【コラム】欧州よ、同じ筋書きの危機で同じ過ちを繰り返すな-Mリン

新しい年が来て、新たな危機がや って来た。欧州の債券トレーダーや政治家、中銀当局者らが休暇を終 えデスクに向かうやいなや、欧州の周辺に位置する小国の運命をめぐ るせめぎ合いが始まった。

今回はポルトガルだ。しかし、その筋書きは過去のギリシャやア イルランドと極めてよく似たものだ。国債利回りが急伸し、政府は救 済の必要性を懸命に否定する。ドイツとフランスの首脳は、欧州の団 結が重要だとする使い回しのせりふを口にし、国際通貨基金(IMF) や欧州連合(EU)の担当者が荷造りをし、フライトスケジュールを チェックする。

そして不敵な発言はあっという間に聞かれなくなり、救済が始動 するといった具合だ。

だがこれまでのところ、ポルトガルをめぐる議論の多くは同国の 救済をいつ開始するかを問題にしている。もっと重要なポルトガルを 救済すべきかどうかという問題はほとんど話し合われていない。

実際、これはひどいアイデアだ。ユーロ危機の隣国への飛び火を 阻止できないばかりか、救済のメカニズムはいいかげんだ。EUやI MFの支援プログラムから脱する計画も欠如している。さらにこの救 済パッケージの明らかな欠陥は、ユーロ圏の解体の可能性を高めるこ とだ。EUは、ギリシャ救済は大きな過ちだったと認め、単純にポル トガル債務の再編を行う方が良いだろう。

利回りの目安

ポルトガル政府が今後いつまで債券市場からの圧力に耐えられる かは誰も分からない。先週初め、ポルトガル国債利回りは急上昇した が、その後、若干下げている。17日の10年物ポルトガル国債の利回り は6.6%だった。大体の目安として、7%が転換点となるようだ。ポル トガルは恐らく利回りをこの水準未満に維持できるだろうが、絶対と は言い切れないだろう。

真の問題は、ギリシャ救済から1年もたたぬうちにユーロ導入国 救済で3回目の救済パッケージを取りまとめるのは理にかなうかどう かだ。

答はノーだ。以下に理由を説明しよう。

第一に、この救済では危機の波及を阻止できないからだ。ギリシ ャ救済の後、市場はアイルランドを標的にした。アイルランド救済も、 ポルトガルへの攻撃を阻止できなかった。従ってポルトガルを救済し ても次にスペインが狙われると考えるのが妥当だ。市場は、一度に一 つの国を標的とする。それは、その国が唯一の高リスク国だからでは なく、手っ取り早く利益を上げる最も簡単なやり方だからだ。こうし て救済の完了と同時に、舞台は次の国へと移るわけだ。

金利の高さ

第二の理由は、この救済メカニズムがでたらめに作られているこ とだ。救済された国に課す金利は懲罰的であり、財政的窮地からの脱 出を一段と困難にする。アイルランドは救済の第1弾に対して、5.51% の金利を支払っている。ギリシャの金利は約5%だ。これは通常の金 融機関の借り入れコストを大きく上回っている。そもそもこれらの国 は、借り入れた資金の金利を払う余裕がないために救済を必要とした のに、追加の借り入れで一段と高い金利を課すのは理にかなっている と言えるだろうか。

私がポルトガル救済は不合理だと考える第三の理由は、救済プロ グラムを脱するための計画が存在しないことだ。救済後もギリシャと アイルランドの国債利回りは依然、ユーロ圏の平均を大きく上回って いる。利回りが下がる兆候は見られないし、これらの国が景気回復す る様子もない。では、これらの国はどのようにして通常の成長軌道に 戻るというのだろうか。出口戦略を用意せずに戦争を始めてはならな いのと同様に、市場を適切に機能させるアイデアを持たないまま国を 救済すべきではない。

投資家は愚かではない

最後の理由は、この救済メカニズムの欠陥によりユーロ圏の解体 の公算が大きくなることだ。投資家は愚かではない。彼らは、EUと IMFの支援策がうまく行かないと明確に認識する力を持っている。 しかし、格付け会社フィッチ・レーティングスはようやく先週になっ てギリシャ国債を投資不適格(ジャンク)級に格下げした。フィッチ によると、ギリシャの昨年の成長率はマイナス4%で、今年はマイナ ス3%が見込まれる。

他の国が景気回復を遂げつつあるのに対し、ギリシャは10-20年 も持続し得るリセッション(景気後退)に陥っている。このように年 を追うごとに貧しくなる国に債務管理が可能だろうか。これが「救済」 の目指すところだとしたら、投資家がユーロ安を見込んでいるのも当 然と言えるだろう。

EUがギリシャ救済で過ちを犯したことは既に明白だ。何もせず にデフォルト(債務不履行)させた方がましだった。古い格言に、「穴 の中にいることに気付いたら、もうそれ以上は掘るな」というのがあ る。必要ならポルトガルのデフォルトを容認し、その影響に対処する 方が良いだろう。

欧州が何としても避けるべきことは、危機全体の深刻化を招くだ けの新たな救済失敗だ。 (マシュー・リン)

(リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内 容は同氏自身の見解です)

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