トヨタの品質神話に「打撃」-ソニーと同じ道をたどるか

過去17年間、トヨタ車を愛用し 数台を乗り換えてきたランディー・スターリングさん(カナダのオン タリオ州在住)は今月、ピックアップトラック「タコマ」を下取りに 出して、米フォード・モーターのトラック「F-150」を購入した。

スターリングさんは、「トヨタ自動車をめぐる最近の問題をきっ かけに、フォードへの関心が高まった」と語る。スターリングさんが 言及したのは800万台を超える記録的なリコール(無料の回収・修 理)。大半の不具合は意図しない急加速に関するものとされている。 「リコールの問題、一部顧客に対するトヨタの対応、それが私を不安 にした」。

スターリングさんのような顧客は、デトロイトで今週開催されて いる北米国際自動車ショーでトヨタの豊田章男社長が直面する試練を 浮き彫りにしている。2010年の米自動車販売台数は業界全体では増加 したものの、リコールで評価を落としたトヨタは減少した。

長年にわたる律儀な顧客を失ったのは、トヨタにとってイメージ 回復と市場シェア奪還に向けた険しい道の始まりであると、コンサル ティング会社(コネティカット州)マリアン・ケラー・アンド・アソ シエーツの創設者兼アナリスト、マリアン・ケラー氏は指摘する。 「品質という観点でトヨタは最初に選ばれるブランドだった。今やワ ン・オブ・ゼムにすぎない」。

トヨタにとって米市場は最も採算の良い市場だが、昨年は大手自 動車メーカーの中で唯一、販売台数が前年水準を下回った。トヨタと レクサス、サイオンブランドの総販売台数は0.4%減の176万台。業 界全体が11%増と、05年以来のプラスに転じたのとは対照的だ。

市場を奪われたソニー

ソニーなど日本のエレクトロニクスメーカーは過去10年間、音 楽プレーヤーでは米アップルに、テレビでは韓国のサムスン電子とL G電子に市場を奪われた。それとちょうど同じように、トヨタブラン ドが受けたダメージは、フォードや韓国のヒュンダイモーターカンパ ニー(現代自動車)などのライバルの攻勢が強まる中、トヨタを劣勢 に立たせている。

ブランド・コンサルティング会社インターブランド(ニューヨー ク)のジェズ・フランプトン最高経営責任者(CEO)は、「トヨタ が有名になった理由は一言、『品質』だった」と指摘。「同様にソニ ー製品が買われていたのは信じられる何かがあったからで、それが品 質だった」と述べた。

豊田社長は10日、デトロイトで記者団に対し、リコールでは同 社が「大きな打撃」を受けたと話した。ただ、同社の「カムリ」はな お米国の乗用車の売り上げで首位を維持しており、レクサスブランド は高級車の販売をけん引していると発言。トヨタ車は安全だと強調し た。

二の舞い

トヨタはプリウスでハイブリッド車の領域を切り開いたが、まだ 電気自動車は市場に出しておらず、日産自動車や三菱自動車に後れを 取っている。富国生命投資顧問の桜井祐記社長は、電気自動車の技術 の優位が証明され、トヨタがそれについていけなければ、電機業界が カセットプレーヤーからコンパクトディスク(CD)プレーヤーに移 行した際、優位に立つことができなかったソニーの二の舞いになると 指摘。「トヨタが流れにうまく乗れるかが問題だ。競争は激しくなる 上、いかに安く作れるかが重要な課題となる」と述べた。

米調査会社ストラテジック・ビジョンによれば、車を保有してい る人が同じブランドの車を再購入する可能性に関する調査で、トヨタ は昨年57%と、前年の63%から低下した。車の購入を検討している 人の中でトヨタ車を候補に挙げている人の割合は48%から40%に下 がった。

一方、フォード車を候補に挙げている割合は29%から37%に上 昇。ヒュンダイ車は14%から17%に上昇した。昨年の米自動車販売 はフォードが17%増、ヒュンダイが24%増。

世界ランキング

トヨタのカムリとカローラもヒュンダイの猛追を受けている。ヒ ュンダイは昨年、カムリを上回る販売を目指して「ソナタ」を改良。 カローラ追い上げのため小型車「エラントラ」もモデルチェンジした。

ヒュンダイとトヨタのウェブサイトによると、ソナタの価格は1 万9195ドル(約160万円)、カムリは1万9720ドル、エラントラ は1万4830ドル、カローラは1万5450ドルだ。

みずほ投信投資顧問のファンドマネジャー、青木隆氏は、「トヨ タは米市場で韓国メーカーにシェアを奪われている。ただ、それより も収益が低くなることが心配だ」と指摘。自動車業界全体が電気自動 車に移行する可能性があることを考えると、トヨタは利益率の低いモ デルの開発投資を増やして競争力を維持する必要があると話した。ブ ルームバーグのデータによると、みずほ投信投資顧問は昨年7月、ト ヨタ株9万4800株を売却した。

米フォーチュン誌の年次調査によれば、評価の高い世界企業ラン キングで、トヨタは昨年7位と、09年の3位から後退した。ソニーは 2000年の同ランキングで6位となり、同社として過去最高位に上った が、現在は38位。首位の座は今、ソニーの競争相手アップルが握っ ている。

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