経常赤字化なら「10兆円単位」の国債売りで金利急騰も-日興コーデ

日興コーディアル証券の末沢豪謙 金融市場調査部長によると、累積赤字が増え続ける日本の財政は「少 なくとも2、3年は大丈夫」だが、少子高齢化や企業の海外進出で経 常黒字が徐々に減少し「5年後以降」は厳しさを増す。経常収支が赤 字化すれば、海外勢による国債の売り仕掛けなどで大幅な金利上昇(価 格は下落)に見舞われる恐れもあるという。

末沢氏は24日の記者説明会で、日本経済の貯蓄超過を示す経常収 支が黒字で、国債の大半を国内勢が保有する下で「すぐに金利が上が ることはない」と指摘。ただ「2015-25年に向けては、経常収支がど こかで赤字化するリスクは相当強い」とも述べ「ファイナンスを海外 に頼った段階で、相当大きな金利上昇がある」と予想した。

海外のヘッジファンド勢は日本の経常収支を注視しており、赤字 化したら巨額の累積債務に焦点を当てて「ドーンと日本国債売りをや る」シナリオを練っていると、末沢氏は分析。その際は「1兆、2兆 ではなく、10兆円単位」の売り仕掛けになる公算が大きいと語った。

財務省によると、国債・借入金・政府短期証券を合わせた国の債 務残高は昨年9月末に過去最大の908兆8617億円。公的債務残高は国 内総生産(GDP)の約1.9倍と主要国で最悪だ。24日からの通常国 会で審議される11年度の一般会計予算案を前提とした国債発行総額 は169兆6000億円と3年連続、うち機関投資家などに販売する市中消 化額は144兆9000億円と2年連続で、それぞれ過去最大となる。新規 国債発行額も約44兆3000億円に及ぶ。

国債依存、もはや困難

野田佳彦財務相は24日の衆院本会議で、菅直人内閣の予算案提出 に伴う財政演説を行い、国債発行に過度に依存した財政運営は「もは や困難な状況にある」との認識を示した。

ただ、長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りは1990年 8月の8.685%から、国内の金融危機を経たにもかかわらず、03年6 月には0.430%まで低下(価格は上昇)。世界的な金融危機後の円高・ 株安や日本銀行による金融緩和を背景に、昨年10月にも0.820%と約 7年3カ月ぶりの低水準をつけた。

日本銀行の統計によると、財政赤字の国内消化力の目安となる家 計の純金融資産は9月末時点で1076兆5603億円に上る。国債の約

94.5%は国内勢が保有。累積赤字は主要国で最悪だが国債利回りは最 低という構図を支えている。

末沢氏は経常黒字の維持とともに、家計の純金融資産残高を長期 債務残高が超えないことも重要だと語った。この差額は約200兆円あ るが「経済・財政が悪いと大体5年で食いつぶす」と指摘。いわゆる 「霞が関埋蔵金」に頼れるのも「再来年度まで」なので「3年後くら いをめどに何らかの体制」を作らないと、債務残高の累増に歯止めが かからなくなる「発散的な状況に変化する恐れがある」と強調した。

消費税増税は15年か

財政再建に不可避とされる消費税率引き上げについては、総選挙 を経ないと実施は出来ないため「最終的には15年4月」になると予想。 総選挙は「そう簡単には行われない」うえ、食料品などへの軽減税率 やインボイス(伝票)方式の導入も必要となるため、枠組み決着から 「周知期間として最低1年はかかる」と説明した。

菅直人首相は24日の衆院本会議で施政方針演説を行い、社会保 障・税一体改革の進め方について「今年6月までに社会保障改革の全 体像とともに、必要な財源を確保するための消費税を含む抜本税制改 革の基本方針を示す」と訴えた。

末沢氏は、今年の債券相場の「テーマは過剰流動性だ」と述べた。 主要国の中央銀行が前年に進めた金融緩和がバブルにつながった99 年と04年型の展開になると分析。カネ余りがリスク資産の値上がりや 景況感の改善につながり、夏から年末にかけて「金利には上昇圧力が かかる」と予想した。10-12月期には10年債利回りが1.75%と、08 年6月以来の高水準をつける場面があるという。

10年債利回りは昨年11月以降、米国の量的緩和政策や減税を受 けた米インフレ懸念や景気回復期待を背景に上昇。12月15日には一 時、約7カ月ぶりに1.295%、今月19日にも1.260%をつけた。ブル ームバーグの調査によると、市場関係者は年末の10年債利回りを

1.24%と予測している。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE