び加速、米国でのミニ在 庫調整の一巡と整合的。

またこれと連動する形で12月の鉱工業生産、1、2月の生産予測 指数も上向き基調となっている。従来から増加基調にある中国向けに 加えて、米国向けの輸出が増加に転じたことで、輸出増が国内景気を 押し上げる循環メカニズムが、大方の想定を上回る早いタイミングで 再起動し始めている。11年は国内景気の循環回復の年になると予想さ れる。

こうした中、デフレ圧力も徐々にではあるが弱まっており、高校 授業料の無償化の下押し効果が一巡する4月には、現行コアCPIの 前年比はプラス(0.2%程度)に転じると予想される。ただ、夏場の基 準改定に伴い、再び水面下に沈むだろう。

13)①時間軸にこれといった変化が生じているようには見受けられな い。長めの金利の上昇は内外経済見通しの改善と株式相場の上昇に起 因するものと考えられる。②70円台に突入する場合、株式相場には一 定の悪影響が及ぶだろう。ただ米国を中心とする海外景気の回復によ り本邦輸出に対する所得効果は明確なプラスに転じている。

また企業収益の円高に対する抵抗力も以前に比べれば高まってい る。これらの点を踏まえると、70円台突入すなわち追加緩和とはなら ないように思える。③政治の混乱・低迷は日銀への責任転嫁で糊塗で きるレベルを超えている。また、景気の循環回復が鮮明となる中、日 銀への緩和圧力は説得力を欠くものとなりやすく、昨年のように政治 的な圧力が強まることは想定しにくい。

④政策決定過程において執行部の影響力が極めて大きいとみられ、 両氏の退任が大きな変化をもたらすとは考えにくい。ただ、須田委員 はタカ派バイアス、野田委員はハト派バイアスを有し、執行部とは一 線を画する場面もあったことから、後任次第では執行部の意向に沿っ たコンセンサス形成がより進みやすくなる可能性もあろう。

●バークレイズ・キャピタル証券森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(同) 4)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)生産が10月を底に回復局面に入っていることがあらためて確認さ れており、踊り場脱却の時期は四半期ベースでは1-3月、月次ベー スでは11月ということでほぼ確定したと見てよい。エコカー減税終了 の影響が一巡したこともあるが、より重要なドライバーは米国経済が 昨年10-12月から再び加速し始めていることだろう。

しかし一方で、09年春から10年春まで日本の輸出および生産の 回復をけん引してきた中国を含む新興国が金融引き締めと通貨高の影 響で減速し始めている。このまま先進国と新興国のdivergence(2極 化)が継続するのか、あるいは先進国も回復初期のモメンタムが先行 きで若干鈍化してくるのかが次の大きなポイントになる。

物価面では昨年8月から始まった商品市況の高騰が既に今年に入 って頭打ちとなってきており、今後遅行的にヘッドラインCPIの数 字を押し上げるにしても、それ以上の上振れ要因にはならないだろう。

13)①中短期ゾーンの金利上昇は市場の利上げ時期前倒しを反映して いることは間違いないが、それはあくまでも現在の景気回復モメンタ ムが1年後あるいは1年半後にも継続していることが前提。そこまで 楽観的に見てよいかどうかは現時点では判断し難い。

②特に3月末に向けての80円割れは企業センチメントにも悪影 響を及ぼすので、日銀も何らかの対応を検討はするだろう。しかし、 現在は80円にかなり近い水準でありながらも、株価は比較的底堅い動 きを続けているので、現実に金融緩和に踏み切るまでには至らないだ ろう。

③政治混乱の可能性は現実にあるが、そのような状況下で日銀に 圧力を加えるような指揮系統が政府・与党内でワークするとは思えな い。特に解散総選挙の可能性が高まるようであれば、日銀としても政 治情勢の流動化を想定して一段と動きにくくなるのではないか。

④ハト、タカの違いがほとんど見られなくなっている現在のボー ドメンバーの中では、須田委員は特徴的なポジションを占めてきた。 よほど主張の強い後任委員が選ばれない限り、より単色的なボード構 成になることになろう。後任候補については女性、金融業界出身とい う人選になるのではないか。

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