カーネルおじさんは毛沢東より有名-ヤム・KFCの中国市場開拓物語

北京にある毛沢東元国家主席の墓 地から通りを隔ててすぐそばにある天安門広場の外れで、何颖颖さん (21)はフライドチキンを頬張りながら、温和な表情の顔が描かれた 看板をじっと見上げた。「私たちはこの人が大好きなの」。

何さんは北京にある首都経済貿易大学の学生。彼女が言う「この 人」とは、天安門広場に肖像画が掲げられている国のシンボル的存在、 毛元主席のことではない。米ケンタッキー・フライド・チキン(KF C)のレストランの看板に描かれた白ひげのおじさん、カーネル・ハ ーランド・サンダースのことだ。ここは何さんがお気に入りのファス トフードレストランだ。ブルームバーグ・マーケッツ誌3月号が報じ た。

本拠地の米国市場で、KFCは困難な状況に陥っている。ファス トフード最大手、米マクドナルドのほか、傘下のフランチャイズ店と の間でも、顧客獲得合戦でしのぎを削っており、利益減少に歯止めを かけるのに懸命だ。

一方、中国では、KFCはマクドナルドや中国国内の競合企業よ り優位に立ち、多くの都市でカーネル・サンダースの看板が毛元主席 の肖像画よりずっとよく見掛けるようになった。このような成功は、 これまで外国企業がつまずき、壁にぶつかることの多かった中国では 特筆すべきことだ。

ご当地の味覚にアピール

KFCの親会社米ヤム・ブランズの成功の秘訣(ひけつ)は、中 国国内での資源の利用方法にある。それは、運営チームにもメニュー についても言えることだ。中国で24年間操業しているヤムは、事業 拡張を進める上で中国人マネジャーを採用。国内企業との協力関係を 築き、マネジャーの専門知識を活用して国内の味覚にアピールするご 当地メニューをずらりとそろえた。顧客は、おなじみのフライドチキ ンのほか、豚肉やキノコ、卵入りのかゆも購入することができる。

ヤムは2010年の予想営業利益20億ドル(約1640億円)のうち 36%は中国で展開するレストラン3700店からの収益によるものと推 計。同社が米国で展開するタコ・ベルやピザ・ハット、KFC、ロン グ・ジョン・シルバーズ、A&Wなど計1万9000店の利益の総額を 初めて上回ることになる。ヤムは18日、中国に注力する戦略の一環 として、ロング・ジョン・シルバーズとA&Wを売却する方針を発表 した。

ヤムの中国事業の利益は昨年7-9月(第3四半期)に23%増 加。米国では2%の減益だった。ダンキンドーナツや、電子商取引サ イトを運営するeベイなどの欧米企業が市場参入に苦心する中国で、 ヤムは18時間に1軒の割合で新店舗をオープンしている。英市場調 査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、中国のファス トフードチェーンにおけるヤムの市場シェアは40%と、マクドナル ドの16%を上回っている。

成功とリスク

1987年に中国で初めてレストランを開店したヤムは現在、KF C3200店、ピザ・ハット500店を展開。店舗は熱帯の島、海南島か ら北朝鮮との国境付近、古代シルクロードの砂漠にあるオアシスなど 中国国内650都市に広がっている。KFCは店舗数を約5倍の2万店 に増やすことを目標としている。

中国の米商工会議所の会頭を務め、05年に出版された「One Billion Customers: Lessons From the Front Lines of Doing Businessin China」(邦題:「中国ビジネス開花記」)の著者、ジェー ムズ・マグレガー氏は「ヤムは中国で最も成功した外国企業となって いる」と指摘。「いち早く進出し、製品を改良した。積極的に事業を 拡張し中国人マネジャーに実際の決定権を与えた」と分析する。

ヤムの中国でのサクセスストーリーにはリスクも伴う。ヘッジフ ァンドマネジャーのヒュー・ヘンドリー氏やジム・チャノス氏ら弱気 派の投資家は、中国の資産バブルが崩壊し、人件費や食料価格の高騰 が企業を直撃すれば、同国の成長率は半分の水準に減速する可能性が あるとみている。中国は30年以上にわたって平均10%の経済成長を 遂げている。

ヤムの元バイスプレジデントで欧州のプライベートエクイティ (PE、未公開株)投資会社インベストインダストリアル・アドバイ ザーズの中国部門の会長、ワレン・リュー氏は、ヤムの世界の売上高 と利ざやのうち中国が4年以内に半分以上を占めると予想している。

リュー氏は「その市場が財務面から見てどんなに魅力的でも、1 つの市場に過度に依存することを懸念している。ヤムの中国事業が不 振に陥れば株価に大きな打撃を与えるだろう」と予想する。

さらに2億人が顧客に

米ケンタッキー州ルイビル在勤のヤムのデービッド・ノバック会 長兼最高経営責任者(CEO)は、そのような事態にはならないと語 る。米モルガン・スタンレーとユーロモニターの推計を引用し、中国 経済は向こう10年間に3倍に拡大し、さらに2億人の中国人がファ ストフードの消費層に加わるとみている。

ノバック氏(58)は電子メールで「21世紀の外食産業にとって 中国は絶好の事業機会になっている」との見方を示した。

ヤム・ブランズが米飲料・食品メーカーのペプシコから分社化し た1997年以降、今月25日までにヤムの株価は6倍以上に上昇した。 この間のS&P500種株価指数の上昇率は37%だ。

マーケティング戦略情報会社、中国市場調査グループの高齢化問 題担当ディレクター、ショーン・ライン氏(上海在勤)は「中国の消 費関連株への投資に気軽に一口乗りたいと思うなら、ヤムは格好の投 資先だ」と語る。

200万ドル

毛元主席の墓地を見渡すKFCで、何さんはフライドチキンの最 後の一口を平らげ、「好吃」(ハオチ=おいしい)と言うと、もう一度 カーネルおじさんの看板をちらりと見た。

「彼は本当にたった200万ドルで事業を売ったの?」と信じられ ないという表情をし、「きっと後悔したでしょうね」とつぶやいた。

サンダースは1980年にこの世を去った。自身が考案した米南部 の料理が数百万人の中国人を引き付ける日が来ることなど想像もし なかったことだろう。それも地元のビジネスのノウハウを活用するK FCの半ば公然となったレシピと欧米風の魅力、スパイスの効いた米 南部料理の味のおかげだ。

-- With assistance from Michael Wei in Beijing, Mark Lee and Frank Longid in Hong Kong, Andrew M. Harris in Chicago and Phil Milford in Wilmington, Delaware. Editors: David Ellis, Jonathan Neumann.

参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 堀江 広美 Hiromi Horie +81-3-3201-8913

hhorie@bloomberg.net

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