【コラム】気象予報士に優越感を持たせるための来年の経済予測-リン

「エコノミストが予測をするのは気 象予報士に優越感を持たせるため」という古いジョークがある。つま り経済予測は天気予報より当たらないということだが、これとほぼ同 じ精神で、このコラムでも年に1回、予測をしてみる。エコノミスト らが自分よりもっと当たらない予測を笑って楽しめるように。

この警告を念頭に置いて、以下に記す「2011年に起こりそうな(あ るいは起こりそうもない)10の事柄」を読んでほしい。

1.強気相場が戻る。実際、既に1年余り前から強気相場は始まって いる。複数の指数を見てほしい。しかし株価上昇局面の初期段階には、 誰もそれが強気相場だとは言わないものだ。最初は、「デッド・キャッ ト・バウンス」と表現される。死んだ猫でも非常に高いところから落 とすと跳ね上がるという意味だ。その次には「ベアマーケット・ラリ ー(弱気相場の中の一時的上昇)」と呼ばれる。11年末には結論が出て いて、強気相場が正式に認定されているだろう。来年末までに、投資 家は再び株式に資金を向け始めるだろう。

2.オルタナティブ(代替)投資業界にはご難の年になる。ヘッジフ ァンドとプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資ファンドに とって最大の追い風は、高利回りの追求だった。株式相場が低迷し、 金利がほぼゼロに引き下げられ、債券利回りが過去最低水準となる中、 投資家はとにかく目に見えるリターンを上げるのに躍起で、年30%の リターンを約束する調子の良いヘッジファンド運用者の話に進んで耳 を傾けた。しかし来年は金利が上昇するとともに、債券利回りと株式 のリターンも上向くだろう。投資の王道でかなり良いリターンが得ら れるときに、わざわざヘッジファンドやPE投資ファンドに大金を預 ける必要もない。約束を果たすファンドマネジャーなど、ほとんどい ないのだから。

ベンチャーキャピタル

3.ベンチャーキャピタル(VC)が復活する。新興企業はインター ネットバブルの崩壊でひどい打撃を受けた。しかし、おおよその基準 として、バブル崩壊以来の10年間という歳月は金融市場がすべてを忘 れるのに十分な長さだ。今そこには、素晴らしい機会が幾つも転がっ ている。スマートフォン(多機能携帯端末)向けアプリケーション、 ソーシャル・ネットワーキング、代替エネルギー、アフリカなど。市 場は常に、非現実的な考え方をする楽天家のための場所を用意してい る。そして11年は、ベンチャーキャピタリストがその場所を再び埋め る年となるだろう。

4.フランスがユーロ危機の中であぶり出される。同国はこれまで何 とかして、ユーロ圏内の強い国家の一つとしてドイツと同じグループ に分類されてきた。しかし、フランスの財政赤字はイタリアよりも大 きい。失業は慢性化し、成長率はゼロに近い。決定的な問題として、 改革に対して極めて強い抵抗がある。労働時間や定年時期の延長、公 的サービスの改革をほんの少しほのめかすだけで、大規模なデモが起 こる。このままでは持たない。来年はフランスが、アイルランドやギ リシャ、ポルトガル、スペインと共にもがく年になるだろう。

アップル

5.アップルが嫌われ者になる。われわれはかつて、IBMをある意 味で邪悪だと考えた。その後、批判の対象はマイクロソフトに移った。 しかし今、余りに強大になり過ぎ、支配欲の旺盛な人物が率い、主義 や信条よりも利益を優先しているのはどの企業か。ご想像の通り。時 価総額世界3位のこの会社は、格好いい新興勢力と鼻持ちならない独 占主義者とを隔てる壁が極めて薄いことに間もなく気付くだろう。

6.ドイツ型モデルが再評価される。債務危機から抜け出す方法を手 探りしている世界において、この資本主義の「ラインラント(ドイツ のライン川周辺地域)・モデル」がにわかに極めて魅力的なものに見え てくる。高い専門的技術と低い債務水準、優れた労働者を持つ多数の 中堅企業がニッチな製品を世界中に輸出する。これは2010年代に成功 するための非常に良い公式のように思える。11年末までには世界中の 経営者が、ドイツ型の経営モデルを自らの指針にしていると、熱心に 語り始めるだろう。

最悪の決定

7.英銀ロイズ・バンキング・グループが解体される。英国の2つの 大手銀行、ロイズとHBOSとの拙速な統合は、信用危機の最中に行 われた最悪の決定の一つであったことが次第に明らかになりつつある。 ロイズは強力過ぎる。11年は同行が分割される年になるだろう。

8.アイスランドが世界に教訓を与える。2年前、世界中の政府は自 国の金融機関を救済しなければならないと考えていた。銀行を破たん させれば、すぐさま石器時代に戻ってしまうと思い込んでいた。ある 国が、そのような共通認識を否定した。アイスランドは自国銀行を存 続させる余裕がなかった。どうなったかと言うと、もちろん痛みはあ った。しかし、同国経済は来年プラス成長に戻るだろうし、インフレ は制御され金利は低下しつつある。アイスランドの回復が続くなら、 そこから導かれる結論は一つだ。結局のところ、金融機関を救済する 必要はないということだ。

BRICsの「R」

9.ロシアがBRICsの中で存在感を増す。ブラジルとインド、中 国の経済力の隆盛については、多くが語られてきた。それに比べて、 ロシアについて聞かれることははるかに少なかった。ロシアは権威主 義的な政府を持つ資源輸出国として片付けられがちだ。しかし、同国 は技術大国への転身を目指している。モスクワ郊外のスコルコボに新 たなシリコンバレーを建設する計画を見てほしい。正気ではないっ て?思い出してほしい。人間を最初に宇宙に送ったのはロシアだ。ロ シアは常に科学面で進んでいた。その頭脳と実業家を組み合わせるこ とができれば、ブラジルとインド、中国を上回ることが可能だ。

10.電子クリスマスカードに対する反感が強まる。話をしたこともな いラトビアの小さな銀行からのカードが、私に本当に必要だろうか。 オーストリアの経営コンサルタント会社は、私の活躍と幸せを心から 祈っているだろうか。そうは思えない。気持ちも込もっていないし心 に触れもしない「メリークリスマス」は、スパム(無差別に大量送信 される迷惑メール)以外の何物でもない。率直に言って私はむしろ、 性機能障害治療薬「バイアグラ」を処方箋なしで送ってくれるあの友 好的なウクライナの会社からのメールが欲しい。11年のクリスマスま でに、電子カードを送ることは社会的に容認されなくなるだろう。遅 過ぎるくらいだ。 (マシュー・リン)

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE