胸躍る世界の変容期、スーパーサイクル到来か-新興国にパワーシフト

世界経済が瀕死(ひんし)の状 態に陥った3年前、前例のない一連の協調的な措置によって世界は死 のふちから蘇ることができた。しかし現在も世界は病の床にあり、あ たかも医者らが今後の治療方針を議論するのをじっと見守っているか のようだ。

主要国首脳らは2008年秋からの短い期間に、一斉に利下げや 銀行救済、大規模な景気刺激策に乗り出した。その後、09年4月に開 かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)は、危機の 再発阻止に向け金融機関の規制強化の必要性を表明した。

2011年が明けた現在、各国間だけでなく政策当局内でも、市場 の混乱防止策と成長促進策を両立させる方法をめぐり意見が割れてい る状態だ。繁栄への道筋に戻るためには支出抑制から始めるべきだと 主張する英独政府などの緊縮財政論者がいる一方で、オバマ大統領は 失業率が10%付近に高止まりするなか、ブッシュ減税延長で議会共和 党と昨年合意した。減税延長合意は株価を押し上げたほか、一部のエ コノミストが今年の米成長加速を予想する根拠となっている。

自国の経済をいかにして繁栄に導くかを政策当局者らが議論する なか、一部のアナリストは将来の世界経済成長の大部分が新興市場に けん引されるだろうと予測している。すなわち、北米と欧州の停滞が、 中国などの新興国への大規模かつ恒久的なパワーシフトを加速させる 可能性があるとみているのだ。ここで重要なのは、ブラジル、ロシア、 インド、中国のいわゆる「BRICs」が、市場や産業への介入や資 本規制を通じて自国の権益を追求する狭量な見方を脱して、世界経済 に対するより大きな責任を担うべく努力を積み重ねて行くかというこ とだ。

今年最初の議論の場

今年最初のこうした議論の場となるのが、スイスのダボスで今月 末開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)だ。政財界の リーダーや経済理論の大家らが集う同会議で、世界経済の短期的な命 運を左右する今後の方向性が定まる可能性がある。

世界経済フォーラムに長年参加してきたルービニ・グローバル・ エコノミクス(ニューヨーク)会長のヌリエル・ルービニ氏は、「金 融、財政、規制、為替の各政策で国内外に意見の相違が存在する」と した上で、「著しいマクロの不安定性と変動性が見込まれる」と分析 した。

金融危機の際に講じた緊急措置を解除する方法と時期をめぐり議 論が続く北米や欧州とは対照的に、新興市場は着実に高成長を続けて いる。

第3のスーパーサイクル

英銀スタンダードチャータードのチーフエコノミスト、ジェラー ド・ライアンズ氏は、新興市場国が途切れなく成長を持続させている ことから、2000年から少なくとも30年間続く新たな景気循環が起こ ると予想。歴史的に見て高い成長を貿易と投資、都市化の進行が支え ており、「世界経済は現在、第3のスーパーサイクルに入っている可 能性がある」と指摘した。スーパーサイクルとは一世代以上にわたっ て持続する景気循環。

過去2回のスーパーサイクルは、米国がけん引した1870-1913 年と、日本とドイツの復興が寄与した第二次世界大戦後から1970年 代初めまでの期間だった。

ライアンズ氏によると、今回のスーパーサイクルが過去と異なる 点は、新興市場の寄与する割合だという。同氏の推定では、同割合は 最初のスーパーサイクルでは20%、2番目では28%にとどまってい たが、今回では68%に達する見込みだ。2030年までに世界の経済規 模は、2000年初頭の32兆ドル(約2660兆円、名目値)から308兆 ドルに増加する見通し。

ライアンズ氏は、「経済と金融のパワーシフトが進行中であり、 これは必然的に政策のパワーシフトを招くだろう」と指摘した。

中国は9.6%成長の見込み

中国は昨年4-6月(第2四半期)に日本を抜き、世界2位の経 済国として新たな年を迎えた。ライアンズ氏の分析は、現在の成長率 によっても裏付けられる。国際通貨基金(IMF)によれば、今年の 世界成長率は4.2%と、昨年の4.8%を下回る見通しだ。

しかし新興市場国は今年の景気拡大の主なけん引力となる見込み だ。中国は9.6%成長、インドは8.4%成長と予想されているのに対 し、米国は2.3%、ユーロ圏は1.5%にとどまる見通しだ。

米モルガン・スタンレーのエコノミストらの推定によると、新興 国は経済規模では世界経済の半分に過ぎないが、成長に関しては4分 の3を担っている。また、中国が人民元の上昇を抑制し、ブラジルは 昨年、海外投資家による確定利付証券投資購入に課す税率を引き上げ る資本規制を実施するなど、景気過熱の防止も図っている。

「BRICs」の名付け親である米ゴールドマン・サックス・ア セット・マネジメントのジム・オニール会長は、「われわれは世界経 済・社会の変容を目の当たりにしており、とても胸が躍る」とした上 で、「誰もが新たな世界経済でどのような位置を占めるのかが分かっ ていない。全員にとってチャレンジとなるだろう」と指摘した。

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