与謝野氏:税・社会保障改革に、調整力問われる「仕事師」

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「たちあがれ日本」を離党し、経済 財政、社会保障・税一体改革担当相として入閣した与謝野馨元財務相 は、自民党時代から「財政再建派」として日本の財政状況への危機感 を訴え、税制・社会保障制度改革に執念を燃やしてきた。直前まで野 党にいた議員がいわばヘッドハンティングされる形で政府の要職に就 くのは異例。与野党の理解を得て悲願の消費税増税と財政再建に道筋 をつけることができるか、ベテラン政治家としての調整能力が問われ る。

与謝野氏は13日の記者会見で、菅直人首相が掲げる税制・社会保 障制度の抜本改革について「財政再建、税制の抜本改革、社会保障制 度の持続性の確保、これはいずれも日本の社会がどうしても避けて通 れない喫緊の課題」と指摘。首相が6月をめどに交渉参加を判断する 姿勢を示している「環太平洋連携協定」(TPP)についても「日本の 通商政策としては極めて重要な役割を果たす」と前向きに取り組む考 えを明らかにした。

みずほ証券の飯塚尚己シニアエコノミストは、与謝野氏の要職起 用による市場への影響について「財政再建路線の純度が高まったとい うことに尽きる。債券市場は好感するのではないか」との見方を示し た。

一方、与謝野氏に対する古巣・自民党の視線は冷ややかだ。同じ 財政再建派として知られる谷垣禎一総裁は13日の定例会見で、与謝野 氏の政治行動について「極めて頭の良い、政策マンとしては、なかな か大した方であることは、それを認める。ただ、政治家としての行動、 出処進退に対する考え方は私どもとは違う」と皮肉った。谷垣氏の発 言は自民党がウェブサイトで公表した。与謝野氏は2009年の衆院選で 衆院東京1区から立候補したものの、小選挙区では海江田万里氏に敗 れ、自民党の比例代表で当選している。

消費税

作家の大下栄治氏が著書「大乱政界のキーマン」(1999年、ぴいぷ る社)で「永田町の仕事師」と称したように、緻密な仕事ぶりで知ら れる与謝野氏。

中曽根康弘元首相の秘書などを経て1976年に衆院議員初当選。通 商産業相(現在の経済産業相)、自民党政調会長、官房長官などの要職 を歴任した。2008年のリーマンショック後に発足した麻生太郎内閣で はその政策調整能力を買われ、一時は財務、金融、経済財政の経済3 閣僚を兼任、経済財政政策の司令塔としての役割を担った。

消費税増税については、08年6月には自身が会長を務めた自民党 財政改革研究会で消費税率を中期的に現行の5%から少なくとも10% に引き上げるよう求める提言を発表。同年9月の総裁選で与謝野氏は 無派閥議員ながら派閥横断的な支持を受けて出馬し、「財政再建派」の リーダー的存在となった。

税制改正法附則

その後も与謝野氏は消費税論議を主導。経済財政担当相、財務相 として法案作成・国会成立に関わった09年度の税制改正法附則104条 には、麻生首相(当時)の意向を受けて、経済状況の好転を前提に「遅 滞なく、かつ、抜本的に消費税を含む税の抜本的改革を段階的に行う ため、11年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と明記。自民党が 次の通常国会での成立を目指す「財政健全化責任法案」の策定にも関 与した。

菅首相が13日の記者会見で、「私なり、民主党の考え方とも大き な流れとしてはかなり共通性の高い政治家だとこのように、これまで も認識していたし今でも認識している」と評した与謝野氏。財務相時 代に自らの肝いりで設置した「安心社会実現会議」に、民主党最大の 支持団体である連合の高木剛会長(当時)を参加させるなど税制・社 会保障制度改革で民主党との連携に布石を打った経緯もある。

ただ、与謝野氏は昨年1月、「民主党が日本経済を破壊する」(文 春新書)と題した著書を出版。当時の鳩山由紀夫政権の経済財政運営 について「一向に有効な手を打たない」と批判したこともあり、今後 はこうした言動との整合性が与野党から問われることになりそうだ。 13日の民主党大会では、与謝野氏の要職起用に反発した森裕子参院議 員が発言を求める場面もあった。

指導力

第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは、与謝野氏を 起用する首相の狙いについて「消費税を含む抜本改革などを前向きに 乗り越えていくための布陣を組もうとしているのだろう」と分析しな がらも、「与謝野さんは今まで民主党について辛口の評価をしていた。 そういう人を中に入れて菅首相が指導力を発揮することができるのか どうかは分からない」と懸念も示した。

与謝野氏自身は13日の記者会見で、こうした過去の言動との整合 性について「私はもともと党のために仕事をしていたのではなくて、 国民の生活や国民の経済や国民の将来をよりよきものにするために働 いてきた。自分の心の中での矛盾というのは一切、感じない」と説明 した。

--取材協力:坂巻幸子 Editor: Hitoshi Sugimoto, Hideki Asai

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