新興国引き締めで今後の世界景気に不透明感、日本の長期金利は低下へ

ブラジルやインドなど新興国の金 融引き締めをきっかけに、世界経済の先行き不透明感が強まってきて いる。景気回復期待を反映して買われてきた株式や商品などのリスク 資産から安全資産の債券に資金シフトが起きて、日本の長期金利が低 下するとの見方が出ている。

DIAMアセットマネジメントの山崎信人エグゼクティブファン ドマネジャーは、世界経済のエンジンでもある中国をはじめとする新 興国が金融引き締めモードに入り、景気の先行きに悪影響が及ぶリス クが意識され始めたと指摘。その上で、「各国市場でこれまで通り商品 や株式を買い増すべきかどうか迷いがうかがえる」とも話す。

みずほ証券の三浦哲也チーフマーケットアナリストは、新興国で はインフレ抑制のために成長率を抑えにかかっており、今後の世界経 済の足かせとなってくる可能性が大きいと指摘。ブラジルやインドの 株安はこうした懸念に関するシグナルであり、新興国経済に依存する 日本にも悪影響が及ぶおそれがあるとみる。

ブルームバーグの予測調査によると、今月に入って見通しを示し たアナリスト5人の今年3月末時点の長期金利の平均予想は1.17% となった。この日は1.2%台前半で取引されており、1.1%台は2週間 ぶり低水準。

新興国ではインフレ懸念が高まり、ブラジル中央銀行が19日に政 策金利を引き上げたほか、25日にはインド準備銀行が政策金利を2年 ぶりの高水準へと引き上げた。このほか、消費者物価指数の上昇基調 が続く中国では、2月の春節(旧正月)の期間にも昨年10月、12月 に続いて利上げが実施される可能性が高まっている。

国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通し(WEO)で、 新興国に対してインフレリスクが高まる中で資産価格の上昇を厳重に 監視するよう要請した。

新興国で株安基調

ブラジルやインドの株価指数が前週以降に水準を下げたほか、中 国の株式相場も一時は昨年9月30日以来の安値圏に達するなど、新興 国市場においては株安基調が続いている。一方、商品19銘柄で構成す るロイター・ジェフリーズCRB指数は、19日の日中取引で336.29 まで上昇して2008年10月以来の高値を更新したが、その後は330を 挟む水準で上値の重さが目立ってきた。

新興国の株高基調に陰りが出てくると、日本の長期金利の押し下 げ要因になる。JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジス トは、世界的な株高をけん引した新興国の株式市場が不安定になれば、 堅調地合いが続く米国株相場にも高値警戒感が広がると指摘。その場 合、国内市場も株安を通じた債券買いが膨らんで、長期金利は1.3% ではなく1.1%方向に水準を下げるのではないかとみる。

DIAMアセットマネジメントの山崎氏も、米国の緩やかな景気 回復期待だけを手掛かりとした金利上昇には限界があると言い、今後、 各国の株高や商品高が一段落する局面では国内債に需要が見込まれ、 10年債利回りが1.2%を下回るとの見方を示している。

一方、27日夕に米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S &P)が日本国債の格下げを発表したことについて、山崎氏は、「財政 改善に向けた政治的な道筋が見えないといった見地からは、日本国債 の格下げは中長期的な売り材料となりうるが、足元の市場への影響と なれば心配する必要はない」と述べた。

長期金利の指標となる新発10年国債利回り利回りは、昨年12月 30日に1.11%まで低下した後、世界景気の回復期待を背景に上昇に転 じ、前週には約1カ月ぶり高値圏となる1.26%まで上昇する場面があ った。しかし、過度な金利上昇懸念は出ておらず、その後は1.2%台 前半を中心にした推移が続いている。

半面、内外の株価調整が一時的な動きにとどまるようだと、国内 の金利低下余地が限定される可能性もある。みずほインベスターズ証 券の落合昂二チーフマーケットエコノミストは、新興国で利上げがあ っても世界的にみて景気上向きとの前提を崩す材料にはならず、足元 の株安も上昇トレンドの中での調整にすぎないと言い、国内債にとっ て積極的な買い材料とはなりにくいと話した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE