【M&A潮流】仏サノフィに秘策-オプションでジェンザイム安く買収

フランスの製薬会社サノフィ・アベ ンティスによるバイオ医薬品開発の米ジェンザイムの買収計画は、同 社が実験中の多発性硬化症治療薬「レムトラーダ」の業績に基づくオ プション契約を利用することで、買収コストが最大16億ドル(約1300 億円)抑制される見込みだ。

事情に詳しい関係者が今週、協議が非公開であることを理由に匿 名を条件に語ったところによると、サノフィは現金とこのオプション を使いジェンザイムに1株当たり76-77ドル相当の買収案を提示する 可能性がある。両社はまだ協議中だが、関係者の1人によると、サノ フィは1株当たり現金71ドルを支払うとともに、レムトラーダの売上 高に連動する不確定価額受領権(CVR)を発行したい考えで、1株 に対して支払うCVRを約5-6ドル相当と見積もっている。ジェン ザイム側は、前もって現金で支払われる部分を多くし、CVR部分を 少なくしたい意向。レムトラーダが監督当局の承認を得られなければ、 CVRは無価値になるためだ。

CVRを利用すると、サノフィがジェンザイム買収で支払う現金 部分は総額184億ドルとなる。1株当たりでは71ドルと、ジェンザイ ムの今年の1株利益予想の17.6倍。比較可能なバイオテクノロジー企 業の買収時の中央値は36.6倍で、これに比べると52%割安となる。サ ノフィのクリス・ヴィーバッハー最高経営責任者(CEO)は製品の 特許切れや3年にわたる減益決算に対応し、2年前から買収に80億ド ル以上投じているが、同社の株価は依然、欧州のヘルスケア関連企業 に出遅れている。

ホランドの会長として40億ドル強の運用に携わるマイケル・ホラ ンド氏はCVRの利用について、「サノフィの独創的な戦術だ」と評価。 「この薬品がうまくいかなかった場合に備え、サノフィは不確実性か ら身を守ることができる。全てが順調にいけば誰もが勝者になれる」 と指摘した。

関係者によると、ジェンザイム買収は来週初めにも発表される可 能性がある。ジェンザイムとサノフィの広報担当者はいずれもコメン トを控えている。

セルジーン

企業買収で薬品の業績に連動するオプションを利用するのは、サ ノフィが初めてではない。米セルジーンによる昨年6月のアブラクシ ス・バイオサイエンス買収では、アブラクシスのがん治療薬「アブラ キサン」の規制上のマイルストーンの達成度合いに連動したCVRが 用いられ、アブラクシス1株当たり現金58ドルと取引可能なCVR1 単位、セルジーンの普通株0.2617株が支払われた。

このCVRは同年10月に4ドルで取引が始まったが、マイルスト ーンの1つであるアブラキサンの研究目標が達成されていないとセル ジーンが発表した今年1月10日には42%急落した。ファースト・エン パイア・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、マイケ ル・オブチョウスキ氏はCVRについて、「医薬品が最大限の可能性を 引き出せないリスクの一部を相殺できる」と語った。

サノフィの新たな買収提案では、現金部分は昨年8月29日の当初 案の1株当たり69ドルから2ドルの引き上げにとどまり、同社はCV Rの活用で現金での前払いコストを13億-16億ドル節減できるとみ られる。関係者の1人によると、CVRによる支払いはデューデリジ ェンス(資産査定)次第で増減する。ジェンザイムは10月、利益成長 見通しを考慮すれば自社株1株当たり89ドルの価値があると主張して いた。

M&A関連で3日に発表されたのは、新日本製鉄と住友金属工業 による合併計画や、米産金会社最大手ニューモント・マイニングによ るカナダのフロンティア・ゴールドの買収19億9000万カナダ・ドル (純債務含む)など。新日鉄と住友金属の合併が実現すれば粗鋼生産 世界2位の企業が誕生する。ブルームバーグ・データによると、住友 金属の時価総額と純債務に基づく案件の規模は約2兆円。前日の発表 では、具体的な条件などは明らかにしなかった。

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