【コラム】「世界のATM」が巨費をつぎ込む先は別にある-ペセック

世界経済の関係が完全に引っくり 返ってしまったことが、公の事実となった。

そうでなければ、欧州が途上国の中国や弱体化した日本に丁重に 支援を求めることに、他にどんな理由が考えられるだろうか。中国に は、沈みゆくユーロ圏を支援するよりももっと良い金の使い道がある はずだ。日本にも同じことが言える。デフレやまひ状態の中で、2007 年9月以来6人目となる首相の誕生もあり得るのだ。

日本は、欧州連合(EU)がアイルランド救済のために設立した 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が今月末に発行する1回目 の起債分で、2割超程度を購入することを明らかにした。中国もすで に、債務危機が広がる欧州への支援を明らかにしている。ギリシャと アイルランドの救済は、より経済規模の大きいポルトガルやスペイン、 そして恐らくイタリアの救済の前触れにすぎない。

いずれイタリアのような大国も救済しなければならなくなること は、中国や日本の当局者にEU発行債の大量購入に二の足を踏ませる はずだ。ただ、より考慮すべきことは、世界が本当に必要としている のは中国や日本の余剰資金ではなく、アジアの経済大国である両国が バランスの取れた持続可能な成長を達成することだ。

欧州の債務危機は始まったばかりだ。欧州の政策担当者がどんな 対策を取ろうとも、切り下げられない通貨と膨らみ続ける膨大な債務 を抱えていることに変わりはない。日本や中国がEU発行債を購入す るのは一時的な応急措置にはなるが、ユーロ危機の避けられない悪化 を食い止めることはできない。

ウィー・アー・ザ・ワールド

これはキャンペーンソングの「ウィー・アー・ザ・ワールド」的 な瞬間だと考えた方がいい。1兆ドル(約83兆円)超の外貨準備を持 つ日本は、経済的だけでなく外交的な配慮もしたのだ。欧州が困って いる時に助けることは、過去の国力と栄光を失いつつある日本にとっ ては点数稼ぎとなる。日本の支援は、長期的な戦略というよりは、中 国の後追い策のように思えてならない。

EFSF発行債の購入は大きなリスクであるようには思えない。 格付けは「AAA」で、2011年中に最大165億ユーロ(約1兆7800 億円)を調達する見通しだ。1回目は30億-50億ユーロ規模を予定し ており、日本の購入額は10億ユーロ以上になるもようだ。ただ、欧州 の債務危機が悪化すると、日本の投資状況は急激に悪化するだろう。

日本はあちこちで金をばらまくより、自国の景気回復に本腰を入 れるべきだ。起業奨励のために大胆な取り組みを行い、巨額の国債や ゼロ金利への依存を断ち切り、移民の受け入れを拡大することで、生 産性と競争力を向上させなければならない。

借金に頼らずに

日本はこういった取り組みを全く行っておらず、それは世界経済 成長見通しの足かせとなる。日本は欧州のように世界に危機を拡大さ せてはいないものの、現在の状態を続け、改革を回避していれば、危 険水域に足を踏み入れることになるかもしれない。

日本の債券市場は、以前から圧力が高まっていた。公的債務は国 内総生産(GDP)の約200%なのに、10年債利回りは1.2%を下回っ ている。いくら緩やかなデフレに直面しているといえ、ファンダメン タルズ(経済の基礎的諸条件)上は説明がつかない。日本国債崩壊の リスクは差し迫っている。日本は借金に頼らずに成長する方法を学ば なければならない。

一方、中国は財布の口を締めて、市場を不安定にする不均衡を是 正すべきだ。最初の措置は人民元切り上げだ。中国は米国が求めてい るからではなく、自国の利益にかなうからこそ切り上げを実施すべき だ。上昇する食料品価格と原油価格は、景気過熱のリスクを悪化させ るだろう。

もしイタリアが

中国の資金力は、2兆8000億ドルの外貨準備のたまものだ。国際 通貨基金(IMF)が各国を救済するのに十分な資金を持っていた1990 年代後半はとうに昔の話だ。スペインの救済が必要となったら、もっ と大きな資金提供者が必要だ。といっても、イタリアのような大きな 経済が崩壊したら(その可能性は排除できない)、アジアの貯蓄で賄う には十分ではない。

欧州当局がアジアに助けを求めることは驚くべきことではない。 結局、金があるのはアジアなのだから。しかしそれよりも有益なのは、 日本や中国が自国の経済を立て直すことだ。悲しいことに、どちらの 国もそれを実行していない。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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