【クレジット市場】「断崖絶壁」の日本の財政、超長期国債頼みに

仙谷由人官房長官が言うところの 「断崖絶壁」の状況にある日本の財政。来年度も国債の大量発行が続 く中、財務省が市場での安定消化維持に向けて打ち出した策が、機関 投資家の運用ニーズを見込んで発行年限30年以上の超長期国債の増 発だ。

財務省は、2011年度の国債発行計画で30年債、40年債の1回入 札当たりの発行額をそれぞれ1000億円増額し、合計で1.2兆円増発す る。30年、40年債ともに発行額は過去最高に上る。市中発行の平均償 還年限は7年9カ月と前年度から3カ月長期化して過去最長となる。 これに対して、米国は4年11カ月だ。

11年度の国債発行総額は169.6兆円と3年連続で過去最大となる。 国債の大量発行時代への対応として、同省は国債管理政策を強化。特 別会計仕分けの結果を反映し、国債整理基金の取り崩しなどを財源と した買い入れ消却を総額3兆円程度実施し、借り換え債の増額幅を抑 制。こうした措置などで、来年度は超長期債の増発だけにとどめた。

日興コーディアル証券の末沢豪謙金融市場調査部長は、「長期的に みて日本の財政がすぐに改善するわけではない。歴史的に低水準の金 利の時に、超長期債を増発するのは、将来の利払い増加や借り換え増 加というリスクを勘案すると適切だ」と述べた。金利水準が低い状況 下で、年限の長い国債を増発することは、将来の借り入れコストのほ か、金利上昇局面で短期の借り換えを行うことに伴う負担を抑制でき るとしている。

一方、生命保険や年金基金などの機関投資家はALM(資産・負 債の総合管理)上の観点で、保有債券の年限を長期化させる狙いから 超長期債を積極的に購入している。三井住友海上きらめき生命保険の 堀川真一経理財務部長は、「生保を中心に超長期債を組み入れていく方 向。30年債、40年債で各1000億円程度なら十分に消化できると思う。 入札が弱めになってもその後の販売は問題ないと思う」と述べた。

発行側と投資家の利害が一致

日興コーディアル証の末沢氏は、「生命保険会社など投資家からは 超長期債への増発要望がある。生保は負債が長いため、金利リスクを 減らすために、超長期債を買っている。国債管理政策という発行体側 と投資家需要という両方の都合が一致する」と語った。

国内投資家の間では、増発によって超長期債の需給が悪化するこ とに対する警戒感も薄い。昨年12月に開催された国債投資家懇談会や 国債市場特別参加者会合では、30年債や40年債に増発の余地がある との意見が大勢を占めている。

こうした超長期債に対する需要の強さを背景に、過去5年間に日 本国債の利回り曲線は平たん化した。2-30年債の利回り格差は6日 時点で192.5ベーシスポイント(bp)となり、5年前(200.3bp)から 縮小した。同時期に米国債の利回り曲線が傾斜化したのとは対照的だ。 米国債の2-30年債利回り格差は7日時点で385.0bpと5年前 (21.1bp)から大幅に拡大した。

T&Dアセットマネジメントの天野尚一運用統括部長は、「日本は 金余り状態で金融機関の貸し出しも伸びていないので運用先として国 債中心にならざるを得ない。年金基金も株式から国債へと資産の見直 しを行っており、安全な資産として国債が選択される傾向は変わらな い」と話した。

国・地方の借金は過去最大

財務省によると、11年度末の国と地方の借金を合わせた長期残高 は、10年度末に比べて約23兆円増え、約891兆円と過去最大を更新 する見込み。対国内総生産(GDP)比では184%に達し、先進国の 中で最悪の水準だ。仙谷官房長官は6日の記者会見で、日本の財政は、 「断崖絶壁のところに来ている」と発言し、危機感を示した。

さらに少子高齢化が進む中、社会保障費の増大を抑えることも喫 緊の課題となる。菅直人首相は5日夜のテレビ番組で、消費税を含む 税制と社会保障制度の改革に「政治生命をかける」との決意を表明し た。ブルームバーグデータによると、日本の全人口に占める65歳以上 の割合は約23%に達し、62カ国中で最高という。

需要はいずれ尽きるとの見方

一方、生保をはじめとする投資家の需要は永久的なものではなく、 いずれ超長期債の需給の悪化に影響が及ぶとの声も聞かれた。

JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「生命 保険の需要は2、3年は続くため、大幅な金利上昇はない」としなが らも、「超長期債は発行残高増加ペースが速い。超長期債の発行を増や していくと、いずれ生命保険会社の需要もいっぱいになるのではない か」と懸念を示した。

RBS証券の西岡純子チーフエコノミストは、「今の名目の成長率 は3%到底届かないということを考えると、消費税とか歳入を押し上 げる政策がないと、1400兆円ある金融資産に対しても近い将来、国家 の債務残高を超えてしまう形になる。抜本的な解決が何かというと、 歳入を改革する方が断然近道だと思う」と述べている。

7日の現物債市場で新発30年物の33回債利回りは2.09%、新発 40年物の3回債利回りは2.11%で取引された。

--取材協力:藤岡徹、KEN MCCALLUM Editors:Hidenori Yamanaka,Masaru Aoki

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