年明け「精鋭部隊」上海派遣、ローソン-新浪社長は来春滞在

「相手は即決でCEOが行かない と駄目だ」--。コンビニエンスストア国内2位ローソンの新浪剛史社 長CEO(51)はこう語った。まず年明けに精鋭部隊を上海に派遣、続 いて東証1部上場企業トップとしては異例の上海長期滞在を敢行する。 中国最大の都市を拠点に、長期目標に掲げる2020年で中国1万店舗に 向けて東奔西走する。

新浪社長は来年5月と秋以降に計2カ月間を上海で過ごす予定。 「アジアを攻める上では人間関係が重要で、華僑系や印僑と関係作りを するにはトップが行かないと無理だ」と20日の年末会見で強調した。 これに先立ち役員2人を含む10-20人のえりすぐりの人材を送り込む。 「え、こんな人行っちゃうの」というような将来のホープを送り、中国 に寄せる意気込みの大きさを社内外にアピールする。

中国の国内総生産(GDP)は2010年に日本を上回ると国際通貨 基金(IMF)は予想している。この成長市場にローソンは96年に合 弁で上海から出店したが、店舗数は現在318店。1981年進出のセブン- イレブン1727店、2004年進出のファミリーマート492店にも水をあけ られた。ローソンの海外売上高比率も10%未満。2社に見劣りする海外 事業を新浪社長は、トップダウンで中国からてこ入れする方針だ。

組織や人材のコンサルティングをするマーサージャパンの古森剛社 長は、新浪社長の上海滞在について「世の中がグローバル社会に変わっ たということを自分なりのやり方で社内に伝えている象徴的な行動だ」 と分析する。さらに「コンビニ業界の主戦場があからさまに中国になる 中、ローソンが一番中国にコミットしているというメッセージを提携先 などに伝える意味もあるだろう」と見る。

日本から中国人を派遣

新浪社長は今春のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで中 国展開の遅れについて、人材育成に時間がかかる点を挙げた。「中国の パートナー企業から日本に人を派遣しても勉強に1、2年かかる。上海 でその部分を失敗している」と述べた。

対策として新浪社長は、日本の大学を卒業する中国人採用を積極化 してきた。「日本で店長、アシスタントスーパーバイザーまでやってい れば海外で立ち上げができる」と人材育成により海外本格進出の足場固 めが出来てきた現状を話した。

上海への先遣部隊は最初は日本人だけとする。徐々に中国人をはじ めとする外国人も加えて社内での競争を促す意向だ。新浪社長は「向こ うに行くと一旗あげられる、あそこで頑張った人が後継になるかもしれ ない」と中国市場の重要性を示した。

在中日本人2.9倍

ボストンコンサルティングは中国の中産階級人口が今後10年間で 約3倍になると見ている。北京、上海だけでなく2級都市や3級都市と 呼ばれる各省の省都に住む人々の購買力が増し、中産階級の人数は現在 の1億4800万人から4億1500万人にまで増加すると予想した。

IMFは11年以降、日本の成長率が1.5-2.0%にとどまるのに対し 中国は9%以上の成長を続け、15年には両国のGDPの差は3兆4646 億ドルにまで広がるとみている。日本では個人消費は2008年、2009年 と2年連続で減少、人口も2004年がピークだった。国立社会保障・人 口問題研究所では2055年には人口が9000万人以下にまで減少する可能 性があるとみる。

日中の経済環境の急激な変化を受け、事業機会を中国に求める日本 人は急増している。外務省によれば2009年の在中日本人数は約13万人 と10年前の2.9倍に達した。ジャスダック上場企業シンワアートオー クションの倉田陽一郎社長は、家族で今年香港に引っ越した。「リーマ ンショック後、2期連続で赤字を余儀なくされ日本にいるとどんどん周 回遅れになる」と市場の中心が中国をはじめとするアジアに移っている 点を強調する。

ガバナンスに懸念も

ローソンは子会社ローソンエンターメディア元取締役らの不正資金 流用で144億円の被害が発生、前期(2010年2月期)に大半を特別損失 として計上した。TIWの西村尚純アナリストは、新浪社長の中国滞在 について「これまでの日本人経営者になかった決断だ」と評価する一方 で「エンターテインメントビジネスで部下を信頼し過ぎてガバナンスが 働かなかった。日本を離れることで同じようなことが起こらないか注視 する」と話した。

日興コーディアル証券の川原潤アナリストも、ローソンの中国戦略 の方向性は正しいとしながら、FC(フランチャイズチェーン)化のモ デルを固めつつあるセブン-イレブン、出店実績を積み重ねるファミリ ーマートに比べて具体性という点で遅れていると指摘した。経営者が現 地の人と直接話す利点はあるとしながら「権限がある人が現地にいれば 社長ではなくてもいいはずだ」とも指摘した。

こうした懸念に対して新浪社長は、中国滞在中もiPad(アイパ ッド)などIT(情報技術)を使いこなして日本と連絡を密にする考え だ。「COO(最高執行責任者)的な存在の役員はもういるので、国内 はご懸念があるかもしれないが全然問題ない」と強調する。

中国との縁

この中国と新浪社長の縁は深い。ローソン筆頭株主の三菱商事在籍 時に中国事業を手がけ、取引先に送っていた為替リポートが評価され三 菱商初の中国での砂糖取引のきっかけを作った。「中国との付き合いは すごく長い。北京がどれだけ寒いのか分からずコートを持っていかない で現地企業に足しげく通った記憶もある」と本人は述懐する。

「最近、新浪さんは中国語で電話をかけてくる。簡単な会話だと中 国人かと思いびっくりする」とローソン中国事業戦略アドバイザーの宗 文洲氏は語る。日本でソフトブレーンを創業して東証1部上場企業にま で育てた宗氏は経営者には成長が必要だとし、「国内の維持だけだと新 浪さんのパワーは余る。開拓力を市場が広がるところに使うのがいい」 と古くからの友人でもある新浪社長の決断をたたえる。

米ハーバード大学院でMBAを取得した新浪社長は、経営者仲間ら と論語などの勉強会もしてきた。勉強会仲間で中国古典が専門の作家守 屋淳氏は「新浪さんはハーバード留学後に経営した給食会社でハーバー ド仕込みの理論が通じず1カ月間皿洗いして従業員の心をつかんだ。中 国の現場を知りたいという今回の判断は新浪さんらしく中国人にも響く はずだ」と語る。

ローソン株の終値は前日比30円(0.8%)高の4035円。11月初に 付けた今年最安値から12%上昇した。今年の最高値は2月初に付けた 4285円。

--取材協力 東京 伊藤亜輝 Editor: Eijiro Ueno, Fukashi Maruta, Kenshiro Okimoto

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