石油メジャー:魅力のない油田を現金に-資産売却の加速が映す新戦略

メキシコ湾のリグ(石油掘削施設) 「ディープウォーター・ホライズン」で昨年発生した爆発・原油流出事 故により、英BPは数百億ドル規模のコスト負担を迫られ、世界各地で 油田などのエネルギー資産の売却を余儀なくされている。

投げ売りのような状態が予想されていたにもかかわらず、BPの資 産売却は大きな成功を収めていると、ブルームバーグ・ビジネスウィー ク誌17日号は報じている。同社はこれまでに220億ドル(約1兆 8000億円)相当を得ており、一部の資産は簿価の2倍の価格で売却さ れた。英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルや米エクソンモービルなどの企 業も魅力に欠ける資産の売却を進めている。

世界の石油メジャー(国際石油資本)の資産売却の総額は昨年、 500億ドルを超え少なくとも12年ぶりの高水準に達した。その動き は終わっていない。コンサルタント会社PFCエナジーのパートナー、 ジェリー・ケペス氏は、石油メジャーが現時点の業績や長期見通しに顕 著なマイナスの影響を被ることなく売却可能な資産は総額1500億- 2000億ドルに達すると推計している。

ケペス氏は「これらの資産を保有していても株式市場での価値には 結び付かない」と指摘する。

資産売却加速の要因としては、買い手が非常に多いことや原油価格 が安定し売却が容易になっていること、油田の開発や操業に必要な熟練 技術者が引き続き不足していることなどが挙げられる。

アイデンティティーの危機

最も重要な要因は、大企業が直面しているアイデンティティーの危 機かもしれない。石油メジャーの株価はかつて、規模のより小さい競合 企業と比較して高かった。もはやそうではない。投資家は今、石油メジ ャーは規模の大き過ぎる複合企業であり、成長の可能性はほとんどない と考えている。

モルガン・スタンレー(ロンドン)の石油アナリスト、ジーパン・ ジョシリンガム氏は「メジャーの経営モデルが価値の向上につながるか どうかについては、懐疑的な見方が強い」と指摘する。

エクソンやシェル、BP、仏トタル、米シェブロン、コノコフィリ ップスの欧米石油大手6社の株価のここ5年間のリターン(投資収益 率)の平均はわずか年率5%にとどまっている。

一方、米アナダルコ・ペトロリアムやアパッチなどのより規模の小 さい企業で構成する株価指数のリターンは8.3%、アフリカでの探鉱を 専門とし破竹の勢いで業績を伸ばす英タロー・オイルなどかなり小規模 な企業の平均である38%を大幅に下回る。また、原油相場のリターン は9%と、投資先としてはメジャーをしのぐ。

このような現状を石油メジャーは意識し始めている。リスクは高い がリターン改善が見込める探鉱や液化天然ガス(LNG)事業、深海掘 削活動に注ぎ込む資金を調達するため、低成長で利益の出ない事業の売 却を進めている。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE