柳沢氏:社保財源に消費税10%超必要、与謝野氏に協力(Update2)

柳沢伯夫城西国際大学学長(元金 融担当相)はブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、財政 健全化を進めた上で、社会保障の安定財源を確保するためには年金制 度で現行の社会保険方式を維持するとしても消費税率(現行5%)を 10%以上に引き上げる必要があるとの認識を明らかにした。

インタビューは1日行った。柳沢氏は自民党衆院議員時代に与謝 野馨社会保障・税一体改革担当相(経済財政担当相)とともに消費税 増税論議を主導。柳沢氏は与謝野氏の要請を受ける形で、菅直人政権 の設置した「社会保障改革に関する集中検討会議」に有識者委員とし て名前を連ねており、元自民党の「財政再建派」の重鎮2人が民主党 政権下での持論実現にタッグを組む形となった。

与謝野、柳沢両氏が参加した自民党財政改革研究会は2008年6 月、消費税を「社会保障税」(仮称)に改組した上で、税率を現行の 5%から少なくとも10%程度にまで引き上げる必要性を訴えた提言 を発表していた。

柳沢氏は税率について「それは当時の財政事情を前提にして10% ということを打ち出した。その当時とリーマン・ショック後の財政事 情は激変した」と指摘。今回の議論では「新しい状況に基づいた議論 をしなければいけない。あの当時の10%ということで済むわけがな い」と述べ、さらなる引き上げが必要になる可能性に言及した。

財務省の資料によると、11年度予算案の社会保障関係費は28兆 7079 憶円で一般会計歳出全体(92兆4116億円)の31.1%、地方交付 税交付金などを除いた政府の支出(54兆0780億円)の53.1%を占め ている。社会保障関係費の総額は2000年度と比べ60%以上増加して いる。

大連立

政治評論家の浅川博忠氏は柳沢氏の起用について「与謝野氏の入 閣に続いて瞬間的、表面的には自民党の神経を逆なでする人事」とし ながらも、「これからの流れ次第で大連立の呼び水になる可能性があ る。自民党も今国会で解散に追い込めなければ与党に戻りたいという 話が出てくるかもしれない」との見方を示した。

財政改革研究会の提言は基礎年金に関しては社会保険方式の維 持を前提としており、「基礎年金を全額税方式とする等の年金制度の 改革を行う場合には別途、そのための財源が必要となる」と指摘して いる。民主党は基礎年金部分を全額税方式の「最低保障年金」に衣替 えする案をこれまで主張しているが、必要な消費税率の引き上げ幅は 明確にしていない。

枝野幸男官房長官は2日午後の定例会見で、年金制度改革につい て「従来の民主党の考え方がベストだとは思っているが、決して無謬 (むびゅう)性を持ったものだとは思っていない」と明言。今後の議 論について「国民的な幅広い合意を得て改革を進めるということが何 よりも一番大事なことなので、さまざまな意見には真摯(しんし)に 耳を傾けながらあるべき年金の姿を目指したい」との姿勢を示した。

全額税方式

社会保障改革に関し、菅首相は4月に政府案をまとまる考えを明 らかにしている。今後の検討会議の議論では社会保険方式の維持か、 全額税方式に転換するかが大きな焦点となっているが、柳沢氏は「い ろいろ新しい状況に基づいた説明を聞いてからよく考えようと思っ ている」と述べるにとどめた。

政府の資料によると、柳沢氏が参加する「社会保障改革に関する 集中検討会議」は「社会保障・税一体改革の検討を集中的に行うとと もに、国民的な議論をオープンに進めていく」ために設置。菅首相を 議長に、社会保障・税一体改革を担当する与謝野馨氏や野田佳彦財務 相ら関係閣僚、与党幹部、成田豊電通名誉相談役、渡辺捷昭トヨタ自 動車副会長、古賀伸明連合会長ら有識者で構成する。

待ったなし

柳沢氏は日本の財政をめぐる状況について「財政に対する世界の 見る目、なかんずく市場の見る目ということから、『待ったなし』だ と思っている。財政再建に具体的な手を打っていくのは。どの政権と かそういうことと関係ない」と危機感を示した。

与謝野氏の入閣について「今回、国民の期待を担ってこういう立 場に立った」と評価した上で、自らの委員就任も「重大な問題なので お手伝いする。これまでのいきさつから今回のことをお引き受けした」 として与謝野氏に協力していく姿勢を鮮明にした。

消費税を含む税制抜本改革に関し、「11年度までに必要な法制上 の措置を講ずる」と明記した09年度の税制改正法附則104条の規定 について「今度われわれがしくじって、先送りということになったら 日本の政府の当事者能力を疑われてしまう。市場のリアクションが心 配される」と述べ、その実現を市場が注視しているとの見方を示した。

柳沢氏は、09年8月の衆院選で落選し、その後、政界を引退し た。議員時代は与謝野氏が小泉純一郎内閣で党政調会長を務めた際、 政調会長代理として支えたほか、その後も党税制調査会や財政改革研 究会などの場を通じ、経済財政政策の立案で同氏と連携した。与謝野 氏が08年の総裁選に出馬した際、選挙対策本部の中心メンバーの1 人として同氏を支援した。

金融危機

日本が金融危機にあった98年から99年にかけ、金融再生担当相 (金融再生委員長)として旧日本長期信用銀行の破たん処理などにあ たった。自らのキャリアについて「日本人の中では市場の厳しさに直 面した最も切実な経験をした」と振り返った。旧大蔵省出身で厚生労 働相なども歴任した。

菅首相は1日夕、柳沢氏を含む検討会議メンバーの人選について 「国民的な議論にしていきたい。そのために各界の皆さんに参加して もらった。国民的な議論をするとの目標の中で、議論の中身を聞いて もらって評価してもらいたい」と指摘した。官邸で記者団に語った。

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