人民元めぐる「通貨高競争」も、アジアは物価抑制で混乱回避-野村証

野村証券金融経済研究所の木内登 英チーフエコノミストによると、中東での大規模なデモや政変の一因に もなっている資源価格の高騰を受け、中国などのアジア新興国は輸出に 有利な通貨安政策から、国内経済や社会の安定に必要なインフレ抑制を 図るための「通貨高競争」に転じる可能性がある。アジア通貨の上昇は 日本の景気回復やデフレ脱却を後押しするという。

木内氏は28日午後の投資家向け説明会で、外圧には屈しない中国 も「国内消費や社会の安定に必要なインフレ抑制のためなら、通貨の切 り上げ傾向を強めていくのではないか」と述べた。中国が人民元の上昇 ペースを速めると「インフレの輸出」になるので、食料品などの価格高 騰に悩む近隣諸国には「非常に迷惑な話」だと指摘。インフレを中国に 「押し戻すべく、自国通貨を上げていく」と予想した。

中国は2005年7月、人民元相場の対ドル連動(ペッグ)制を廃止。 元高容認に転じたが、08年7月以降は1ドル=6.8元台に抑制。世界 的な金融危機の中、対ドル相場を事実上固定していた。昨年6月には人 民元相場の弾力性を高めると発表。足元までの上昇率は、約7カ月間で

3.6%前後。今月24日には一時6.5808元と、公定・市場レートが統 合された1993年末以来の最高値をつけた。

野村証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジストは同説明会で、中国 が人民元を30%切り上げると、貿易収支がほぼ均衡すると推計。当局 が容認する上昇率は昨年1年間の3.2%から「今年は6%程度」に高ま り、年末には6.22元に達すると予想した。ブルームバーグの調査によ ると、市場関係者は今年末に、28日の6.5860元から4.3%上昇した

6.30元に達すると予測している。

食料品高騰、政治的混乱

商品市況を示すロイター・ジェフリーズCRB指数は19日に一時

336.29と08年10月以来の高値をつけ、28日も同水準に迫った。国 連食糧農業機関(FAO)によると、昨年12月の食料価格指数は前年 比25%上昇。08年6月を上回り、過去最高を更新した。

チュニジアでは食料品の値上がりや失業、汚職などに対する反政府 デモが拡大。ベンアリ大統領(当時)が亡命し、17日に暫定政権が樹 立された。エジプトでも28日、ムバラク大統領の退陣を求める大規模 なデモ隊と警察当局が全土にわたって衝突。内閣は翌日、総辞職した。 高い失業率と生活費高騰に直面するアルジェリアやモロッコ、イエメン などでも、抗議活動が頻発している。

中国の消費者物価上昇率は11月に前年比5.1%と08年7月以来 の高さ。12月も4.6%だった。人民元相場を市場の実勢より低く抑え るための元売り・外貨買い介入などで、世界最大の外貨準備高は昨年末 に前年より18.7%増えた半面、マネーサプライ(M2)も19.7%増 と7カ月ぶりの高い伸びを示した。

インフレ、利上げ

中国人民銀行(中央銀行)は14日までの約2カ月半に市中銀行の 預金準備率を4回引き上げ、昨年10月と12月には利上げも実施。政 策金利の1年物貸出金利は5.81%だが、同預金金利は2.75%と、な おインフレ率を下回っている。タイや韓国、インドも今月利上げした 。シンガポールとベトナムは約2年ぶりの高インフレに直面している。

田中氏は「高成長なのに通貨を不当に安く抑えると、通常ならイン フレになる」が、中国は農村の余剰労働力と供給能力の増強により、こ れまでは本格的なインフレに見舞われなかったと指摘。ただ、今後は資 源高で利益率が下がってくるため、インフレ率が「今年、来年と4- 5%に」徐々に高まっていくと話した。

「インフレの芽」が出てきたのに通貨安政策を続けるとインフレが 加速しかねないため、通貨高を「ある程度、容認するという流れになる 」と予想。「政策当局は通貨と国内経済、どちらの安定をとるか。国内 経済の安定だ」と強調した。

オバマ米大統領は19日、米中首脳会談後の共同会見で、人民元が 「今も過小評価」されており「一層の調整が必要だ」と強調した。ガイ トナー米財務長官は12日の講演で「大幅に過小評価されている」人民 元を切り上げる必要があると指摘。28日にはスイスのダボスで、一部 の新興市場国は自国通貨と「ドルとの連動性を弱めれば」インフレとの 闘いが容易になると示唆した。

一方、中国の胡錦濤国家主席は19日、米紙ウォールストリート・ ジャーナル(WSJ)などの質問書に対し、インフレは「為替政策を決 定する主要な要因にはほとんどなり得ない」と回答した。

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