イラン人小説家、芥川賞目指す-パナソニック勤務のネザマフィさん

日本語で小説を書き、芥川賞候補に 二度にわたってノミネートされたイラン人女性、シリン・ネザマフィさ ん(31)は、続いた落選にめげず次回作の構想を練っている。日本語で の執筆にこだわり、日本純文学の登竜門である同賞を目指す。

ネザマフィさんは12月24日、現在居住しているドバイから日本語 で電話取材に応じた。次回作について「まだしっかりした構成は考えて いない」と前置きした上で、「会社の上司と部下の人間関係など小さな テーマについて書いてみたい」と語った。

ネザマフィさんはイラン・イラク戦争下の恋を描いた「白い紙」で 非漢字語圏出身者として初めて文藝春秋社の「文學界新人賞」を受賞、 09年上期の芥川賞候補6作品の一つに選ばれた。10年にも「拍動」で 同賞候補になった。テヘラン出身で、99年に来日。神戸大大学院博士課 程修了後、06年に松下電器産業(現パナソニック)入社。09年7月か らドバイで勤務している。

深々とお辞儀をしたり、飲み会で若手社員が年配の上司のコップに 酒をついで回ったり、朝の始業前にみんなで社歌を斉唱したり--。日 本の企業風土の中では当たり前に思える風景もネザマフィさんの目に は興味深いものに映る。「作家は誰でもそうだが、自分で体験している ことは頭の中に入っている」と話し、日本独特の企業文化を題材にした 物語が書けないか構想を練っているという。

芥川賞は文藝春秋社が芥川龍之介の名を記念して1935年に創設、 新聞や雑誌に発表された「無名または新進作家」による純文学の短編作 品が対象となっている。受賞は年2回で、正賞は懐中時計、副賞は100 万円。外国人では2008年下期に中国人女性の楊逸さんが「時が滲む時」 で受賞したケースなどがある。

好きな作家は安部公房

中学時代に父親の仕事のために日本で生活していた友人の影響で、 「脱いだ靴をきちんとそろえるなど日本人の細かく、きっちりしている ところ」から日本に興味を持つようになったというネザマフィさん。好 きな作家は安部公房で、最近では「悪人」の吉田修一も「かなりできあ がった作家。小説の世界観がいい」と評価しているという。

イラン人にとって特に漢字を覚えるのは難しく、執筆しながら携帯 電話の辞書機能で正しい用法をチェックすることもしばしば。それでも 日本語に書くことにはこだわり続けたいと話す。

「日本語で、日本人に向けて書いている」ということを強く意識し ているというシリンさん。芥川賞は「読まれる存在になりたいし、作家 のオリンピックみたいなものなのでぜひ取れれば」と話した。

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