PTS売買代金が最高、最良執行広がる-課題はTOB規制

日本株市場で電子私設取引システ ム(PTS)の利用が増えている。2010年の売買代金は過去最高を更 新した。東京証券取引所の高速売買システム「アローヘッド」の導入 から1年が経過、コンピュータシステムによる自動高速売買が広がる 中、より有利な価格で売買し執行コストを下げようと、取引所とPT Sの気配値を見比べ、取引市場を選ぶ投資手法の拡大が背景にある。

日本証券業協会の運営するPTSインフォメーションネットワー クによると、昨年12月のPTS全体の売買代金は前年同月比71%増 の4856億円と、月間ベースでは2カ月連続で過去最高を記録した。10 年年間でも3兆1356億円と09年の2兆9928億円を上回り、過去最高。

PTS運営会社のカブドットコム証券の石川陽一執行役員・PT S推進室長は、「制度面などの環境が整ってきた。PTSは取引所の土 台に近づいているため、順調に売買代金を伸ばしている。今年はさら に普及する時期になるだろう」と見ている。

「PTS元年」と言われた10年、機関投資家のPTS利用を最も 後押ししたのが、日本証券クリアリング機構(JSCC)による決済 をめぐる決定だ。JSCCは7月、取引所での取引と同様に、PTS の清算に際し決済履行を保証すると発表。これで決済リスクが解消さ れ、取引参加者が増えた。

1-5月までは1000億円台だった月間売買代金は、6月以降に 2000億円台に増加、10月は3000億円台に膨らんだ。1月には0.5% だった日本株取引全体に占める売買代金の割合は、10月に初めて1% を超え、12月は1.47%と3カ月連続で過去最高となっている。

最良を瞬時発見

東証・株式部の株式総務・信用取引グループの増田剛統括リーダ ーは、JSCCの清算対象となり、「SOR(スマート・オーダー・ル ーティング)の利用が増え、ハイ・フリークエンシー・トレーディン グ(超高頻度取引、HFT)が入って来た。国内の機関投資家も社内 規定から取引所にしか発注を出さなかったが、カウンターパーティー リスクが後退し、PTSの取引を増やしているようだ」と言う。

PTS拡大のもう1つの功労者はSORだ。SORは、東証と複 数のPTSを見比べ最良の気配値、流動性を瞬時に発見し、大量の注 文を細かく分けて自動発注するシステム。SORは外資系証券が先行 してサービスを開始し、HFTなど海外投資家を中心に利用が進む。 欧米の投資家は、「最良執行」規制があり、最も高く売れる市場で売り、 最も安く買える市場で買う必要性に迫られている。

PTSは、呼び値の刻みが東証より細かい。カブコム証の場合、 株価が5000円以下なら0.1円刻み、東証は5円だ。投資家からすれば、 取引所の最良気配より優位な価格で取引できる可能性がある。

日本ではこれまで、東証の処理速度が遅過ぎ、有利な市場を瞬時 に選ぶことは難しかった。しかしアローヘッドが導入され、SORに よる最良執行の考えが広まりつつある。SORを先駆けて提供したク レディ・スイス証券のエレクトロニック・トレーディング部長のクリ スティーナ巻口氏は、「情報端末でPTSの価格を見比べることが可能 になってから、投資家からの問い合わせが増えた」と話す。

日本株を取引して来なかった海外投資家を日本市場に連れて来た いとし、決済リスク解消のタイミングに合わせ、10年夏に日本に新規 参入したのは野村ホールディングス傘下のチャイエックス・ジャパン。 世界PTS大手の登場も、利用拡大につながった。兄弟会社のチャイ エックス・ヨーロッパは欧州で約3割のシェアを占有、海外勢の間で 知名度は高く、日本でも流動性向上にひと役買うと期待されている。

チャイエックス取引も増勢

チャイエックス・ジャパン代表取締役のジョセフ・マイヤー氏は 昨年9月のブルームバーグとのインタビューで、「東証や大証からシェ アを奪うことは考えていない。流動性を高めることがわれわれの成功 だ」と発言。欧州でチャイエックスを利用している投資家が日本市場 に流れ込めば、日本株の取引量を底上げしそうだ。

国内シェアトップのSBIジャパンネクスト証券の畠山優実取締 役は、「世界で日本のPTSの認知が広まった。われわれも海外顧客が 増えた」と、世界PTS大手の参入を歓迎している。チャイエックス・ ジャパンの売買代金は、10月は96億円に過ぎなかったが、11月は502 億円と急速に増えている。

日証協によると、PTS運営会社はSBIジャパン、カブコム証、 チャイエックス・ジャパンなどを中心に7社。最大手SBIジャパン の現在の取引参加者は13社だが、みずほ証券、JPモルガン証券など の参加がすでに決まり、11年には21社を目指すとしている。SBI ジャパンの畠山氏は、ことしは「当社だけで1日の売買代金500億円 が目標」と鼻息は荒い。同社の昨年12月の1日平均売買代金は117 億円だった。

TOB規制

ただ、PTS市場をより拡大させるには、TOB(株式公開買い 付け)規制の緩和が必要との見方がある。現行の金融商品取引法では、 PTSは取引所外取引とみなされ、株式の5%超を買い付ける場合は TOBを行う必要がある。事前に届け出なくてはならず、手間とコス トがかかり、投資家にPTS利用を敬遠させる一因になっている。各 PTS業者は、金融庁に規制を緩和するよう働きかけているという。

りそな銀行アセットマネジメント部・トレーディンググループの 平塚崇グループリーダーは、「TOBの制約はボトムネックだ」と指摘。 それでも、「他人資産を預かっているため、アカウンタビリティ(説明 責任)がある。TOBの制約がある中でも、やれることはやっていき たい」としている。

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