【コラム】2011年を面白くすること請け合いの8つのバブル-ペセック

バブリーな1年にようこそ。

こんな言い方は、主要国の多くがリセッション(景気後退)もし くはその寸前の状況においては、奇異に聞こえるかもしれない。それ でもほぼゼロに近い欧米や日本の低金利は、市場や人間の心理をひど く惑わす働きをするものだ。

2011年を面白い年にする原動力は、金融政策以外にもある。市場 を揺るがす、さまざまなバブルが膨らんでいくのをわれわれは目の当 たりにするかもしれない。こうしたバブルは資産市場や世間の認識の 中に存在する。8つのバブルを紹介しよう。

1.投機資金(ホットマネー)。MSCI・AC・アジア太平洋 指数が昨年14%も上昇したのは素晴らしい。MSCIの幅広い指数を 上回る伸びだったが、これが超低金利を背景とした上昇ではなく、も っとファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に動かされたものな らさらに良かっただろう。

日本銀行の超緩和策を受けて資金は長期にわたって海外に流れ、 株式や債券、不動産価格を押し上げてきた。低金利の円で借り入れた 資金をリスクの高い海外資産に投資するいわゆる円キャリー取引の後、 今度はドルで調達するキャリー取引が行われている。米連邦準備制度 理事会(FRB)の金融政策によって流動性の高波がアジアに向かっ て押し寄せたのが2010年だった。これはいずれ破壊をもたらし、崩壊 の跡が残されるだけかもしれない。

2.デカップリング理論。この理論におけるバブルとは、主要先進 国に何が起ころうとアジア経済は急速に成長できるという持続不可能 な考え方だ。こんな考え方は信じないほうがいい。中国の成長率が

9.6%、インドが8.9%となっている現状はもちろん素晴らしい。

それでも年間の総生産が合わせて34兆ドル(約2830兆円)に達 する米国とユーロ圏、日本、英国の景気回復ほどアジア経済に寄与す るものはない。アジアは2008年の金融危機以降、プラス成長を維持す る偉業をやってのけた。主要国抜きでも、新興国はあと数年ならやっ ていけるかもしれない。今年も順調に推移しますように。

3.食料価格。1月3日付のタイムズ・オブ・インディア紙は多く のアジア人が抱いている疑問を見出しに掲げた。「価格抑制で政府が法 的にできることはないのか」という疑問だが、残念ながらあまりない。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の食料輸入コストは 昨年1兆260億ドルと、2009年の8930億ドルを上回ったもようだ。 このコスト上昇の傾向は、需給の不均衡や地域貿易における硬直性に よって加速し、途上国は経済発展を支える人々の空腹を解消するとい う最も基本的な問題の対応に追われることになるだろう。

4.収入における不平等。食料から運輸に至る価格急上昇を受け、 インドネシアのインフレ率は昨年12月に1年8カ月ぶりの高水準に 達した。日用品が値上がりする傾向は、貧富の差の解消を目指すアジ ア諸国の努力に水を差している。

食用油やコメ、魚が値上がりしても、ゴールドマン・サックス・ グループの平均的な社員には大したことではないだろう。しかし、1 日当たり3ドルで生活し、所得の3分の2が食費で消える家計には大 問題だ。貧富の差の拡大は緊張の高まる1年を暗示しているかもしれ ない。不作とインフレは飢饉(ききん)や暴動、買いだめ、貿易戦争 を引き起こす。ここで言うバブルは人間の苦しみの中にある。

5.異常気象。これはオーストラリアが経験している通りだ。数カ 月前には干ばつが経済見通しを暗くしていたのに、今や洪水が商品価 格を左右するありさまだ。

この際、温度は気にせずに、米マイアミからインドのムンバイま で、異常気象が襲ってくる頻度が増すことに注目しよう。米ニュース レター「ガートマン・レター」のエディターとして知られるエコノミ スト、デニス・ガートマン氏は、豪州の洪水の影響で石炭・小麦の輸 出が影響を受けるとして、豪ドル売り・ユーロ買いを推奨している。 ユーロ相場に強気にさせるのが「母なる自然」の成せる業とは面白い。

6.外貨準備。いかなる経済圏が2兆7000億ドルもの外貨準備を 必要とする理由が分からない。しかも保有している外貨準備の価値が 下がらないように準備高をさらに積み増すわなにはまっているのは中 国だけではない。日本は1兆ドル余りを抱え、台湾と韓国、香港、シ ンガポール、タイの準備高は合わせて1兆3000億ドル。これは富の非 生産的な利用であり、そのリスクは日々膨らむのに簡単な解消方法は 見当たらないときている。

7.地政学上のリスク。北朝鮮の金正日総書記に任せておけば、ま さかの展開は経済リポートや企業の報告書ではなく、同総書記が君臨 する北朝鮮のようなならず者国家の体制が引き起こすことを投資家は 再認識するだろう。平壌発の挑発行為の頻度や深刻さが増すと覚悟し よう。

それから領土問題では強気でいこう。不透明感が強まり、各国政 府は大衆の怒りを静めることに必死だ。国民をまとめたい願いは近隣 諸国との争いにつながる。そうした騒動から避難したい投資家は、金 が1オンス当たり1400ドル近くまで上昇している理由を説明してく れるだろう。

8.20カ国・地域(G20)。欧州当局は危機を回避できるとの楽観 論は根拠がないとみられるかもしれない。中国が永遠に年10%程度の 成長を続けられるとか、日本の指導者らがデフレを克服できるとの見 方についても同様だろう。世間の認識における本当のバブルは、崩壊 する市場をG20が安定させ、長年にわたる不均衡を是正できるという 考え方だ。今年は世間が受け入れたこのような認識の一部あるいはす べてが覆る1年となるかもしれない。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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