米ゴールドマンを悩ます憂鬱-資産運用成績低下で富裕層が離反の動き

(原文は「ブルームバーグ・マーケッツ」誌3月号に掲載)

【記者:Richard Teitelbaum】

1月25日(ブルームバーグ):米IT(情報技術)企業シリコング ラフィックスやネットスケープ・コミュニケーションズの創業者であ るジム・クラーク氏は1月2日、米フロリダ州パームビーチの自宅で、 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手、米フェ ースブック未公開株への投資を勧誘する米投資銀行ゴールドマン・サ ックス・グループからの1通の電子メールを受け取った。

ゴールドマンは、資産運用部門ゴールドマン・サックス・アセッ ト・マネジメント(GSAM)が管理・運営するファンドを通じて、 フェースブックへの投資の機会を他の顧客にも同時に提供しようとし ていた。見込み投資家に送られた一連の書類によれば、ゴールドマン の顧客は4%の手数料に加えて、5%の利益配分を同社に支払うこと が条件となっていた。ブルームバーグ・マーケッツ誌3月号が報じて いる。

クラーク氏はこの勧誘を拒否した。ゴールドマンの誤ったアドバ イスや運用成績の低迷に腹を立て、成績の良かったGSAMのグロー バル・アルファ・ヘッジファンドを含めて、約4億ドル(約330億円) の投資の大半を2009年6月に引き揚げていた同氏は、今回の勧誘で一 層いらだちを募らせた。

数カ月前により安い価格で、しかも厄介な利益配分の条件を課さ れることもなく、フェースブック株を他社から取得していたクラーク 氏は「妥当な投資とは思えない。顧客から金を稼ぐための新たな手法 にすぎないのではないか」と不快感を隠さない。

平均以下のリターン

GSAMに納得がいかないのはクラーク氏だけではない。GSA Mは、昨年12月時点でゴールドマンが管理する資産8400億ドル相当 の大半の運用を手掛けているが、投資家に平均以下のリターンしかも たらしていないことが裏付けられており、ロイド・ブランクファイン 会長兼最高経営責任者(CEO)にとって頭の痛い状態が続いている。

ブランクファインCEO(56)は、活力を失ったGSAMてこ入 れのために経営幹部を入れ替わり立ち替わり送り込み、現在のエド・ フォースト、ティモシー・オニール両氏は、過去8年間で8人目と9 人目の運営責任者となる。

昨年にはGSAMの運用成績に満足せず、投資リターンに懸念を 抱いたカリフォルニア州とネバダ州の年金基金が合わせて9億ドル余 りの資金を引き揚げた。しかし、中核のトレーディング部門の業績が 落ち込む中で、ゴールドマンにとってGSAMの重要性はますます高 まっている。

ゴールドマンの債券・通貨・商品(FICC)トレーディング部 門の収入は昨年、前年比37%急減した。銀行による自己勘定取引を厳 しく制限する新たな規制が実施に移された場合、自己勘定投資はさら に打撃を受ける恐れがある。同社からこの件に関して、ブランクファ インCEOや他の経営幹部のコメントは得られていない。

失われたかつての輝き

アトランタに拠点を置く調査会社イーベストメント・アライアン スによれば、機関投資家や富裕層個人顧客ごとの複数の勘定を通じて GSAMが保有する約3000億ドル相当の資産について、昨年9月末ま での5年間追跡調査した結果、資産カテゴリーの73.8%でゴールドマ ンのリターンが同業他社を下回った。

一方、調査会社モーニングスター(シカゴ)が昨年末までの3年、 5年、10年間について、ゴールドマンの338の資産クラスの投資信託 を調べたところでは、米国株分散投資や外国株、課税対象債を含むす べての分類で、他の同種の投信の平均リターンに届かなかった。モー ニングスターの投信アナリスト、カリン・アンダーソン氏は「幾つか の例外はあるが、これらの投信は慢性的なアンダーパフォマーだ」と 指摘している。

番付16位

かつて高い評価を得ていたGSAMのヘッジファンドも精彩を失 っている。ブルームバーグ・マーケッツ誌が発表する毎年恒例のヘッ ジファンド番付によれば、ゴールドマンの昨年9月末時点のヘッジフ ァンド資産は195億ドルで、16位にとどまった。GSAMが世界最大 のヘッジファンド運用会社だった06年末のピーク(295億ドル)との 比較では34%もの減少だ。

ゴールドマンのヘッジファンドや他の投資目的会社が稼ぐ利益の 20%に相当する成功報酬は昨年1-9月の合計が6500万ドルにとど まり、ピークだった06年度の9億6200万ドルから急減した。

それでも投資家らはこれまで、GSAMに運用を任せ続けただけ でなく、GSAMに委ねる資産を2000年以降、数百億ドル相当も増や した。ゴールマン・サックスの名前が持つ威光がその理由だ。投資運 用会社ニュー・アムステルダム・パートナーズの創業者、ミシェル・ クレイマン氏は「多くの富裕層の顧客が私はゴールドマンに口座を持 っている、などと言いたがるものだ」と説明する。同社は昨年9月30 日時点で26万7235株のゴールドマン株を保有している。

顧客の期待

GSAMの顧客は、ゴールドマンの幅広い取引関係と取引形成の ネットワークから恩恵を受けることができる。フェースブックはその 最近の一例にすぎない。

金融株を専門に手掛ける資産運用会社メンドン・キャピタル・ア ドバイザーズの創業者、アントン・シュッツ氏は「大きな注目を集め る最新の投資先への早期アクセスが可能になれば、他の資産の運用リ ターンの低迷を吸収することが容易になる」と説明。「例えば次のグー グルの新規株式公開(IPO)に一枚加わることができるとすれば、 そんなに泣き言を言わなくなるだろう」と話す。

フェースブック株の投資案件を通じて、ゴールドマンのフランチ ャイズの営業力はその輝きの一部が失われた。同社はGSAM関連の ファンドを通じて、クラーク氏のような富裕層の顧客に最大15億ドル 相当のフェースブック株を割り当てることを計画。しかし、今回のよ うな割り当てを投資会社が広く一般に宣伝することを米国の証券取引 法が禁じており、詳細な報道が行われている状況を踏まえて、1月17 日に米国の投資家への割り当てを中止すると発表した。

待ってくれない

ブランクファインCEOは、資産運用部門の新たな責任者らの顔 触れを誇示することで、投資運用の成績低迷という問題の解決を図ろ うとしている。また、伝統的に独立していたGSAM部門の報酬を本 体のパフォーマンスに連動させることで、本社がより強い縛りをかけ ることを目指す。

このうち、どんな変化が起ころうとも、資産運用担当者の活力、 運用成績そのものが早期に立ち直らない限り、大勢は変わらないだろ う。「これらのヘッジファンドは必要なく、ゴールドマン・サックスの 運用担当者に用はないという結論に達した」と話すジム・クラーク氏 がその良い例だ。クラーク氏は立ち直りを待つことなく、ほぼすべて の資金を09年にモルガン・スタンレーに移している。

-- With assistance from Christine Harper in New York. Editors: Michael Serrill, Robert Dieterich

参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 内田良治 Ryoji Uchida +81-3-3201-3396 ruchida2@bloomberg.net Editor:Yoshito Okubo 記事に関する記者への問い合わせ先: Richard Teitelbaum at 1-212-617-6863 or rteitelbaum1@bloomberg.net. Christine Harper in New York. 記事に関するエディターへの問い合わせ先: Michael Serrill at 1-212-617-6767 or mserrill@bloomberg.net.

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