【コラム】ダボス人の合言葉は「ルックイースト」-M・ギルバート

「銀行の反省と謝罪の時期があっ た。その時期は終わらなければならない」。

これは英銀バークレイズのロバート・ダイアモンド最高経営責任 者(CEO)の言葉だ。同CEOは11日に英議会で証言し、「非難合 戦」が金融業界の手を縛る状況は十分に長く続いたと論じた。

銀行の強い自省はどうも、私たちの大半がまばたきした間に起こ り、気付かれずに過ぎてしまったらしい。ダイアモンド氏はうるさい 監督当局にリスクテークの邪魔をされることのない通常通りの状態 に戻りたいのだ。

さて、ダイアモンド氏ら実力者たちが参加するダボス会議、つま り世界経済フォーラム(WEF)年次総会の今年のテーマは「ニュー リアリティーで共有される規範」だが、この表題は不適切だ。金融危 機後の現実は確かにニューリアリティーだが、危機後に生まれた基準 は「ダボス人」たちによって共有されてはいない。

今年のダボスの議題は銀行業界がつくり出した経済の危うさと いう背景を無視してはいないものの、主催者側が準備した質問はさし て難しいものにも見えない。

作業部会の1つは国際金融システムが「軌道に戻ったか」を協議 する。ゴールドマン・サックス・グループのゲーリー・コーン最高執 行責任者(COO)らが参加するパネルが、金融業界は依然として、 透明性、ボーナス文化などの点で、危機再発を防ぐ正しい方向には進 んでいないと結論付けるとは考えにくい。

典型的なダボス人

その他の議題はサイバーセキュリティー、環境、雇用の展望など だ。

ダイアモンド氏は世界経済見通しを検討するパネルに参加する。 同氏は典型的な「ダボス人」だ。大手英銀を率いる米国人の同氏は、 信用逼迫(ひっぱく)の嵐の中心にいた。

バークレイズの広報担当者、ガイルズ・クルート氏は、ダイアモ ンドCEOの発言について、「銀行の役割は企業と家計を支えること だとの認識を明確にしたし、バークレイズはこれに沿って営業してい る」と説明に努めた。しかしながら、ダイアモンド氏が2年分のボー ナスを辞退していたことを知れば、反省を終わらせたいと願う同氏の 気持ちがはるかに理解しやすくなる。

26日に始まるダボス会議での話し合いには、「4つのテーマ」も 設定されている。

4つのテーマ

「ニューリアリティーへの対応」は脅威を中心に取り上げる。新 たなプレーヤーが限りある資源をめぐって争っていると会議資料は 指摘する。これはつまり、中国が世界の炭鉱や農地、その他もろもろ を自分の物にしつつあることを指している。

「景気見通しと両立的な成長に向けた政策の定義」は、エコノミ ストらがデフレとインフレのどちらが大きな脅威であるかを議論す る中でリセッション(景気後退)二番底のリスクを重ねて指摘する。

「G20の課題への支援」は、金融安定の達成には「G20以外の 国・地域からの大きな支援が必要だ」と警告。これによって、成長の 原動力としての新興市場の重要性の高まりを一応認める。

第4のテーマでは、「リスク対応ネットワークの構築」を目指す。 このテーマは、グローバル化が加速しても各国が主権を捨てることに は抵抗を示すという残念な真実を無視しているようだ。

これらの議題、テーマの影に見えるの、欧米が失敗している間に 他の国が先へ進んでいるという認識だ。ダイアモンド氏のパネルにイ ンドのムカジー財務相が加わっていること、インドと中国についての 「洞察」を約束する議題、会議冒頭のパネルディスカッションに中国 とインドの企業幹部が参加していることなど、すべてはダボスが未来 を東に求めなければならないことを示唆している。

世界一

ピュー・リサーチ・センター・フォー・ザ・ピープル・アンド・ ザ・プレスが1月5-9日に実施した調査によると、米国民の47% は中国が世界一の経済大国だと思っている。2008年の同様の調査で は41%が、米国が世界一だと考えていた。ダボス人たちは依然とし て君臨しているが、彼らが引き起こした危機はこの変化を確実に加速 させた。

この変化はある意味で、オバマ米大統領が1997年以来で初めて 国賓待遇で中国の国家主席をもてなした事実によって明白に認知さ れた。9070億ドル(約75兆円)の借金の貸し主が訪ねてきたとき は、赤じゅうたんを敷き詰めてお迎えするのが当然というものだ。(マ ーク・ギルバート)

(ギルバート氏は、ブルームバーグ・ニュースのロンドン支局長 でコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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